経営チームがフォーメーションチェンジへ。4月1日付で佐藤恒治 社長は副会長およびChief Industry Officerに、近健太 執行役員が新社長に就任することを発表した。
トヨタ自動車は6日、4月1日付で佐藤恒治 社長が副会長および新設するChief Industry Officerに就任することを、トヨタイムズニュース生放送で発表した。新社長・Chief Executive Officer(CEO)には近健太 執行役員が就く。
役員人事案策定会議での提案をもとに、同日の取締役会で決議した。
「トヨタと産業の未来のためには、経営チームのフォーメーションチェンジが必要」
3年ぶりの体制変更。トヨタイムズニュースに出演した佐藤社長は、今回の交代の狙いをこう語る。
2025年5月に日本経済団体連合会(経団連)副会長、26年1月に日本自動車工業会(自工会)会長に就任した佐藤社長は、日本の産業競争力強化にも期待がかかる。
一方トヨタでは、「稼ぐ力」の向上、「損益分岐台数の改善」が足元の重要課題であり、取り組みの具体化が急務。そこでChief Financial Officer(CFO)として収益構造の改善に取り組み、ウーブン・バイ・トヨタで機能を超えた経営経験を積んだ近 執行役員に白羽の矢が立った。
より広く、自動車産業全体に軸足を置いた活動を佐藤社長が、トヨタ社内の経営環境に近 執行役員が目を配る形だ。
経理本部長、副社長などを歴任してきた近 次期社長は、新社長就任にあたって「自動車産業全体のため、日本のために、トヨタは投資していかないといけない。それができる収益構造をつくる」と決意を述べた。
この日の生放送は、冒頭トヨタイムズニュースの富川悠太が質問し、2人が答える形で始まり、その後記者との質疑応答があった。生放送で語られた想いを速報する。
フォーメーションチェンジ
佐藤社長
今回の体制変更の目的、これはトヨタがこれから向き合っていく経営課題に対して、全力で取り組んでいくためのフォーメーションチェンジだと思っています。
2つ大きく課題があると思っています。
1つ目は、社内において未来を支えていく「稼ぐ力」。これを高めていくということが非常に重要な局面になっています。
トヨタはこれまでも2年かけて足場固めをやってきました。そこから環境はギアチェンジをして、生産性向上、あるいはさらなる良品廉価のクルマづくりをもっと追求していく。そんなフェーズに入っていきます。その変曲点にあるというのが1つ。
もう1つは、産業連携を加速していくということです。
今後自動車産業の国際競争力を守っていくためには、業界が一丸となって、協調領域を具体化させて、日本の勝ち筋、これを見つけていかなければいけないと思っています。
社会インフラと一体になってクルマを進化させていくことが求められている中で、鍵を握るのは、産業を超えた仲間との連携だと思います。すなわちトヨタとしてこれまで以上に産業の中で果たすべき役割というのが大きくなっていると理解しています。
このような中で、役員人事案策定会議から提案を受けたことをきっかけに、今の経営課題を踏まえて、最適なトヨタの体制はどうあるべきか検討をしてきました。
その上でトヨタと産業の未来のためには、経営チームのフォーメーションチェンジが必要だと判断して、役割変更について本日取締役会を開催し、決議をいたしました。
今後、近執行役員は社長・CEOとして社内に軸足を置いて、先ほど申し上げた「稼ぐ力」を高める取り組みを積極的に推進してまいります。近執行役員は、経理、財務に明るく、直近では皆さんご存知の通りウーブン・バイ・トヨタのCFOとして、外からトヨタを見て機能を超えた社内の改革を推進してきた経験があります。
今後の取り組みを具体化していく上で、機能軸にとらわれない全体最適の取り組みを進めていく上で、近さんの強みを生かしたリーダーシップを発揮してもらえると思っています。
私自身は、副会長・Chief Industry Officerとして、自動車工業会や経団連をはじめ産業に軸足を置いた活動にますます注力してまいりたいと思っております。
トヨタと産業をつないで業界連携の実践のスピードを上げていけるように現場で動き続ける。これをしっかりやっていきたいと思います。今まで以上に動き回ってまいりたいと思っております。
トヨタでは「肩書きではなく、役割で仕事をしよう」とずっと言っていまして、私が社長に就任して以降もずっと心がけていたのは、経営のスピードを落とさないということ、それから行動し続けるということです。これがトヨタの執行チームが大切にしてきたチーム経営の形だと思っています。
自動車産業と日本をもっと元気にしていく。そのお役に立つために、新しいフォーメーションを組んで、それぞれの役割を果たしていきたいと思っています。皆様の変わらぬご理解、ご支援をいただきますよう改めてお願い申し上げます。
自問自答の日々
富川
役員人事案策定会議から提案を受けた瞬間は、率直にどう感じたんですか?
