車いすユーザーの約9割が悩んでいるという「まだまだ知られてないマナー」とは?取材をすると驚きの実態が・・
車いすを使われている方で、ご自身でクルマを運転する人は、20万人近くもいると言われている
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一人で運転し、一人で乗降。アクセルやブレーキは手で操作できる設定なので、外から見ると健常者のクルマと違いは分からない。しかし、駐車場には知られざる困りごとが多いという。
今回は「そうだったのか!」という気づきが満載。この記事を読んだ後、あなたは今まで以上に、正しい知識と思いやりのマナーを持てる人になっているはずだ。
※身体障害者用車両(自操式福祉車両)限定の免許保有者は全国で約18.5万人
9割の車いすユーザーが困っていること
まず話を伺ったのは、トヨタ自動車所属、パラ陸上の鈴木朋樹選手。
ウェルキャブ(福祉車両)専門の常設展示場であるトヨタハートフルプラザ横浜(ウエインズトヨタ神奈川が運営)で取材したのだが、この写真、何をしているシーンかお分かりだろうか。
実は、反対から見るとこうなっている。
読者の皆さんも、「車いすマーク」が書かれた駐車スペースをご存じだろう。車いすユーザーはここに駐車して、乗り降りする。
一般的な駐車区画が幅250cm程度に対し、この駐車スペースは350cm以上となる。とりわけ幅140cm以上の“ゼブラゾーン”と呼ばれる斜線のエリアが特徴だ。広いスペースのため、このエリアにクルマを停める人や、はみ出して駐車されるシーンも多いという。
しかし、東京2020パラリンピックで銅メダリストの鈴木選手でも、下記動画でわかるようにドアを全開にしないと乗り降りできない。ゼブラゾーンの“広さ”が必要なのだ。
ゼブラゾーンにまたがって停められてしまうと、車いすを降ろせません。なので、駐車するのを諦めてしまうこともあります。
この取材には鈴木選手だけでなく、2名の車いすユーザーも参加。障がいのある人の雇用の輪を広げるトヨタの特例子会社・トヨタループス(株)の中垣良則さんと、山田正人さんだ。
車いすユーザーの9割以上の人が困っているというこの問題。やはり同じような声が返ってきた。
「これは本当によくあります」(山田さん)
「戻ってきたら、隣のクルマがゼブラゾーンにはみ出しているときが一番きついです。その場合は施設に戻って呼び出しをお願いするか、長時間待つしかないので…」(中垣さん)
お困りごとが、ここまで多かったとは・・
取材の中で、他にも多くのお困りごとが見えてきた。
お出かけ先の車いすマーク駐車場が空いているかは、その場に行かないと分からない。そのため、現地に着いて、駐車できずに仕方なく帰ることも。また、この駐車スペースで洗車やタイヤ交換をされている人がいることも。
より多くの人の声を聞くため、パラアルペンスキー/パラ陸上の村岡桃佳選手と、パラアルペンスキーの森井大輝選手にもオンライン取材。同じような困りごとの声を聞き、普段、いかに車いすユーザーの想いに気づけていなかったかを痛感することとなる。
村岡選手
狭いスペースで何とか駐車しようとして、自分の車いすで、自分のクルマを傷つけてしまったことがあります。そういうときはショックが大きいです。
さらに、健常者では気づきづらい代表的な困りごとが語られる。冒頭の写真にもあった三角コーンだ。
「車いすユーザーの駐車スペースを確保するため」、優しい気づかいで置かれているのだが、何が問題なのか。次ページで鈴木選手の乗降シーンを見ると一目瞭然だ。