経営チームがフォーメーションチェンジへ。4月1日付で佐藤恒治 社長は副会長およびChief Industry Officerに、近健太 執行役員が新社長に就任することを発表した。
クルマ好きのおじさん→クルマをつくるのが好きなおじさん→○○が好きなおじさん?
富川
認証問題後もよく現場で姿を見ました。現場で感じたことで、今後に生かしていきたいことってありますか。
佐藤社長
就任初年度はトヨタがモビリティカンパニーを目指すということを、いかに具現化するかということに注力をしてきて、その時に起きたのが認証問題でした。
あのタイミングで豊田会長からもらったアドバイスは本当にシンプル。
「佐藤、こういう時は社長は現場に行け」。
この一言なんですね。僕も開発で育っているので、ある程度現場を分かっているつもりでいたわけです。だけど、行くと全然わかっていない。トヨタはどの工場でもどの開発現場でも、みんな本当に一生懸命頑張っている。見えないヒーローがたくさんいるんです。
みんなの頑張りを知らずに「現場を分かっている」と言っていたんだなということをすごく感じましたし、みんなをもっと頑張れるようにしてあげるには、何をやれるんだろうと思ってやってきた3年でした。
少しセンチメンタルな話になってしまうんですが、この前下山にトヨタのテストコースがあって、後輩たちが「佐藤さんクルマに乗ってくれ」と呼んでくれて、一日中クルマに乗っていました。開発をやっている人たちの目がキラキラしてめちゃくちゃ綺麗なんですよ。
情緒的な話で申し訳ないんですが、僕が社長に就任した時に「クルマをつくり続ける社長でありたい」ということを言って、自分はこの人たちにもっと思いっきりクルマをつくらせてあげたいと思ったんです。
あの時のみんなのキラキラ感が心に迫ってきて、「自分にできることは何だろう」というと、自分がエンジニアとしてそこに飛び込んでいくことではなく、彼らがやりたいことをやれる環境を作ってあげることだよなと思うんです。
今までみたいにトヨタの中で頑張ればそれができる時代ではもうなくて、業界、経済、あるいは通商とか、いろいろなものと絡み合いながらトヨタのビジネスは存在している。そう思うと「場」。今年の年始に豊田会長が書初めで「場」と書かれたが、「場」なんだなと。
我々の頑張るべき場が広がっているし、変わっていっている。自分がいるべき場はどこかというのを考えた時に、今回の決断に至りました。
富川
今クルマ好きという話もありましたけれども、章男さんはクルマ好きのおじさんでした。恒治さんはクルマをつくるのが好きなおじさんでした。近さんはどんなおじさんですか?
近 次期社長
私もクルマが好きなんですが、経理をやっていますので、クルマをしっかりつくってもらえる投資をできるためのお金とか収益、数字というものにはこだわりがあります。
富川
お金と数字が好きなおじさんということですか?
近 次期社長
お金が好きな(おじさんです)。
石田退三
富川
お金とは言っても、お金にがめついわけじゃないですよね?
近 次期社長
自分でもそう思っているんですけども、会長とお話しする機会があって、その時に会長から石田退三さんのお名前が出ました。
喜一郎さんの自動車事業を支えた番頭さんですが、石田退三さんもものすごくお金にはこだわりがあって、無駄なものには一切お金を使わない。ただ喜一郎さんの夢には、思い切って大きな投資をされたと伺っています。
そこは今でも変わっていないと思っておりまして、さっき「お金が好き」と申し上げましたが、それは未来のため(に使う)。
それからトヨタの収益は、トヨタの力だけで稼げているものではありません。自分以外の誰かのために、自動車産業全体のために、日本のために、トヨタはしっかり投資していかないといけないと思います。それをしっかりできる体質、収益構造にこだわれということが、会長が石田さんのお名前を出された理由なのかなと思って、努力していきたいと思います。