新型プリウスで始まったトヨタのクルマづくりの変革とは?

2023.03.14

新しいサブスクKINTO Unlimited。「最新のクルマは高い」という常識を覆した背景に、トヨタのクルマづくりの変化があった。

新型プリウスの国内販売が始まった1月10日、サブスクリプションサービスを手がけるKINTOが公表した月額利用料が話題となった。

KINTO Unlimited」という新たなサービスで、プリウス・Uグレードが最も安いパッケージで月額16,610円(税込み)。物価高が深刻化する中、月額を従来型と比較すると、1割安い価格設定となっている

*1 2WD、標準内装仕様、追加オプションなし。初期費用フリープランの7年契約、ボーナス月加算165,000円(税込み)の場合
*2 旧型プリウスのうち、車両価格がUグレードと同水準のS"ツーリングセレクション・Black Edition" KINTOで契約した場合との比較
新型プリウスのKINTO Unlimited専用グレード「U」

KINTO Unlimitedのサービス詳細は記事末尾に掲載

このサービスの重要な特徴の一つが、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアのアップグレードにも対応している点だ。

例えば、ブラインドスポットモニターなど人気のメーカーオプションは、新車購入時にしかつけられないのが当たり前。

しかし、装備の後付けに必要となる作業の大部分を事前にクルマに織り込んでおく「アップグレードレディ設計」を採用したことで、大掛かりな作業を簡略化し、クルマの「進化」に対応できるようにした。

将来的には、年次改良のタイミングで新たに登場するアイテムにも対応できるようにしていくという。
アップグレードレディ設計のイメージ。配線の調整、センサーの取り付けなど、アップグレードに必要な施工作業をクルマにあらかじめ織り込んでおくのが特徴

KINTOの小寺信也社長が「多様化・複雑化するユーザーのニーズに対応するのに、販売の視点だけにとらわれていては、大きな変革は起こせない」と言うように、新サービスの実現には、トヨタのモノづくりの現場の変化があった。

「今のトヨタは自動車屋じゃない」

2020年11月、トヨタ本社の一室に10名の中堅、若手社員が集められた。互いに面識もなく、職種も部署もバラバラ。

向かいの席には、豊田章男社長、小林耕士番頭、小寺信也KINTO社長。脇のモニターには、オンラインで集まったトヨタの各部門、カンパニーのトップの姿。

豊田社長は目の前の10人にこう投げかけた。

「『我々は自動車屋です』って言うよね。でも、自動車屋じゃない。新車屋なんだよ。自動車屋という以上はクルマの20年のライフを見ないとダメ。最初の10年が新車保有で、その後、中古車で3代ぐらいオーナーが代わっていく。モビリティ・カンパニーに変わるこれからは、その中でどれだけバリューを生むことができるかが問われている」

メンバーの一人である前田優介主査は、発足したばかりのプロジェクトチームにかけた豊田社長の言葉を今も鮮明に覚えている。

「お客様の一生にクルマとともに寄り添ってほしい」
「アップデートだけでなく、クルマの価値を高めるアップグレードを」
「早めに着手すれば、10年後、20年後、皆さんの世代のときにはバリューを生む」
「今の世の中には解答がない。いっぱい失敗をすること。皆さんの未来は自分たちでつくりなさい」

現在、世界中で1億を超えるトヨタ車が走っている。しかし、クルマを売った後、トヨタ自動車本体はそのユーザーにまったくアプローチができていない。

さらに、新車保有期間は年々長期化。日進月歩で開発が進む最新の技術をタイムリーに提供することができない。

「クルマをお届けして終わりではなく、お届けした後も絶えず付加価値を提供していかなければいけない」

そんな問題意識のもと、「次世代中古車プロジェクト」がキックオフした。

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