もしもの災害時、ご家族の安全のためにも知っていただきたい、車中泊に関する大切な情報をお届けする。
2020年、あの時の相談が…
2020年、このような配慮が進んだひとつのキッカケがあった。
社会貢献推進部が、当時クルマの開発を担当していたプレジデントたちに「車中泊のリスクと改善点」を相談したのだ。
競合他社のクルマも複数用意。「車中泊しやすいクルマとは何か」を現地現物で議論。床面の傾斜だけではなく、断熱性能や遮音性なども議論された。
当時、車中泊避難ヘルプBOOKはトヨタ車のみの掲載だったが、レクサスのプレジデントだった佐藤社長から「レクサス版もつくらないと」と話があり、レクサス版も追加掲載。
当時MS・CVカンパニーのプレジデントとして参加し、長年エンジニアとしてクルマを開発してきた中嶋副社長はこう語る。
中嶋副社長
役所や体育館には、非常食や簡易トイレなどの防災用品が備えられているように、すべてのクルマで、いざという時の配慮ができている状態を目指したいです。
たとえば、すべてのハイブリッド車に設定した“クルマから電気を取り出せるコンセント”や、フルフラットになる設計は、平時は意識されなくてもいざという時に大きく役立ちます。
車中泊をしやすいこと。それが結果的に命を守ることにもつながります。
トヨタでは1500Wの電気を取り出せる給電車を20車種以上で対応。電気自動車だけでなく、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、水素で動く燃料電池車などでクルマから電気を取り出せる。
災害時の情報収集に欠かせないスマホの充電、夜間に欠かせない明かり。さらに電気製品を使えるので、厳しい暑さや寒さをしのぐこともできる。
被災地での聞き取りでは「炊飯器でご飯を炊けて助かった」という事例もあったそうだ。
一目瞭然!車中泊しやすいクルマとは
では実際にどんなクルマだと、安全安心に車中泊できるのか。新型シエンタの開発責任者だった友成康三主査はこう話す。
友成主査
開発部署のメンバーは、実際に自分たちで車中泊をして「クルマに泊まったらそりゃ電気を使いたいよね」とか「フルフラットになってマットを用意できたらいいね」とか、より車中泊しやすくするために話し合いをしました。
旧型車も、当時は丁寧に配慮されていたものの、開発メンバーが現地現物で改善点を見つけることで新型車ではより配慮が深まったのだ。
友成主査
技術的には0°のフルフラットにすることは可能です。でも人間工学的には少し角度がついている方がフルフラットに感じやすいんです。
内装のモック(試作品)をつくっては、年配者から若い人、男性も女性も、みんなで実際に寝てみて最適な角度を検証しました。
新型シエンタの開発に携わった大河原美里が、車中泊のしやすさを動画で教えてくれた。
3分ほどの短い内容だが、もしもの時にどう過ごせるかをイメージできるので見ていただきたい。
「クルマの未来を変えていく」。
それは驚くような先進機能だけではない。もしもの時の安全安心も進化させ、変わっていくのだ。
いつ、自然災害に襲われるかは分からない。分からないからこそ普段の備えが重要だ。読者のみなさんも、一人でも多くの方に「安全安心な車中泊」の方法をお伝えいただきたい。