トヨタの新たな布陣が示す方向性に注目が集まった2月13日の記者会見。報道陣を前にメンバーがそれぞれの決意を語った。
BEV戦略
――トヨタブランドの電動化戦略についてどう考えているか?
今回の記者会見で質問の半数を占めたのがトヨタのBEV戦略。BEVに遅れているというイメージが強いだけに、新体制でいかに加速するかが注目されていたが、佐藤次期社長は、「急速にBEVに舵を切ったということではまったくない」とキッパリ。
また、2022年11月にプリウス世界初公開の場で「BEVは重要な解決策の一つだが、それが全てに勝る選択肢ではない」と語っていたサイモン・ハンフリーズ次期執行役員も、「全方位戦略」を維持する姿勢を改めて伝えた。佐藤次期社長
マルチパスウェイという考え方は一切ぶれることなく、変わっておりません。
しかも、私自身がエンジニア出身ということもあり、メニューに載っていなければ、そこに新しい選択肢を載せることが仕事だと思っております。
世界中、これだけエネルギー環境が違う中、(カーボンニュートラルは)ワンソリューションで解決できる問題ではないと強く思っています。
ですから、「トヨタがBEVに急速に舵を切った」ということではまったくありません。これまでどちらかというとコミュニケーションが浅かったBEVについて、もう少し具体的な発信をさせていただきたいとお話をさせていただきました。
具体的な戦略はこれから深めていかなければなりませんが、BEVについては、レクサスが先頭をいくものの、レクサスだけの問題ではございません。
昨年、BEVに関する説明をしたときに申し上げた通り、レクサス100万台、トヨタ350万台を目指して段階的なBEVの普及に努める。この考え方は何も変わっていません。スタートをきって粛々と進めています。
ただ、いきなり数量的な目標を掲げるよりは、まず、小さい単位で実践をして、その学びをアジャイルに生かしていくうえで、最適な事業単位があるだろうと思っています。
最低100万台ぐらいに目線を置きながら、少しアジャイルに検討することも含めて、レクサスが先導しながらトヨタに伝えていくやり方になるかなと思っています。宮崎次期副社長
まず、レクサスでトヨタらしいBEVのイメージをしっかりつくっていくことが大切だと思っています。
一方で、お客様のさまざまな選択に応えていくためには、普及という観点でトヨタブランドでもBEV、PHEV、HEV、FCEVについて準備をしていかなければならないと思っています。
北米、欧州、中国、その他アジアの新興国についても、BEVに対する需要は出てきていますので、ブランドを超えてトヨタとして魅力あるBEVをお届けするように進めていきたいと思っています。
同時に我々はさまざまな地域で生産事業を行っているので、電動化の需要のバリエーションに合わせて現地生産を含めて、今後しっかりと検討していきたいと思います。
ハンフリーズ次期執行役員
1年前のBEVのイベントは、単に数字を示したのではありません。将来のお客様はBEVに代わる選択肢さえも求めている。我々はそう考えてこの数字を目指していくということを示したのです。
私はそれが非常に重要なことだと思っています。
BEVという一つの選択肢ではなく、人々のライフスタイルを魅力的なものにする新しい製品を導入する。それなしに、あの数字を達成することは非常に難しいでしょう。
大事なのはエキサイティングで魅力のあるBEVをいかにつくっていくか。それに尽きると思います。
――BEV戦略で出遅れているがその理由は?
佐藤次期社長
実際、我々もいろんなお声をちょうだいしています。「BEVの取り組みが遅いんじゃないか」という指摘もありましたが、コミュニケーションの課題も多々あったと反省しています。
実際、2つの理由があると思います。我々は「マルチパスウェイ」。まず、今すぐできることをやって、CO2を足元から減らしていく大切さを、非常に強く感じています。
現在、グローバルで電動車の比率が23%ぐらいだと思いますが、トヨタの比率は、グローバル平均よりも遥かに高く、26~27%です。
足元でCO2を減らす省エネルギー観点での取り組みをしっかりやりながら、中長期的にはBEVへシフトしていくという考え方もあると思います。
「BEVの取り組みが遅い」ということに関して、私はこれまでずっと開発の現場にいたので、章男社長と結構BEVの会話をしています。
モータースポーツの“モリゾウ”のイメージが強いからでしょうか、実際の開発現場の会話の密度と、世の中のイメージが少し乖離しているかもしれないと思っています。
特に私自身はレクサスを担当していたので、その電動化事業に関しては、ブランドホルダーの豊田社長とかなり深く議論を続けています。
実際に開発の中にも、マスタードライバーとして深く入ってやっているのが実態です。
ただ、足元で萌芽期のBEVのあり方、本格普及期のBEVのあり方それぞれをセクションに分けて対応を考えているので、これからは全体の戦略をもう少しオープンにお話していくべきと思っています。