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ゴミで発電?燃やしてCO2が増えない? そんな未来が叶うかも・・

2024.01.23

ガラス瓶に詰められた謎の物質。"特別なリサイクル"を含めた「豊田ケミカルエンジニアリング」の驚きの取り組みとは?

瓶詰めされた黒い物質。これらは下のクルマの部品が、後述する“特別なリサイクル”で生まれ変わったものだ。

そして、こちらの写真。並べられているのはプリウスやbZ4Xなどに搭載されているバッテリーだ。

写真左がプリウスの3代目までに使われていたニッケル水素電池、中央がハイブリッド車などに搭載のリチウムイオン電池、右がbZ4Xに搭載のリチウムイオン電池。

普段は目にすることがないクルマの電池。これを廃車時にどう処理するかが課題になっている。

近年の電動車の普及に伴い、電池の材料となるコバルトやリチウムなどレアメタルの確保が議論されている。これら鉱物資源の埋蔵量は限られており、無計画な採掘が行われた場合、資源の枯渇を招くリスクがある。

これを防ぐため、各国はリサイクルによる資源回収を推進。欧州では、2031年より電池製造者が廃棄バッテリーから回収したレアメタルを一定量使用する規制が始まるという。

製造からリサイクルまでCO2ゼロへ

コバルトやリチウム、ニッケルなど貴重な資源は電極に多く含まれている。

だが、現在主流となっているリサイクルでは廃棄バッテリーをそのまま焼却炉に投入。燃やした後に残されたレアメタルを回収している。

しかし、この方法では回収できる資源が少なくなってしまうだけでなく、排出するCO2も多くなってしまい結局環境に負荷をかけてしまう。

カーボンニュートラルに向けては、製造から廃車・リサイクルまでのライフサイクル全体でCO2排出量を可視化、低減していかなければならない。

その大きな一歩として、トヨタでは「燃やさない電池リサイクル」の実証実験を進めている。トヨタ社内でもあまり知られていないこの取り組み。「こんな場所があったなんて」という重要拠点を取材した。

「燃やさない」なんて可能なの?

焼却を必要としない循環型社会が求められる。そう語るのは大塚友美チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)だ。

大塚CSO

気候変動、生物多様性などの問題に対する解決策としてサーキュラーエコノミー(循環型経済)の重要性が認識されています。 

その実現に向け、生産から処分までを追跡可能にする仕組みもつくられ始めています。でも、仕組みをつくるだけではサーキュラーエコノミーは実現できません。

循環を実現する技術やノウハウが必要。その点で、トヨタには豊田ケミカルエンジニアリングという心強いパートナーがいます。

強力なパートナー、豊田ケミカルエンジニアリングとはどんな企業なのか。愛知県半田市に向かった。

産業廃棄物の処理を行う同社は、2010年にトヨタと協働し、世界初となるニッケル水素電池のリサイクル技術を確立。以降、国内のトヨタHEV(ハイブリッド車)の廃棄バッテリーを回収・リサイクルしている。

これまで同社の電池のリサイクルでは、バッテリーを燃やす従来の技術が用いられていた。

そんな中、CO2排出の少ないリサイクル技術の確立へ。2023年秋、トヨタと共に「燃やさない電池リサイクル」への挑戦が始まった。

この建屋の中で、使用済みのクルマの電池を燃やさず処理して原料を安全に回収しているという。「使用済み電池」から「新たな電池」をつくり出す第一歩となる実証プラントだ。

工程を紹介すると、まず使用済みバッテリーを設備に投入。

電池の中は、充放電のため、イオンがプラス極とマイナス極を移動しやすいように電解液で満たされている。しかし先述した通り、その電解液は可燃性のため取り扱いを誤ると火災の危険がある。

その危険を取り除くため、この設備では電解液を蒸留して抽出。従来のリサイクルではこの技術が確立されておらず、電解液が入ったままの電池を焼却炉に投入するしかなかった。

そして電解液を抜き終えたセルを破砕。

アルミや銅を含んだ大きな破片、ブラックマスと呼ばれるレアメタルを多く含んだ粉末など、含有する物質ごとに選別・回収する。

こうして分別された破片や粉末は協力会社に運ばれ、新たなバッテリーに必要な資源へと加工される。

CO2排出を少なくするだけでなく、資源の回収率も上げる「燃やさない電池リサイクル」。この技術についてトヨタの担当者はこう語る。

環境エンジニアリング部 磯村圭祐主任

従来の国内電池処理方法では、最初に電池を燃やすことでCO2を排出してしまいます。トヨタの目指すサーキュラーエコノミー構築やカーボンニュートラル実現のため、低CO2処理技術の開発実証に取り組んでいます。

素形材技術部 村松健一郎

開発してきた”燃やさずに電池を無害化する”技術に、既存のリサイクル技術を組み合せて活用しました。カーボンニュートラルへの貢献はもちろん、従来の燃やす処理では回収できないものまで選別・回収し、回収率を大幅に向上しており、サーキュラーエコノミー実現への一歩になります。

実証プラントを視察した大塚CSOは、環境に配慮することは何かを制限することではないと強調した。

大塚CSO

新しいチャレンジにはコストがかかります。でも「コストがかかる」で思考停止にならないことが大切です。例えばKINTOのようなクルマのサブスクサービス。

自分たちでクルマを管理しているので、クルマを確実に回収、パーツや資源のリサイクルもしやすい。さらに、お客様と接点を持ち続けることで、アップグレードやパーソナライズなどの新しい価値をお届けするチャンスも増えます。

「環境負荷の軽減」のためのサーキュラリティ(循環性)の追求が「新たなビジネスチャンス」をもたらしてくれるのです。

トヨタと二人三脚で革新的な電池リサイクルに挑む豊田ケミカルエンジニアリング。環境産業のリーディングカンパニーを目指す同社では、他にもさまざまな技術開発に取り組んでいる。

話を聞くと「水とゴミで電気をつくる」「燃やしているのにCO2を大気中に排出しない産廃処理」など、驚きの取り組みが続々と。

電池リサイクルを含めたこれら技術の根底にあるのはサーキュラーエコノミー実現という企業としての理想だ。

ゴミが資源になり、炭素が生まれない。そんな未来が実現するかも…

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