経営チームがフォーメーションチェンジへ。4月1日付で佐藤恒治 社長は副会長およびChief Industry Officerに、近健太 執行役員が新社長に就任することを発表した。
損益分岐台数
富川
リリースには損益分岐台数の改善が重要課題とありました。一方で、恒治さんは年頭あいさつで「2026年を意志ある踊り場にしていこう」と話して、「生産性にこだわって実行に移すフェーズに入った」とありました。ということは、台数を増やしていくのではなく、お金の面を含めて質にこだわっていくというイメージでよろしいですか?
近 次期社長
どちらもだと思います。
まだ納車をお待たせしているお客様もたくさんいらっしゃいます。受注制約がかかっている状況でもありますので、しっかり一台一台、少しでも多く早くつくってお客様にお届けするというのは、ベースとして非常に重要なことだと思います。
一方、富川さんが言われたように質ですね。
トヨタの収益は「何兆円を目指します」というような目標はない会社ですけれども、どんなに環境が厳しくなった時にも、しっかりと収益を上げられて、事業を止めない、いろいろなことをバサバサとやめなくてもいい。
それがステークホルダーの皆さんから求められているトヨタの収益構造だと思うので、しっかり維持していくために、今は損益分岐台数を引き下げて、悪い時に踏ん張れる構造をつくっていかないといけないと思っています。
佐藤社長
稼ぐ力がないとやりたいことってできないんです。トヨタがやるべきことをやるためには、稼ぐ力をつけなきゃいけないと思います。
あと、近さんは遠慮してクルマ好きの側面を見せないので僕があえて言うと、以前近さんとミニバントークをしたことがあって、近さんはミニバン好きなんですよ。遠慮してたぶん言わないんですけど、ミニバン話をさせると、ずっと熱く「ノア、ヴォクシーとは」とか語り出します。結構クルマ好きだと僕は思うんです。
それ言っちゃダメでした?
近 次期社長
全然大丈夫です(笑)。
富川
近さんはラリチャレにも出ていましたし、去年近さんが出る時に取材して、「一年後勝負しましょう」みたいなことを言っていました。自分で運転する、競技に出ることは続けられる?
近 次期社長
クルマに乗る機会はですね、今までと同じようにつくっていきたいなと思っています。一年後勝負できるように。
豊田会長との会話
富川
今回の役割変更について章男さんとはお話しされました?
佐藤社長
1月に入って少し会長と話をした時に、「日本を良くする役に立ちたいんだ」ということを本当にシンプルなんですけど。
豊田会長が今、見ているスコープとか思っていることが、すごくシンプルな言葉だったからこそ伝わってきて、経営の体制としてフォーメーションをこうしよう、ああしようという細かいことは一切ないんですよ。
皆さん、もしかしたらそういうことを思っているかもしれませんが、全くない。なさすぎるぐらいない。だけど大きな軸、「日本を良くしていくために役に立とうぜ俺たち。だって産業報国って言ってきたじゃないか」というようなことを会話しました。
富川
今回の人事に章男さんは絡んでないんですか。
佐藤社長
意見は持っているでしょうが意思決定には関わっていないです。
トヨタの役員人事のあり方として、先ほど申し上げた人事案策定会議というのが、役員人事の体制について実質的に権限を持って進めていきます。我々で言うと機関設計を見直して、昨年の株主総会以降、監査等委員会設置会社となって、新しい取締役の体制ができて、その体制で人事案策定会議の人も見直されて、そこから活動をスタートしています。
そのタイミングから将来のトヨタの経営体制というのはどうあるべきか(が考えられている)。例えばリスクマネジメントで、現役のCEOに何かあった時にどう経営としてリカバーしていくのか、後任のSuccessor(企業における経営者や特定の重要ポストなどの後継者)はどのように構えていくべきなのかということをずっとその段階から議論しているんです。
今回の件で言うと、私自身が自動車工業会の会長に就任するということが昨年末に大体固まったので、そのタイミングから今までしていた議論に対して、じゃあどうするかという具体に入っていって、私とも議論を重ねて、最終的には私が決断して、今回の人事案で取締役会に提案して、こういう形になりました。
富川
章男さんは、今回の人事をどう受け止めているんですか?
佐藤社長
タイミングに合わせたフォーメーションというのは、柔軟な経営体制がまず求められるということと、豊田会長から見た時に、今は69歳ですが、今年70歳になります。今後会長としてやることを3つに絞ると言っていて、その中の一番大きなところが人財育成なんです。
豊田章男の下で経営の実践を学んで、トヨタを経営していく体制を厚くしていく、そのためのオポチュニティを作っていくということが大事。
フォーメーションチェンジがトヨタをより強くしていく。「トヨタがしっかりと戦っていける会社になっていくことが、ひいては日本の産業を元気にしていくことになっていくといいよね」という考えを持っているので、そういう想いで今回の人事案を会長は受け止めてくれてるんじゃないかなと思う。