トヨタが誇る匠の技と革新技術で工程2分の1へ。クルマの未来を変えていく最新技術の数々を形にするモノづくりの現場を公開した。
2024年問題に挑む車両搬送ロボット
今回のモノづくりワークショップでは、物流の「2024年問題*」を見据えた技術開発も披露された。
*2024年4月1日から、トラックドライバーの1年間の時間外労働時間の上限が960時間までに規制される。これによってドライバーの賃金減少、離職率の上昇、なり手不足、物流コストの上昇といった影響が見込まれている。自動車メーカーの物流には部品の物流と完成車の物流がある。部品は、国内メーカーからトラックや鉄道で工場に納入。
一方、完成車は、キャリアカーで全国のトヨタ販売店や輸出のための港まで運んでいる。
元町工場の場合、約40,000m 2 、1,600台の完成車を配置できるヤードがあり、1日160便、800台ほどが輸送されている。
キャリアカーのドライバーは、ヤードの広大な敷地に並んだ車両を歩いて取りに行き、積載場に停めたキャリアカーに積み込むという作業を繰り返す。炎天下の日も、雨の日もヤードだけで1日約8km歩いていることになるという。
運搬の負担を軽減するため、今月導入したのがVLR(Vehicle Logistics Robot)という車両運搬ロボットだ。
貞宝工場の技術を結集してつくったこのロボットは、高精度のGPSで自律走行し、自分の位置を認識して、目的地までの経路を生成する。
GPSの誤差はわずか数cm。クルマの床下に潜り込み、タイヤをつかんで持ち上げる。ホイールベースの長さに合わせた荷台の伸縮や車高に合わせた昇降調整も自動で行う。
こうして運んできた車両は、積載場のすぐ目の前に設けた集荷場に整列。ドライバーは積載場と集荷場のわずかな間だけを移動すればよくなり、作業負担を減らすとともに、荷役の効率アップにも寄与。
ドライバーの負荷を軽減し、安全・安心に働ける環境づくりが進んでいる。
あわせて、工場とヤードの間を完成車が自走するような技術開発にも取り組んでいく。
進化のスピードを高め、時代の変化に対応
今回のモノづくりワークショップのテーマは「人中心のモノづくりで、工場の景色を変え、クルマの未来を変えていく」。
そう意気込む新郷CPOはトヨタの強みを次のように総括する。
「技能と技術、デジタルと革新技術を融合させて、モノづくりを進化させる。さらに、トヨタにはTPSを基軸とした『リードタイム短縮』という技がある。こうしたチャレンジを、すばやく回し、進化のスピードを高め、時代の変化に対応していく、これこそがトヨタのモノづくりの強みだと思う」
高い技能を持つ人が、ロボットを鍛える。匠の技を最新の技術を使って伝承していく。「母の仕事を楽にしたい」という想いで豊田佐吉が自動織機を発明したように、「誰かの仕事を楽にしたい」と願う人たちがTPSをさらに発展させていく。
働く人が、もっと生き生きと、もっと活躍できる工場の景色を追求し、乗る人をさらにワクワクさせるモリビティを送り出していく。