国の基幹産業としての魅力向上と共に、日本の経済成長を支えていく。日本自動車工業会が掲げる「新7つの課題」の取り組みが実践の段階へ。
日本経済を支える物流を
2つ目は、サプライチェーン全体での競争力向上における「共同物流実装に向けた標準PF(プラットフォーム)構築」ついて。物流部会の永野岳人 部会長(ホンダ)、吉田晃朗 副部会長(トヨタ)が報告した。
吉田副部会長は「資源が少ない」「自然災害が多発」「労働人口が減少」という日本の課題を乗り越え、経済成長を支える物流構築の必要性を強調。
3月の理事ミーティングで話題に挙がった「完成車の共同物流」については、現状A社の完成車をトラックで販売店や保管庫に届け終えた後、帰り道は積荷がなく輸送のムダが発生しているという課題がある。
この復路でB社の完成車を載せ、トラックを往復で最大活用することが「完成車の共同物流」だ。
共同物流を実現するうえでは、各社の工場や販売店の位置、トラックの配送ルートや現在地などのデータ連携が最重要課題となる。
吉田副部会長は「使っていない逆物流(復路)を他のメーカーに使ってもらうショーケースを完成車物流でつくっていきたい」と話す。現在は、各メーカーの物流データを使ったシミュレーションを実施中で、今年夏ごろを目途に共同の範囲やステップを決めていくという。
三部敏宏 副会長(ホンダ)は、記者からの質問に答える中で、次のように語っている。
三部副会長
現場レベルの話でいうと、固縛(完成車をトラックの荷台に固定するやり方)も各社でバラバラです。まずは足元の部分として、どのメーカーのクルマでも同じトラックに積めるよう、そのような部分から合わせていくことから始まります。
説明したように、過去のデータを集めてシミュレーションすれば、どのくらい完成車物流の効率が上がるかが分かります。データを集約して仕組みをつくるには時間がかかるため、2028年末を目処にシステムを構築したい。
サプライチェーン全体での競争力向上のもう一つの取り組みである、部品・素材の共通化については「議論しているところ」とした。
また、完成車と並行して補修品の共同物流も試験的に開始。いすゞ自動車の帰り便を活用し、トヨタの補修品を輸送する協業が行われている。
働き方を見直し、産業の魅力向上へ
3つ目は、人材基盤の強化における「産業の魅力向上に向けたカレンダー変更」について。
この場合の「カレンダー」とは、自動車産業で通例とされている勤務形態を指す。
祝日も稼働する代わりに、その分の休日をゴールデンウィーク(GW)や年末年始などの長期連休の前後に移動させ、大型連休にするという働き方だ。
従来は、工場が停止するこの大型連休の間に大規模な設備の導入やラインの改修を行っている。
こうした働き方は、家族との予定も合わせにくく、価値観や生活スタイルが多様化している昨今では自動車産業離れの一因にもなっている。
自工会は今回、このカレンダーの見直しに動くと発表。2027年度より、5月のGW前後や連休の間にある平日を稼働日に。これまで稼働日だったハッピーマンデー*の一部を休日化していくという。
*日本の祝日の一部を月曜日に移し、土日とつなげて3連休にする制度。1月の成人の日、7月の海の日、9月の敬老の日、10月のスポーツの日が該当。
自動車産業で働く意欲を高めるための対応だが、祐川浩之 人財部会長(ホンダ)は、生産性向上も併せて進める必要があると強調した。
祐川 人財部会長(ホンダ)
日本の基幹産業である自動車産業の魅力を高め、将来にわたって選ばれる産業へと進化させていく必要があります。それに向けて「新7つの課題」への取り組みによる抜本的な産業課題の解決と併せ、業界一体となった働き方改革を推進し、生産性向上を実現しなくてはならないと思っています。
働き方改革については、働く人々の変化、価値観の多様化といった社会の流れに対し、自動車産業として多様な働き方をつくり出していく流れをスタートさせたいです。
その第一歩として、2027年度は、これまでGW前後に集中していた工事や設備対応、切り替え作業を平準化することにチャレンジしたいと思っています。この平準化により、工事・設備関連の協力会社の工事計画の安定化や人員手配の効率化、中長期的な人員確保・育成につながる効果も期待しています。
カレンダー見直しによるサプライヤーや関係会社への影響については、すでに自動車総連(全日本自動車産業労働組合総連合会)とも協議を重ねており、今後、関係団体への丁寧なヒアリングや理解活動を行っていくともコメントした。
記者からは「総量として休日数自体は増えていないと思うが、何年後か先に増えていく予想図はあるのか」という質問が出た。
これに対し、鈴木俊宏 副会長(スズキ)は次のように回答している。
鈴木副会長
2027年度については、休日数が増えるということではありません。今後、休日を増やしていくかどうかについては、改めて検討していく必要があると考えています。
今年の春闘でも休日を増やした企業がありますが、社員からは「生産性を上げなければならないという緊張感が走った」という声も寄せられています。こうした点も含め、各企業でも取り組むべき課題だと思います。
従業員の皆さんや労働組合としっかり話し合いながら、休日を増やす取り組みをどのように進めていくべきか検討することが重要です。将来に向けて何日増やすかといった具体的な点とは別に、(カレンダー見直しの)取り組み自体を進めていく必要があると考えています。
「実践を重視し、行動を大事に」
会見の後半、佐藤会長は「新7つの課題」に対する取り組みの姿勢を改めて強調した。
佐藤会長
中東情勢を始め自動車産業を取り巻く環境は大変厳しくなっています。安定したサプライチェーンの確保、多様化するエネルギーに対するソリューションの準備、資源活用に対する道筋を作ること。そういった大きな視点での取り組みがますます重要になっている。
我々自工会として、各社が国際競争力あるいは生産性を一層高められるように、この意思を持って協調領域をしっかりつくっていきたい。議論を繰り返すのではなく、プロジェクトとしての立て付けをして、形づくられたものから実践を重視し、行動を大事にするような形をとる。
手段を目的化してしまわないか、大きな目標を掲げていたのに小さく収まってないか。これは自分たちの中でモニタリングしながら検証して進めていきたい。ジャパンモビリティがどうあるべきかという大きな視点を忘れずに、しっかりと具体に落としていきたいです。
ジャパンモビリティショーBizweek 2026開催
また、今年10月に開催されるジャパンモビリティショー(JMS)Bizweekの概要も紹介があった。
JMSは、未来のモビリティを展示する一般来場者向けのイベントと、企業が集まりビジネスの機会を共創する「Bizweek」 を1年ごとに交互に実施。Bizweekは2024年に第1回が行われ、2026年は2回目の開催となる。
今回のJMS Bizweekは2026年10月13日~16日に開催。場所は幕張メッセ(千葉県)に決定。「あなたが動けば、世界が動く」をテーマに、スタートアップとも連携しながら「新7つの課題」への取り組み方を議論する場になるという。
自動車産業の国際競争力を高める「新7つの課題」に対し、協調と実践による取り組みは続いていく。