シェア: Facebook X

URLをコピーしました

「クルマ屋になろう」という意識が「もっといいクルマづくり」を進化させる!?

2023.10.10

「新しいカタチのスポーツSUV」として登場したクラウン スポーツ。開発陣のさまざまな挑戦を可能にした、クルマづくりの現場における変化とは?

4つのボディバリエーションをラインアップする新型クラウン。「クロスオーバー」に続いて、「新しいカタチのスポーツSUV」をコンセプトとする「スポーツ」がデビューした。

開発リーダーを務めた本間裕二は、「見て、乗って、走って、お客様に“WOW”と感じていただけるようなエモーショナルなクルマを目指しました」と語る。

トヨタイムズでは、「もっといいクルマ」をつくるために「革新と挑戦」に挑んだ同車の開発プロジェクトメンバーにインタビュー。今回は、「上質でありながらもワクワクするような俊敏な走り」「走って」WOWを実現すべく力を合わせた、シャシー設計エンジニアと評価ドライバーを取材した。

さらに開発の実務を現場で率いた本間裕二に、クラウン スポーツの開発の中で感じたトヨタのクルマづくりの現場の変化について話を聞いた。

クラウン スポーツにふさわしい走りの味を探求して……

「クラウン スポーツの走りの方向性が決まるまでには、かなりの試行錯誤がありました」

同車の足まわりやステアリング系、さらに後輪操舵システム「DRS(ダイナミックリヤステアリング)」の開発を担当したMSプラットフォーム設計部の松宮真一郎は、開発がスタートした当時をそう振り返る。

松宮

クラウンが大事にしてきたDNAでもある「快適性」を確保しながら、「スポーツ」というキーワードをどう走りで表現するのか、議論を重ねながら試行錯誤を繰り返しました。

だからこそ「クラウン」×「スポーツ」という新しいカタチを足回りの硬いスポーツチューニングだけで終わらせたくなかった。

クラウンとしてどういう「スポーツ」に仕上げるのが、お客様に一番喜んでいただけるのか? チーフエンジニアをはじめプロジェクトチームのメンバーや凄腕技能養成部の匠たちと議論や走り込みを重ねながら、方向性を探っていったのですが、何度も壁に突き当たりました。

松宮たちは、クラウン クロスオーバーをベースにホイールベースを短縮した先行開発車を用い、開発を進めたという。

松宮のパートナーとしてステアリングを握り走り込みを重ねたのが、車両技術開発部に籍を置く塚田正男、伊藤竜平、そして山﨑碧の3人の評価ドライバーである。

エキスパートの資格を持つ塚田は1986年にトヨタに入社し、運転訓練の指導員を務めたこともあるベテランだ。一方、伊藤の入社は2015年、山﨑は17年。いずれも20代半ばの若手であり、新型車の開発にメインで携わるのは今回のプロジェクトが初めてだという。

塚田

伊藤と山﨑からは「やってみよう!」という意気込みが感じられたので、とにかく2人を信じて任せてきました。私は指導役として彼らをサポートしたのですが、年齢的にも父親のような気持ちで見守ってきました(笑)。


伊藤

私は入社以来、カローラ スポーツやカローラ セダン、そして先代クラウンなどの開発にサポート的に携わってきましたが、自分がメインで担当するのはクラウン クロスオーバーとスポーツが初めてです。塚田さんに任せていただいたので、とてもモチベーションが高まりました。


山﨑

私はもともと運転がうまい方ではなかったので、入社当初はサーキットでの訓練でどうしても恐怖心が抜けず、涙が出そうなときもありました。

クラウンスポーツは、女性が運転席に座り、颯爽と走り出すイメージがぴったりだと思ったので、女性ならではの視点も活かしながらこだわって評価していきました。

3人の上司である組長の館郁夫は、あえて若手2人をメインとするチームを編成したという。

もちろん人財育成という目的もありますが、クラウン スポーツは新しいカタチのスポーツSUVなので、2人のような若い世代の感性が、開発するうえで必ず活きるだろうと考えました。

2人とも若いですが、評価ドライバーとしての能力が高いことは分かっていましたし、どんなクルマに仕上がるのか興味深く見守りました。

彼らを中心とする開発メンバーは、クラウン シリーズ全体を統括するチーフエンジニアの皿田明弘(当時)や、現場で開発をまとめるリーダーの本間たちとも議論を重ねながら、スポーツというキーワードを走りで表現すべく、快適性を確保しながら俊敏な動きを模索していった。

ところが、役員を含めて、走りの方向性を確認するために実施した先行開発車の社内試乗会で、待ったがかかったという。

松宮

試乗していただいた方々から、「クラウンならではの上質さが感じられない」というフィードバックをいただきました。

当時を振り返ると、まだまだ玄人向けの速く走れる素性に偏っていたと思います。

その後、関係者でさらに議論を重ねた結果、「やはりクラウンである以上、上質で快適な乗り味は譲れない。単なる速さではなく、スポーツとして運転する楽しさを追求する方向を目指そう」という結論に達しました。

この時、硬いサスペンションだけがスポーツじゃないという価値観が「意のままに」「楽しく」というキーワードで明確になりました。

Facebook facebook X X(旧Twitter)

RECOMMEND