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「社会実装」を掲げた自工会 「新7つの課題」の現在地

2026.04.09

「新7つの課題」は構想から実行へ。日本自動車工業会(自工会)が新体制発足後初となる記者会見を実施し、議論の進展と、その先に向けた方向性が示された。

2026年3月19日、日本自動車工業会(自工会)は、佐藤恒治会長のもとでの新体制発足後、初となる記者会見を実施した。

自工会は昨年12月、従来の「7つの課題」を発展させた「新7つの課題」を正式決定し、本年1月の新体制発足とともに取り組みを本格化させている。

会見の冒頭には、2月18日の臨時理事ミーティングで公開された「新7つの課題」の取り組みテーマ案を根底に、これまでの進捗を示す資料が共有された。各テーマの検討状況は円で示されており、複数の項目で具体化に向けた検討が進んでいることが見て取れる。

「受け身」から「意志ある協調」へ

佐藤会長は、従来の業界団体のあり方について、「各社の取り組みを前提に共通課題を扱う側面が強く、結果として受け身的な対応になっていた」と振り返ったうえで、「協調すべき領域を、意志を持って進める」と、個社競争を前提としつつ、従来の枠組みからの転換の必要性も唱えた。

その背景には、脱炭素や地政学リスク、資源・エネルギー制約など、「個社で解決しにくい、一つひとつがスケールの大きい」問題に対して、自動車産業として協調すべき領域はしっかりと見極めたうえで協調し、腰を据えて取り組む必要がある、との意識がある。

さらに、「新7つの課題」に込めた考え方として、次の3点を挙げた。

- 産業を超えた連携による課題解決
-ゴールを「社会実装」に置くこと
- 多様性を強みに変えること

特に「社会実装」については、「大玉のテーマを社会実装するところまで持っていく」と述べ、議論にとどまらない取り組みの必要性を強調した。

佐藤恒治 会長 (発言要旨)

これまで日本の自動車産業はさまざまな取り組みを進めてきたが、環境対応や安全技術革新など課題は山積しており、各社の競争を軸とした産業発展の形には限界がある。自動車産業が現状のままで国際競争力を保ち続けられるのか、という大きなテーマが、まさに投げかけられている。

中東情勢を含め、地政学的リスクの高まりに対しても感度を高く対応していく必要がある。エネルギー、あるいはサプライチェーンの不確実性に対する強じん化には、自動車産業のみならず、他産業や官民での連携が欠かせない。

そうした観点に立てば、「自動車産業の発展」のみをゴールにするのではなく、「自動車産業が社会にどんな役割を果たせるのか?」、「どんな社会を実現できるのか?」というゴールを置くことが重要。社会的な理解を得るためにも、大玉のテーマを社会実装するところまで持っていく、シュートを打っていく、ということを意識して7つの課題に取り組みたい。

日本の主要完成車メーカー14社で構成される自工会は、多様なモビリティにエンゲージしている企業が一つの目的に向かって協調して動いていける、他国と比べても極めて稀有な団体。このエネルギーが日本の自動車産業の「勝ち筋」につながる原動力になると理解している。

質疑応答で示された進展と課題認識

記者からは、「新7つの課題」の進捗に関する手応えや課題認識について質問が挙がった。

これに対し、佐藤会長は、「ゴールイメージを合わせることが非常に大事」と述べ、各社の前提や強みが異なる中での認識合わせの重要性を指摘した。

鈴木俊宏副会長は、前体制での「7つの課題」への取り組みで「他産業も巻き込んだ議論ができるようになった」と述べ、石油業界との対話などを例に、新体制下での協調の広がりに一定の手応えを示した。

鈴木俊宏 副会長(発言要旨)

今まで、どちらかというと「自工会でどう攻めていくか」という議論が多かったが、前体制での「7つの課題」で「競争力のあるクリーンエネルギー」を担当する中、石油連盟等としっかり話をしたことで相互理解を深めることができ、(自工会内でも)どうやって他産業を巻き込んで取り組みを進めるか、という議論ができるようになった。

(自動車業界の課題を)自工会だけで完結しようとするのではなく、関連業界や政府も巻き込んで話を進めていけば解決の道筋がつく、という手応えを感じている。

一方、三部敏宏副会長は、「過去の構造を崩さないと新しい競争力は生まれない」と述べ、競争・協調領域の再整理の難しさに言及した。

三部敏宏 副会長(発言要旨)

グローバルの競争環境はし烈さを増すばかり、という事業環境の中で、日本の自動車産業が生き残れるかどうか、かなり瀬戸際の状況にいると認識している。いかにスピード感を持って進めていけるかが鍵になる。

過去の構造を崩していかないと、新しい競争力は生まれない。理事の中で認識は統一されているので、新体制でスピード感をもって進め、日本の自動車産業のグローバル競争力をなんとしても確保したい。

「新7つの課題」は引き続き議論と具体化が進められる見通しであり、その具体化の行方が、今後の自動車産業の競争力を左右することになる。

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