佐藤社長
その瞬間はすごく悩みました。
実は自動車工業会の会長選任の議論が秋口ぐらいから始まっていて、各社トップといろいろな議論をしていました。いろいろな経緯があって、トヨタが音頭を取ってほしいという声が高まっていく中で、今の自工会の活動と、トヨタの執行職の責任者としての仕事を両方フルスイングでやれるだろうかと自問自答はしていました。
ただ人間弱いもので、なかなか自分から言い出すところまで至らない中で、葛藤している時に、人事案策定会議から、その2つの重要な役割を今のフォーメーションで戦えるだろうかという問いかけがあり、ハッとしました。
ある意味、本当にガバナンスが効いているなと思いました。第三者的に見て、今の状態はかなりオーバーロードなんだと人事案策定会議が投げかけてくれたおかげで、少し引いて冷静に見て、これは考えていくべきことなのかなと思ったことを覚えています。
富川
自工会会長、経団連副会長、その他の国のお仕事も含めて全力でやられている反面、社長もちょっと続けたいなっていう気持ちもあったわけですね。
佐藤社長
それはそうですね。現場で育ってきて、クルマづくりが大好きでやってきている中で、「社長の役目、役割は何だろう?」とずっと自問自答しているわけです。クルマづくりは本当に人生を賭けて挑む価値のあるものだと思っている中で、だからこそ、そこにこだわりたくなる自分もいるんです。だからすごく葛藤はありました。
富川
章男さんが14年社長を務められたじゃないですか。佐藤さん3年ですよね? 短くないですか?
佐藤社長
その質問、絶対されると思っていました(笑)。
正直短いと思います。ただ2つ思うんです。
「まだ3年だけど、もう3年」なんです。
自動車業界のスピードって、そんな生ぬるいものじゃない。かつての時間軸と今の3年は全く違う。
それと、豊田会長、当時の社長から「社長やってくれない?」と言われた時に、豊田社長が10年やってきたクルマづくりがまだ未完なんだと。そのエンディングというかもうフィナーレを一緒にやってくれよと言われた。それがスタートだったんです。
豊田会長から1月末かな、少し時間をゆっくりとって2人で話をした時に言われたのは「日本を良くしていくためのお役に立ちたいんだ」ということを、しみじみ話してくれたんですね。
いいクルマを一緒につくりたいんだと言った時の会長と重なって、今自分がどの場にいるべきなのか、その言葉ですごく吹っ切れたというか決意が固まった。
もう1つが、先手必勝なんです。経営者の端くれとして思うのは、今の局面で主語を「私」にしちゃいけないと思っているんです。
主語を「私」にすると判断が濁る。「私はまだこれができていない。あれがやりたい」となるので、この局面で主語を「私」にしては絶対にいけない。
だから主語は「We」、「私たち」と考えると、自工会の会長選任が今年来て、このタイミングでやらなきゃいけないことがあるのであれば、3年は短いとか、そういうことではないという想いです。
富川
3年は短いと思ったので、何か悪いことしちゃったのかと。そういう会見かと思っている人も少なからずいたみたいですよ。
佐藤社長
さっき友人から届いているSNSの連絡が、みんな「何やったんだ、お前」と届いていて、誤解があるといけないので、しっかりお伝えしますが何もないです。今申し上げているような非常に前向きな議論ですので、そこだけは最初にご理解いただきたいですし、私の友人たちには、変な連絡を送ってくるのをやめてほしいと思います。