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「みんなで考え、みんなで動く」目指すはチーム経営

2023.02.16

トヨタの新たな布陣が示す方向性に注目が集まった2月13日の記者会見。報道陣を前にメンバーがそれぞれの決意を語った。

トヨタのクルマづくりの未来について

――この先トヨタのクルマづくりは具体的にどう変わっていくのか?

2022年の株主総会で、豊田社長はこんな言葉を残している。

「トヨタの『思想』と『技』をしっかりと伝承し、『あなたは、何屋さんですか?』と聞かれたとき、『夢』と『自信』と『誇り』をもって、『私はクルマ屋です』と答えられる人財を育てることが、私のミッションだと思っております」

今回の質疑に先立つ佐藤次期社長のプレゼンテーションにも、この「クルマ屋」という言葉が何度も出てきた。

CASEの時代にどんどん複雑、高度化していくクルマづくり。そんな中で、佐藤次期社長、中嶋次期副社長は意外な回答を口にした。

佐藤次期社長

私は13年、豊田社長の下、ずっと現場でクルマづくりをやってきました。マスタードライバーの豊田社長は本当に一人のカーガイで、クルマが大好きなんです。

いいクルマに乗ったとき、いいモノに触れたときってやっぱりうれしくて笑顔になるじゃないですか。

お客様に笑顔になっていただけるクルマをつくりたい。マスタードライバーとしての豊田章男の想いが13年間まったくぶれることなく、そこにありました。

私は、そのもとでずっと仕事をしてきて、エンジニアとして、クルマ屋として、まずは基本の素性をしっかりつくり込むのがすごく大事だと思います。

奇をてらって制御でごまかすんじゃなく、クルマの基本、物理特性を徹底的につくり込むこと。その上に高度な制御をかけていき、お客様おひとりおひとりの期待するクルマにつくり上げていく。

その基盤技術は、我々がこれまで積み上げてきたものを失うことなく、さらに深めて、多くの連携を生み出しながら高めていくべきもの。だからこそできる味わいの深いクルマがあるはずだと思っています。

どんなに技術が高度化しても、クルマがお客様の手に渡って、安全で安心で楽しいものであり続けるためには、クルマの基盤技術を徹底的に磨いていくことが大切なんじゃないかと思います。

中嶋次期副社長

もっといいクルマという言葉自体が、最初、豊田社長に言われて理解するまでに私自身、正直、時間がかかりました。

豊田社長自身が我々技術屋と会話をするために体を張って運転議論を磨かれたり、我々の現場に降りてきたり、何時間も相談に乗ってもらったりして、やっと理解ができたというのが、正直なところです。

佐藤新社長が言うように、もっといいクルマづくりとは、ベースの素性が良いこと。さらに乗り味が良くて、かっこいいというのもそうです。

そういった素直なお客様の感想を直接開発に生かせる体制で仕事を進めていきたいというのが、私の想いです。

皆さんに笑顔になっていただけるクルマづくりに励んでまいります。

――国内生産300万台への考え方は?

2011年の東日本大震災以降、日本が超円高をはじめとする6重苦に見舞われ、製造業の海外移転が進んだ。そんな中で、豊田社長がこだわったのが、「国内生産300万台」だった。

そんな想いを受け継いで、新体制で競争力のある生産体制づくりを推進するのが、新郷和晃次期執行役員。

現在、トヨタ自動車東日本などが入るトヨタ・コンパクトカー・カンパニーでプレジデントを務め、モノづくりの競争力に向き合ってきた新郷次期執行役員は、300万台という数字への想いを語り始めた。

新郷次期執行役員

プリウスの開発主査も務めた新郷和晃新CPO(Chief Production Officer)。エンジニアとして、BEVやハイブリッドシステムの開発を担当してきた

300万台という数字は我々にとっても非常に重要な数字だと思っています。

自動車産業は非常に大きなサプライチェーンを持っております。そこで働いている従業員、ご家族の雇用・生活を守っていく意味合いも、大きくあります。

日本の重要なモノづくりの中で、大事な要素技術の開発をやっていく。あとは匠の技能を持つ人材を守っていく。

そういう意味でも、この300万台というボリュームは非常に大事で、これからも守っていきたいと強く思います。

また、自動車の産業は、日本で大きな役割を果たしています。賃金から始まり、税金を納め、輸出をすることによって外貨を獲得するといった貢献にもつながっていく。

引き続き、日本の基幹産業として550万人の仲間と共にしっかりと(国内生産を)守りながら、将来の扉を開けていきたいと思っております。

――豊田社長は最初の記者会見で「現場に一番近い社長でありたい」と発言した。佐藤次期社長はどんな社長でありたいか?

社長交代を伝えるトヨタイムズの生放送で、豊田社長は「個性を大事にしてほしい」と佐藤次期社長にアドバイスをしたエピソードに触れ、その際に返ってきたこんな言葉を紹介した。

「モリゾウさんがクルマの運転が大好きなら、私は、運転する人を笑顔にするクルマをつくるのが大好きです」

この日、最後となった質問への答えは、そんな佐藤次期社長の「個性」があふれた回答となった。

佐藤次期社長

私自身、ずっと現場にいたので、実感しているのですが、豊田社長は本当に現場に一番近い社長でした。

それまでは、集まるときに作業服で来る役員は非常に少なかった。

一方で、豊田社長の姿はレーシングスーツや作業着だったりと、本当に現場を大事にして、13年、トヨタに価値観を築いてきてくれました。

その下で私はクルマづくりをずっと続けてきました。クルマづくりには本当にさまざまな学びがあり、終わりのない世界です。

こういうお役目をいただき、経営者として会社をリードしていく使命は理解しつつも、トヨタ自動車がモノづくりの会社であることを絶対に忘れないため、クルマをつくり続ける社長でありたいと思います。

チーフエンジニアたち、現場で本当に実験・設計をやっている人たち、製造に携わる人たち、仕入先様を含め、多くの人の情熱と挑戦でクルマはできあがっています。

その仲間であり続け、クルマづくりを一緒に汗をかいてやる社長でいたいと思っております。それがトヨタの目指していく会社の姿だと多くの仲間と確かめ合いながら、新しいトヨタをつくっていきたいと思っています。

このほかにも多くの質問に対して、メンバーはそれぞれの視点から回答した。全体の様子は動画でも確認してほしい。

2023年4月1日付 新体制発表会見
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