家庭的でプロフェッショナル WRCを戦うのはそんなチームだった!

2023.01.20

フィンランドに新会社をつくったワケ

昨年12月にTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Oyという名の新会社が立ち上がった。

拠点はフィンランドで、TGR-E(TOYOTA GAZOO Racing Europe)から、ラリーチームが独立した格好だ。新しい会社をつくった理由は何なのか? なぜフィンランドなのか?

2015年のWRC復活からの変遷を交え、モリゾウが説明した。

富川
「フィンランドチームってどんなチーム?」が、今日のトークテーマで、だいたいわかってきたと思います。さらに、今年からちょっと形が変わるんですよね?

去年までは、TGR-E(TOYOTA GAZOO Racing Europe)の一部として、このWRTがありましたけれども、フィンランドの新会社が設立されました。春名さん、ここを説明していただけますか。

春名
昨年までは、TGR-Eで活動をしていましたが、今年から「TGR-WRT」、すなわち、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Oyというフィンランド法人を立てて活動していきます。

富川
このように形が変わってきたんです。最初はモリゾウさんとトミ・マキネンさん。この2015年はどういう形だったんですか?

モリゾウ
この年は、17年ぶりにトヨタが世界ラリー選手権に戻った年なんです。その17年間は我々が思っていた以上に大きな空白だったと思います。

17年前にトヨタはチャンピオンを獲ったものの、どのくらいの努力がないと追いつけないかを探る意味でも、トミ・マキネンさんを中心にやってきました。

そのときのエースドライバーがラトバラさんだったと思います。1戦目から表彰台、2戦目のスウェーデンで優勝して、今の流れをつくってくれました。

その後、トヨタはWEC(世界耐久選手権)も戦っているので、一緒にやろうじゃないかと。

普通の会社なら、自然な考え方だと思いますが、やっぱり生い立ちや戦うフィールドが違うので、それぞれ別の形を整えた方がいいのかなと。みんな「負け嫌い」ですから。

そして、世界で転戦していますし、このメンバーたちの背中を次の世代に見せるためには、クルマづくり、人づくりの環境がサーキットレースとラリーとは違うんじゃないかと思って、フィンランドに別会社を設けるようにしました。

富川
新会社として戦うWRT。チーム代表としては、どんなところがメリットだと感じますか?

ラトバラ
TGR-Eは、これからもっとWECに集中することができて、私たちはWRCに集中することができます。

こういった小さい組織で進められるようになると、もっと迅速に反応することができると思っています。

速く動けるのがモータースポーツにおいて本当に重要で、それが勝ちにつながると思います。柔軟で、速やかに、すぐに動けるのがメリットですね。

富川
なぜフィンランドなんですか?

モリゾウ
私の師匠の成瀬さんがよく言っていたことですが、「道がクルマをつくる」。そして、フィンランドの道は、天然の本当にいいトレーニングコースだと思います。

広大なテストコースをつくる必要もなく、いくらでもある道です。しかも、今だと-15℃。夏は緑に囲まれたところで、春夏秋冬、道が顔を変えます。

そんなところでクルマを、人を鍛えるのが、非常に重要だと思ったのが1つ。

それともう1つ。今、モータースポーツの世界にも、カーボンニュートラルがものすごく大きな課題になっていると思うんですね。

今、この会社を用意しようとしている土地は森がほとんどなんです。その東京ドーム133個分の森で吸収するCO2は、チームが年間13選戦う中で排出する以上のCO2を削減する。

このチーム自身がラリーの活動でカーボンニュートラルを達成することも、大きなメッセージとして出していきたいと思っています。

先ほど、このチームは少数だという話がありましたが、少数ゆえに一人何役もこなしているんです。

大企業のトップである私がこんなことを言っちゃなんですけど…、大企業って、やっぱり担当で分かれます。

世界選手権の場では定石通りの戦い方では勝てないんですよね。だから、毎回出てくるいろいろな問いに対して、一人ひとりが今までの経験から、どんどんポジションを越えて、協力し合ってやっていく体制が必要。

それには、ある程度のサイズ感が必要です。そんな環境をつくってあげるのは、親会社のリーダーシップじゃないかと思っています。

富川
今、画面にデータとか写真が出てましたでしょ? あれ、春名さんが自らつくっていたものです。

春名
そうです。自分でつくって、自分でプレゼンして。みんな、全部、多能工的にやっています。

富川
ラトバラさんもチーム代表として、いろいろな仕事がありますけれども、会社としても仕事はあるんですか…? 仕事はあるんですかって…。

モリゾウ
失礼な聞き方だよね(笑)

