「クルマ屋になろう」という意識が「もっといいクルマづくり」を進化させる!?

2023.10.10

「新しいカタチのスポーツSUV」として登場したクラウン スポーツ。開発陣のさまざまな挑戦を可能にした、クルマづくりの現場における変化とは?

テクニカルセンター下山で現地現物

クラウン スポーツならではの走りの方向性を見出したプロジェクトチームは、上質でありながら、意のままに操っている感覚が得られる、ワクワクするような走りを目指し、開発を進めた。

21カ月という限られた開発期間で、理想とする走りを実現するためには、クルマづくりに変化が必要だったと松宮は語る。従来は、サスペンションやショックアブソーバーなど機械的な要素の仕様を決定してから、電子制御系の仕様決定に移行するなど、いわば数珠つなぎのように開発が進行していた。

一方、新型クラウンでは、機械系(メカ系)と制御系の開発を融合し、設計と評価部署が一体となったワンチームで進めたという。

松宮

従来の方法では、“走る・曲がる・止まる”という性能を全体として最適化するのが難しいことが分かったからです。

クラウン クロスオーバーやスポーツには、電子制御式後輪操舵システムのDRSが備わりますが、評価ドライバーにもDRSのチューニングを担当していただいて、サスペンションやショックアブソーバーといったメカ系と制御系を融合させて開発してきました。

伊藤

制御系も含めて走り込みを行うことでチューニングの幅が広がったのが、評価ドライバーとしては画期的だと感じました。

一方、お客様に違和感を抱かせないナチュラルな制御をつくり込むのが最も苦労した点です。

制御のみに頼ったチューニングをすると、数値上は乗心地やハンドリングが良くなるのですが、どうしても自然な動きにならないのです。

このような時にメカ系のチューニングで対応すると上手くいく。自身が両方のチューニングをマルチに対応することで、メカと制御の融合が非常に大切だと感じました。

山﨑

DRSについては、テクニカルセンター下山以外にも士別試験場の積雪路やサーキットなどでも走り込んで、制御量を少しずつ変えるなどの調整とテストを繰り返しながらチューニングしました。

結果的に、誰もが場所を選ばず安心して走りを楽しんでいただけるように仕上げられたと思っています。

部署の垣根を越えた開発体制も、クルマづくりの現場における変化の現れだと、松宮は語る。

松宮

我々のようなサスペンションの担当とブレーキの担当は別チームなのですが、クラウン スポーツではサーキットでの走行テストを一緒に行って、お互いにとってベストな仕様を決め込んでいきました。

部署を越えて互いを知り、みんなで情報共有をし、困った人がいたら助けるというワンチームの精神で開発してきました。これも非常に画期的な取り組みだと思っています。

こうしたいくつもの新たな取り組みや挑戦を重ねながら、上質かつワクワクするような走りを目指してチューニングされた先行開発車。その方向性を再度確認してもらうべく、改めて社内試乗会が実施された。

塚田によると、そこでは高い評価を得ることができたという。こうして先行開発車での走り込みが一段落すると、プロジェクトメンバーたちは次のステップとして、実際にクラウン スポーツのボディをまとったプロトタイプでの開発に注力。走りの完成度を高めていった。

開発最終段階では、モータージャーナリストや一般のお客様にサーキットで試乗していただく機会も設けられた。クルマのプロや実際に乗っていただくお客様の声を、量産車に反映させるためだ。

松宮や塚田たちによると、そうした社外の方々からも想像以上に高い評価を得られ、メンバーみんなで胸をなでおろしたという。

伊藤

塚田さんからチューニングを任せていただいて、たくさん失敗もしました。

でも、そんなときは軌道修正していただいたからこそ、さまざまなチャレンジもできましたし、自分の成長につながりました。

今回のプロジェクトで学んだことを次の「もっといいクルマづくり」に活かしていきたいと思います。

松宮

お客様に笑顔になっていただくため「もっといいクルマをつくる」ことが我々の使命ですし、実現するためには我々が本当に良いと思えるクルマを目指し、失敗を恐れずチャレンジしていく事が大事だと改めて気付かされました。

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