様々な技術をもつ日本の自動車産業。対立ではなく協調でかなえる脱炭素とは。
広がる選択肢 フルラインアップの脱炭素
G7の会場でも展示される、カーボンニュートラルへの多様な選択肢。
ここで豊田会長が「多様性の考え方をより理解いただくため、各社情報を補足させていただきたい」と語った。それを受け、個社の具体的な取り組みが紹介される。
三部敏宏 副会長(ホンダ)
ホンダは2025年までにグローバルで電動二輪車を10モデル。また、2030年にホンダの二輪の販売台数の約15%にあたる、年間350万台(のBEV化)を目標に現在進めています。
4輪も2040年までにBEV、FCEV(燃料電池車)の販売比率をグローバルで100%という目標を掲げています。これらを実現するため、バッテリーの調達、開発に加え、資源リサイクル業者との強固なパートナーシップを結び、材料調達の安定化も進めています。
佐藤恒治 副会長(トヨタ)
マルチパスウェイというスローガンのもとに、BEVから水素まで幅広いソリューションを準備していくことが、サプライチェーン、インフラ環境の整備なども含め非常に重要だと考えております。
具体的な行動を通じて、世界に日本らしいカーボニュートラルのあり方をお伝えしていきたい。そんな想いでG7に対して準備を進めているところでございます。
大型車を代表していすゞの片山正則副会長が話す。
片山副会長(いすゞ)
(広島の会場で)これがカーボンニュートラルを実現する商用車だと、まず見ていただくことで将来に対して身近に感じていただけるのではないか。
商用車は使われ方、使われる環境を考えたとき、多様な技術が必要だとご理解いただきたい。そのため小型から大型まで、複数の商用車メーカーのクルマを展示しております。
続いて、二輪車を代表してヤマハの日髙祥博副会長が話す。
日髙副会長(ヤマハ)
昨日、ホンダさん、スズキさん、カワサキさん、それからヤマハの4社で、オートバイの内燃機関をベースにした水素燃焼の研究母体の発足を公表させていただきました。
今回、G7で目玉になるのは共通の交換式バッテリーを使った電動モビリティ。これを広げるにはバッテリー資源のリユース、リサイクルといったエコシステムが重要になる。
交換式バッテリーは、世界中で共通のものを使った方が、リユース、リサイクルにつながるということで、日本規格の交換式バッテリーをつくっており、こういったものも展示させていただいてます。
そして軽自動車を代表して、スズキの鈴木俊宏副会長が話す。
鈴木副会長(スズキ)
軽自動車として、電動車の展示もさせていただいております。それと個社の取り組みにはなりますけれども、新エナジー車の展示をさせていただきます。
私どもはインドでバイオガスの精製事業に取り組んでいるのですが、10頭分の牛糞で1台のクルマを1日動かすことができる。インドは牛が3億頭いる。そうすると3,000万台のクルマを牛糞で動かせる。
電動化だけではなくそのような多様性、いろんなエコシステムを活用することによって、カーボンニュートラルができる。それを知っていただく良い機会だと思っています。
自動車産業は、魅力ある成長産業
次に、資源やエネルギーの価格高騰という社会情勢の中、サプライチェーンの連携強化について記者から問われた。
鈴木副会長
半導体不足に対応するときの教訓が非常に大きいと思います。(あらゆる社会情勢の変化に対応するために)サプライヤー様としっかりとコミュニケーションを取ってかないといけない。
Tier1(1次仕入先)さんとのコミュニケーションは多いけども、Tier2(2次仕入先)、Tier3(3次仕入先)、Tier4(4次仕入先)ともっと展開が必要だと思っています。電動化に向けて異業種との交流も始まりますから、自工会をあげてコミュニケーションの強化に取り組んでいきます。
片山副会長
各社の協調領域をいかに拡大するかということが非常に大事。
各社の仕様を一緒にできるもの、共通化によって、少しでもサプライヤー様の負担軽減・開発費の軽減。それはお客様からしても、安定的な調達、それから安くなることになりますので、自工会の活動が非常に重要になってきていると思っております。
永塚副会長
設備投資、それからカーボンニュートラルやCASEに対応するための研究開発にものすごく力を入れている。(乗用7社だけの合計でも)研究開発費が3.4兆円、設備投資が3.5兆円、合わせて約7兆円。これは過去最高でございます。
自動車産業が「魅力ある成長産業」であるということを、数字でもお示しできるわけでございますけれども、こういった努力を通じ、またジャパンモビリティショーなどの機会を通じて、魅力発信に取り組んでいきたいと考えています。
個社の取り組みも多数語られた今回の会見。質疑応答を終え、豊田会長がこう締めくくった。
豊田会長
カーボンニュートラル、温暖化に対する課題は自動車産業のみならず、すべての産業の参加者が考えるべきものだと思います。
乗用車、軽自動車、大型車、二輪車。そしてパワートレーンもBEV、水素、HEVなど、技術の多様性こそが日本の自動車産業の強みだと思っております。
2年前に初めてカーボンニュートラルという言葉が出たときから、日本の自動車会社は真面目にかつ現実的にその真実を追求し、正しく理解してきました。
「敵は炭素」。G7も皆さん共通の認識を持っておられると思いますので、決して対立ではなく、みんなで地球環境を良くしようねと。
全体のトーンはマルチパスウェイということになるかもしれませんが、これだけのメーカーが揃っておりますので、それこそが日本の自動車会社の現実であり強みだと思っております。
唯一の被爆国である日本の自動車産業だからこそ、すべての人の平和な暮らしを支えたい。その想いを胸に、カーボンニュートラルへの取り組みは加速していく。
そして会見後、広島のG7の現場である講演が行われた。トヨタのチーフ・サイエンティストであるギル・プラット博士が、お好み焼きやラーメンを例に出して語った内容とは。是非動画でご覧いただきたい。