車いすユーザーの約9割が悩んでいるという「まだまだ知られてないマナー」とは?取材をすると驚きの実態が・・
三角コーンは「大変」。その真相とは?
一度クルマから降りて、三角コーンを移動させて、またクルマに乗り込まないといけない。これは本当に大変だ。さらに、三角コーンを移動させている間に後続車が次々と渋滞してしまうこともあるため、混雑時は駐車を諦める人も多いという。
この件について、森井選手はこんなことを教えてくれた。
森井選手
私は上半身の筋力があるので、三角コーンが置かれていれば、近くにクルマを寄せて、窓から手を伸ばして移動させることもあります。
でも、バーで塞がれているものはお手上げです。
ちなみに空港などでは、クルマの窓からインターホンで連絡すると、自動操作で開閉してもらえたり、係員が来てくれるので大変助かります。
普段から肉体を鍛えているアスリートですら、どうしようもないこともある。アスリートではないトヨタループスの山田さんはこう語る。
カラダの障害の度合いによっては、ひとつの三角コーンを移動することすら大変な人がいます。2つのコーンの間にバーが通されていると、さらに厳しさが増します。
今回取材した5名の車いすユーザーは、一様に、三角コーンでスペースを確保しようとする気づかいには深く感謝を示しつつ、実は困っている実態を教えてくれた。
雨や雪の日はずぶ濡れに
また、意外に知られていないが、車いすからクルマへの乗り込み方は人それぞれ違う。障害の部位が違えば、乗り込み方も、かかる時間も違うのだ。
山田さんの乗降シーンを動画で見てみよう。注目ポイントは、運転席に座ったあと、自分の足の上を転がすように、車いすを車内に積み込むこと。
この方法が最もベーシックだという。
しかし当然、衣服はタイヤで汚れてしまう。体の上に布を敷く人も多いが、それでも雨や雪の日になると泥だらけになる。トヨタループスの中垣さんはこう語る。
中垣
雨が降ったら(傘をさして乗り移れないので)濡れるしかありません。つかむところも滑るので、乗り込みも大変で…。
また、路面も大理石のような材質だと滑ってしまいます。運転席から車いすに移るときにグラつくので、安心して降りることができないんです。同じ理由で傾斜のある駐車スペースも乗降は難しかったりします。
雪の多い地域では、車いすマークの駐車スペースに屋根があることも。しかし便利さゆえに、健常者の方が停めてしまうケースもあるそうだ。
また、駐車場から施設へのスロープにも悩みがあるという。健常者が使う階段はきれいに除雪されていても、スロープは雪が積もったまま。そんなシーンも多いという。
この取材を通じて、皆さん一様に謙虚に話されていることが印象的であった。困りごとが多いものの「施設にも限界がある」ことも理解されているからだ。
次のページでは、いくつかの興味深い動画をご紹介する。是非ご覧いただきたい。