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トヨタ×空気、自動販売機、食、コーヒー、教育...ウーブン・シティから生まれる未来とは?

2025.02.20

「CES 2025」で明らかになった、ウーブン・シティで実証実験に取り組む5社のインベンター。各社がモビリティのテストコースで描く未来とは?

ダイドードリンコ:「人と自動販売機を近づけたい」“自販機オタク”の挑戦

「我々の会社は大体みんな自販機オタクというか自販機バカというか、そういう集団です」――

こう語るのは、ダイドードリンコの前山亮さん。隣に座る井阪愛歩さんも笑顔でうなずく。

自動販売機を主力の販路とし、清涼飲料などを製造・販売してきた同社。ウーブン・シティで実証しようとするのは、自動販売機を通じた新たな価値創造だ。

ウーブン・シティは、ヒトやモノ、情報、エネルギーといったさまざまなモビリティのテストコースとなる。

これまで通常の自動販売機ビジネスでは、「どのような人が、どのようなシチュエーションで購入しているのか」といった、利用者の属性や街中での行動といった情報は入手困難だった。

だからこそ利用者の購入前後の動きまで追うことができる、この街で手に入るデータは貴重だ。実際に自動販売機を設置してデータを集め、新たな開発などにつなげていく。

飲料と生理用品を並べて販売する「女性ヘルスケア応援自動販売機」を企画するなど、日々、自動販売機の開発に取り組む井阪さん。この街で得られるデータに、ほかのインベンターの知見も交え、新たな価値創造に向けて飲料の枠を越えた自動販売機の可能性を探る。

井阪さん

大企業やスタートアップ、インベンターの皆さま、住民の方々と連携することで、我々だけでは知り得なかったデータを発見できる機会を得られるということに、すごく期待しています。

住民の方々や街全体の動き、一連の動きのデータを活用できる可能性があることが大きいと思っています。

我々は自動販売機に関わる周辺のデータはこれまでも取得できたのですが、その前後ではどのような動きをされていたのか、天候によって行動がどう変わるかなど、自動販売機だけでなく、その空間の中での一連の流れで確認できるというのは、ウーブン・シティだからこそだと思います。

「ウーブン・シティだと、飲料だけでなくお客様がどういったものを欲しているのかといった知見を得ることもできると思っています。そこを実証していくことが私のしたいことであり、収集したデータを活用し、自動販売機サービスを強化していくことが私のやるべきことだと考えています」と話してくれた。

ウーブン・シティで得られるデータに期待を寄せる井阪さん(左)と前山さん。

ウーブン・シティに設置する自動販売機は、これまでのものとは一線を画す、さまざまな形を検討している。

WbyTとの窓口を務めてきた前山さんは、自動販売機が「もっと人の心を動かすものになってほしい」と願いを込める。

前山さん

無機質な自動販売機に、温かみのあるインタラクティブ(双方向的)な機能が付いていけば、人と会話まではできないかもしれませんが、わかり合えるような存在になり、結果として自動販売機が人の心を動かすものになっていくのではないでしょうか。

我々はその第一歩として、ウーブン・シティ内に構えるテナントに、これまでの常識を覆す新発想の自動販売機を設置します。その自販機に、お客様の利便性向上につながる機能を実装していきます。

このような新たな取り組みを通して、お客様と自動販売機の距離が縮まるようにしたいと考えています。

前山さんも含め、同社では従業員の多くが商品の補充や自動販売機の設置などをするルートセールス(オペレーション担当者)を経験する。自動販売機に触れて、知ることで「皆、自販機オタクみたいな社員になっていくのかなと思います」と前山さん。

そんな自販機オタク前山さんが和歌山県で補充員をしていたのは10年ほど前。当時は、自動販売機の近くに住む方々ともその場でコミュニケーションを取り、商品ラインナップなど自身の経験値を基にオペレーションしていた。

現在は労働力不足の解消、業務のさらなる効率化を目指すべく、AI技術を活用し、少人数でもオペレーションできる「スマートオペレーション体制」を展開している。

前山さん

より多様なニーズにお応えするために顧客志向でもっとできることが自動販売機にはいろいろあると感じていまして、それができるようになれば、人と自動販売機の距離はもっと近くなるのではないかなと思っています。

(補充員をしていた)当時より今の方が距離が遠くなっているのか、近くなっているのか、実態まではわからないですが、いずれにしても将来的には今よりももっと人と自動販売機の距離を近づけたいと考えています。

自動販売機と人の距離をもっと近づけたい――

そのためにも、ウーブン・シティでのデータ収集や分析が重要になってくる。

この街で生まれた自動販売機が、さまざまな地域で愛される形となって設置される日が来るかもしれない。そんな未来に向けた実証実験が始まろうとしている。


豊田会長の「この指とまれ」に手を伸ばした各社。後編は、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングスの実証内容と携わる人たちの想いを紹介する。

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