100年に一度の大変革期に突入した自動車産業。日本の元気な未来をつくるため、自工会が一丸となって目指すものとは。
クルマの課題に「協調」で立ち向かう
物流の2024年問題、資源の価格高騰、クルマの電動化など、自動車産業を取り巻く様々な課題について記者から質問された。
競争領域と協調領域の明確化。自工会の姿勢が改めて示されると共に、それぞれの課題に対する具体的な取り組みが語られた。まずは物流領域について豊田会長が口を開く。
豊田会長(トヨタ)
先ほどの理事会で、物流・商用領域の重要性について議論する中で日野のCJPT(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)についても話が出ました。
日野が信頼回復に真摯に取り組んでいること、それに対する世間の評価などを鑑み、カーボンニュートラルや物流課題の解決に向けては、日野の力も必要だということになりました。
これは(自工会の)決議事項ではございませんが、自工会理事全員の賛同が得られましたので、日野のCJPT復帰について私からご報告させていただきます。
日野には、今後も信頼回復のための努力を続けながらCJPTを通じて、日本の物流・商用領域の競争力強化にも取り組んでもらいたいと思っております。
片山正則 副会長(いすゞ)
大型車では、商用車4社の協調領域の拡大が非常に重要になっております。
大きな社会問題となっている(物流の)2024年問題。ドライバー不足は、24年以降も非常に厳しい状況が続くことを覚悟せざるを得ないということです。
社会全体で持続可能な対策を打っていくことでしか、この問題は解決できないと思っております。
1つは省庁主導の動きがございます。
例えば高速道路での物流の効率化、一部区間での自動運転のテスト開始、速度規制の問題などがあります。安全を犠牲にしての物流効率はありえませんので、安全を最優先にしたうえでの対策を4社ワンボイスでやっていくことを協調して進めております。
2つ目が女性の活躍です。
女性がドライバーとしてより活躍できるように、女性ドライバーにも運転しやすいクルマづくりをはじめ、色々なところで、より女性が魅力を感じていただけるような取り組みが進められています。
(カーボンニュートラルの問題など)今まで以上に協調領域の拡大、協力が必要になります。
さらに「共同輸送」についても語られた。
片山副会長(いすゞ)
物流効率という観点で見ますと、トラック全体で平均50%を切っているという輸送効率です。
また、競争領域にはなりますが、普通免許で乗れるトラックの商品拡充についても各社の想いはひとつです。これら課題が見えてきた今、ますますの協調活動が必要になっていると思っております。
資材価格の高騰については、鈴木俊宏副会長がこのように語る。
鈴木副会長(スズキ)
550万人の雇用を創出する基幹産業として、日本を支え続けていくために、中小企業様、あるいは取引先様との価格適正化を進める地道な取り組みが必要だと思っています。
(関わる会社が多いため)なかなか浸透しづらい部分もありますけれど、地道にやっていく活動が本当に必要だと思っています。
サプライチェーンの隅々まで浸透できるようセミナーの開催を実施しておりますし、ほかの自動車産業に関わる団体様にも関係を広げながら、自動車産業がリードできるよう頑張っていきたいと思います。
次に問われたのは、バッテリーEV(BEV)シフトなど、世界に伍していくための日本の自動車産業の競争力強化について。
佐藤恒治 副会長(トヨタ)
まずは、お客様から選んでいただける魅力ある製品をしっかりつくって経済を回していくことが重要だと思います。
(そのうえで)自動車というフレームワークから一歩踏み出して、モビリティ産業への進化、発展を遂げていくこと、変革をしていくことが非常に重要だと考えております。
モビリティ産業への発展を考えますと、物流から販売、サービスまで、あらゆる領域がつながって一つのフレームワークでビジネスを進めていく環境づくりが重要になってまいります。
自動車産業のみならず、多くの産業との連携を生み出すためにも、経団連のモビリティ委員会の企業の皆様との議論や政府、官公庁の皆様との三位一体となった取り組みが非常に重要だと思っております。
ジャパンモビリティショーの「乗りたい未来を、探しにいこう!」という言葉が象徴しているように、規制や外部圧力によって自動車の未来をつくるのではなく、自分たちの意志を持って、自分たちが生み出したい未来は何なのかということを多くの仲間たちと考え、進んでいくことが、最終的には、競争力を維持していくための非常に大きな原動力になるのではないかと考えております。
続けて、三部敏宏副会長が語った。
三部副会長(ホンダ)
電動化の競争力は非常に大きなテーマでして、完成車の話だけではなく、バッテリーやバリューチェーン、サプライチェーンなどを含めて日本で完結することが難しい領域で、これをいかにグローバルでつなぐかが、日本のモビリティ産業の競争力につながります。
非常に難易度が高いわけですけど、自工会としてはこの辺りを協調領域とし、官民一体となってグローバルでの競争力を高めていこうと話をしたところでございます。
ここの競争力で勝たないと、日本のモビリティ産業に未来はございませんので、後戻りすることなく前向きに進めていきたいと考えております。
モビリティの未来のために
会見では、自工会の次期会長の人事についても問われ「協調」によるチーム体制について語られた。
日髙祥博 副会長(ヤマハ)
自工会の会長が変わっても、日本の経済に貢献し続けるためには会長だけではなく、会長と副会長が一丸となる「チームでの体制づくり」が必要です。
次の会長を「誰がやるのか」の前に「なにをやるのか」という議論が重要だと考えています。
議論を深めることによって、次の体制づくりや、さらなる自工会の変革につなげていきたいと考えています。次期体制について発表できる段階になりましたら、皆様にご案内したいと思います。
これまでの会見と同様、今回も改めて示された「協調」の姿勢。誰か一人ではなくチーム一丸となってモビリティの未来をつくっていく。
「乗りたい未来を、探しにいこう!」
ジャパンモビリティショーを含めた、日本の未来をつくる自工会の取り組みに今後も注目いただきたい。