富川
「どんな仕事をするんですか?」こっちの方がいいですね。

ラトバラ
いつも遊んでいるばかりじゃないですよ(笑)。仕事もちゃんとしているんです。

1つ目は、ちゃんとチームをケアすることですね。チームが協力できるよう、チームスピリットが育っているか確認することです。

2つ目は、ドライバーが快適に過ごせているか、リラックスできてハッピーかどうか気にかけています。ドライバーが笑顔で運転をしているとき、最高のパフォーマンスをしてくれるというのが私の持論です。

3つ目にはメディア対応がありますね。記者の方などへ、チームに何が起きているのか説明をする役割も持っています。

モリゾウ
彼の仕事は、どこかに本社があって、そこに毎日通って、代表の部屋にいるというものではないんですよね。年間13戦、いろいろな場所が戦いの舞台なんです。約80名のメンバーで、サーカス軍団のように世界中を転戦します。

そんな中、誰よりも朝早く現場に駆けつけ、80名のほぼ全員に声掛けをして、彼らがどうかを見ている。

あとは、現役のときもそうだったんですが、競技が終わってピットに戻ってくると、彼がまずやることはファンサービスなんですよ。ファンに必ずサインをする。

そんな姿を全員が見ているので、このチームはものすごくファンを大切にしている。ラトバラさんの背中を、行動を見ている。それが他のチームにない、このチームのいい環境じゃないかと思っています。

でも、きっと彼はまだ、自分もドライバーでやりたいという気持ちがあるんです。

富川
こんなに忙しくチームをまとめあげてはいるけれども、本当はドライバーとしてもやりたいと?

モリゾウ
そうそう。ただ、僕に勝たないとダメなんだよね(笑)

富川
クルマ(のため)だけじゃなくて、ドライバーとして(復帰するため)のチャレンジも、やっぱり勝たないと…。

モリゾウ
それこそ私に勝たないとダメですよ。

ラトバラ
まずは、モリゾウさん、すごくいいことを言ってくださって、ありがとうございます。

モリゾウさんの言う通り、ドライバーとしての情熱はなくしていません。やっぱりドライバーとして生まれたからには、最後までドライバーだと思っています。

もちろん仕事もしなければなりませんが、ドライバーとしての自分を大事にしたいと思っています。

朝のトークショーで、TGRのドライバーが「ラリーにも参戦したい」と話していたんですが、彼らには「まず、ちゃんとしたラリードライバーであることを証明しなくちゃいけない。そのためには、モリゾウさんに勝たなきゃいけないよ」と言っておきました(笑)

富川
みんなの基準がモリゾウさんなんですね。

日本のファンの声援を

予定の時間も近づき、話は最終盤へ。3連覇を目指すチームは、地元フィンランドで注目の的。モリゾウとラトバラ代表から、日本のファンへメッセージが送られた。

モリゾウ
フィンランドのプロスポーツとしては、ノルディックスキーとかがあるんですけど、やっぱりモータースポーツが、昔の日本の「王・長嶋」のような、雰囲気なんです。

絶えず世間から見られている。それから目標にされている。彼らがファンやスポンサーと接するか、もっといいクルマづくりにどう貢献するか。そういう行動にすべて現れている気がしますね。

春名
街中を歩いていて、もちろんヤリ-マティさんは声をかけられますが、最近だと、貴元くんも「頑張ってね」「ファンです」と声をかけられるぐらい、メジャーな競技です。

そういうところから、もっといい人材とクルマづくりにつながっていくのかなと。

モリゾウ
まずは、ドライバー、コドライバー、そしてクルマが華ですからね。

彼らが「かっこいい」「憧れる」という世界を、見せていくことが大事だと思いますし、それには皆さん方の、𠮟咤激励も含めた応援が必要だと思います。

世界で転戦はしますが、トヨタは日本の会社なので、日本からの応援がすごく力になると思いますから、今年のシーズンもよろしくお願いします。

富川
ラトバラさん、最後に今シーズンへの意気込み、皆さんにどんなところを見てほしいか、一言お願いします。

ラトバラ
今シーズンも、目標はやはりチャンピオンシップのタイトルを獲得することです。

これからもっと厳しい戦いになると思います。大変なことだと思いますが、チームの準備は十分できていると思っています。

一番重要なことは、パッションを楽しめるのがモータースポーツだということです。ファンの皆さんもぜひ、パッションを出して、楽しんでください。

富川
また今年もラリージャパンが11月に行われる予定ですから。ぜひ、皆さんまた足を運んで、一緒に応援していただければと思います。

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