経営チームがフォーメーションチェンジへ。4月1日付で佐藤恒治 社長は副会長およびChief Industry Officerに、近健太 執行役員が新社長に就任することを発表した。
トヨタのバッジ
富川
リリースには4月1日付の役員人事だけではなく、第122回定時株主総会日付議役員人事についてという欄もありまして、そこを見ると「取締役から退任予定」とあるんです。取締役から外れるということですね。
佐藤社長
2つの意味があると思っていまして、コーポレートガバナンスコードを意識しながら、コーポレートガバナンスのあり方というのを、トヨタがこれまで努力してきた経営改善の努力をしっかり維持していきたいという想いが1つあります。
取締役会がトヨタを勝たせるための経営を真剣に議論している、全員参加の取締役会になってきている中で、メンバーのダイバーシティや数に対してこだわって経営をしてきている中で、今回私が副会長に就任することで、なんとなく外向けに肩書きが要るよと(なってはいけない)。
世の中は思っている以上に肩書きが大事だったりする社会じゃないですか。ですがトヨタはそういうことはあまりない。しっかりとコーポレートガバナンスという観点でトヨタが大事にすべきことを守っていきたいというのが1つです。
それからもう1つは、これからやろうとすることにトヨタの社長のバッジ、あるいはトヨタの取締役のバッジは必ずしもポジティブではないというか、邪魔になる時があると思うんです。
例えば、自工会でやろうとしているテーマは、業界横断のテーマが多いわけです。総論賛成、各論各社でという状態を打破していかないといけない時に、リーダーシップを取ろうとして、「トヨタのなんとか」というバッジがついていると、結局トヨタに対する同調圧力にしかならないんですよね。
富川
今まではそう感じることがありました?
佐藤社長
自分の中でなんとなくモヤモヤしながら「皆さんやりましょうよ!」と言うけれど、トヨタのバッジがついた状態で業界のためにと言って、どれだけ本当に理解が得られるのか。
本当に素で自分自身が各社の想いの連結器になれる立ち位置にいないと、やろうとしている大きな業界改革はできないという想いもあって、その2つを考えています。
頭の中が真っ白に
富川
近さんは今回の役割変更を、いつ誰から聞いたんですか?
近 次期社長
私が聞いたのは、1月の中旬ぐらいです。佐藤さんも言いましたが、人事案策定会議の役員の方から、こういう構想があると伺いました。
役員の方には大変申し訳ないですが、正直大変びっくりして、頭の中が真っ白というか、いろいろとお話を伺ったと思うんですけど、あんまりよく覚えてないのが正直なところです。
その後に佐藤さんが言ったような趣旨みたいなことを話されたんだと、同席してくれた役員の方に聞きまして「そういうことか」と思いました。
富川
まさか自分だとは思ってなかったわけですね。誰が(社長に)なると思っていました?
近 次期社長
(まだ3年だったので)あまり考えていませんでした。
富川
でも副社長経験者でもありますから、(当時は)「次は自分があるかも」と思っていました?
近 次期社長
いえ、それも全く思っていなかったです。
富川
モチベーションを持っていくのも大変かもしれないですね。
近 次期社長
今日の時点でいろいろなものを見通して、こうやっていくんだというものが全部クリアになっているかというと、そうじゃないのが正直なところです。
佐藤さんが話したようなことも、逆に言うと大きな学びにもなりました。
これから会長や佐藤さんや他の執行のメンバーと4月1日以降どういう方向性で行くのかとか、どんなチームにしてくんだとか相談していく。
今回、佐藤さんがいわゆる全日本の方に参画するということで、いわゆるトヨタのチーム経営の範囲が大きくなるということだと思いますので、それも含めて一生懸命考えていきたいと思います。
富川
ウーブン・バイ・トヨタでの経験は生かせそうですか?
近 次期社長
そうですね。今は普段ウーブン・バイ・トヨタの方におりますけれども、ウーブンはすごく若いメンバーが多かったり、ソフトウェア開発の会社ですので、ハードウェアとは少し違うアジャイルな開発をしている、そういう考え方をしています。
本当はトヨタもしっかりやっていかなければいけないと思うんですが、「徹底した情報共有」がされる会社です。瞬時にいろいろな話したことが、いろいろなやり方を通じて、共有している会社です。アジャイル開発には絶対にそういうことが必要。
そういう経験もそうですし、トヨタとすごく近い会社ですけれど、それでも一緒じゃない。少し離れています。
そこからトヨタを見ることができた経験というのは、私にとって非常に大きいと思います。それまでの会社生活ではわからなかったこと、トヨタのすごいなと思うところ、逆に「ちょっとな…」と思うところがいっぱいありました。それはぜひ生かしていきたいと思います。
富川
言える範囲で、トヨタが「ちょっとな…」と思ったところはどこですか?
近 次期社長
トヨタは、ものすごくみんな一生懸命で、一人ひとりがすごく強い使命感を持ってやっています。過去にやってきたことの蓄積もものすごくあります。
逆に言うと、何か新しいことをやろうとする時にも、過去のやり方、過去の方程式に、どうしても沿った考え方をしてしまう。今のビジネスをよりよく改善していくためにはすごく重要なことだと思うんですけども、新しいこと(をやる)という意味では、少し違ったやり方をしなくちゃいけないんじゃないかなと思うことはありました。
富川
佐藤さん、いかがですか?
佐藤社長
外から見ないと分からないことはいっぱいありますよね。悪気なく偉そうだったり。
たぶん今、言葉を選んでくれたんだと思うんですが、機能軸が本当に強い会社なので、オペレーションをやっている一人ひとりには全く悪意がなくて、全員が頑張っている。だけど全体最適というか、横の連携が時々弱くなってしまったり(する)。
そういうのは近さんが言ったアジャイルな開発をされているウーブンのような環境下で見ると、画一的で壁があるように見えたり(することもある)。客観性を持ってトヨタを変えていくというのは、ものすごく大事かなと思います。
僕自身もずっと技術部で、豊田会長に言わせると白い巨塔育ちなので、そういう意味では、近さんが見てきた世界というのは、これからのトヨタを大きく変えていく原動力になるんじゃないかなと思います。