「100m歩くことも大変」免許返納後のシニアの移動はどうなる...?

2024.09.05

「歩く」をアシストするモビリティC+walkシリーズ。開発の裏には、日本中の多くの方々の困りごとがあった

「歩いてわずか2分」

そう聞くと、多くの人は近いと感じるだろう。しかしシニアにとってはそうとも限らない。

国土交通省の調べを聞いて驚いた。75歳以上の約2割もの方が「無理なく休まずに歩ける距離は100mまで」と答えたという。

高齢になるとたった100mの移動でも負担が大きいのだ。

だからこそクルマが便利なのだが、シニアの「免許返納問題」も議論されている。また、物流・運送業界の「2024年問題」により多くの路線バスも減便・廃止を検討…

地方を中心に、免許を返納すると日常生活での深刻な困りごとが増えていくのだ。

「まだまだ自分の力で出かけたい」「年齢を重ねても働きたい」そんな多くの人の想いに寄り添うモビリティがある。

免許がなくても乗れるC+walk(シーウォーク)シリーズだ。「歩く」をアシストするモビリティはどのよう開発されたのか。

(右)座り乗りタイプのC+walk S (左)立ち乗りタイプのC+walk Tは、シニアに限定せずあらゆる使用用途が想定されている

選択肢を増やせば、移動の自由も増える

開発者である商用CASE企画開発部の山田雅司主幹は「選択肢を増やすことが大事」と語る。

商用CASE企画開発部 山田主幹

免許を返納された後、足腰の衰えなどで移動に困っている方がたくさんいらっしゃいます。そこでライフステージに合わせて移動をサポートしようと考えました。

近くまでは問題なくても、遠くまでは歩けない方も多い。近距離移動の最小単位「歩く」に着目しました。

免許返納後の移動手段としては、電動アシスト自転車もある。だが身体機能の低下により転倒事故が増えている。

交通事故総合分析センターITARDAによると、20152019年の電動アシスト自転車が絡む死亡事故の84%は、運転者が65歳以上だったという。

免許の有無や身体能力の差。多様な人がいるからこそ、多様な移動手段が必要だ。山田は開発のこだわりをこう語る。

商用CASE企画開発部 山田主幹

誰もが乗りやすいように、操作は1分で説明できる簡単なものにこだわりました。また当初は片手操作だったものを、両手操作に改良しています。

人によって、利き手は左右の違いがあります。東京2020を控えた実証実験で「左利きの方や、右手が不自由な人は使いづらい」と指摘されたからです。

他にも「膝を閉じて乗りたい」という声から、シートの前後位置を調整できるようにしました。またアクセルレバーを押し続けても疲れないよう、手が乗せられるハンドル形状などラクに運転できることにもこだわっています。

実証実験を重ね、誰もが安全に使いやすいモビリティへと進化させていったのだ。

実は歩道にも危険が多かった

座り乗りタイプは速度を6段階(16km/h)で設定でき、道路交通法で歩行者扱い。立ち乗りタイプも現行型は移動用小型車を示すステッカーが貼られ、2タイプ共に歩道を走行できる。

しかし、読者のみなさんも普段通っている道をよく見ていただくと驚くかもしれないが、車道に比べると歩道はデコボコが多い。

歩道を高速で駆け抜ける自転車も多く、シニアにとっては歩道にも危険がたくさんある。だからこそ三輪にしていることに大きな意味があるという。

商用CASE企画開発部 山田主幹

三輪だと足元がよく見えるので、周囲の環境をしっかり把握できることができます。

小回り性能も上がったので、歩道に穴があってもさっと避けられます。人混みの中でも俊敏な動きができることを理想としました。

足の裏から路面状況が伝わってくることも、“歩く”を表現するひとつの要素だと思うんです。路面状況が悪ければ回避したり、速度を落としていただきたい。

転回時に速度を落としたり、障害物の検知機能を装備し、人やモノにぶつかりそうなときは警告音が鳴るようにしています。正解のない世界ですから、世間の声を聞きながら“挑戦と提案”を重ねていきました。

操作は簡単。狭い場所や坂道でもスムーズに移動。荷物も十分収納でき、乗用車と違ってバッテリーもワンタッチで取り外し、室内コンセントで充電可能。

買い物カゴを積むことも可能。こういったモビリティでこの収納容量は珍しい

かつ、障害物検知機能や下り坂では減速する設定など、クルマ屋のモビリティとして安全にも細かく配慮されているのだ。

デザインのこだわりも聞いてみた。すると「人が歩くより、C+walkに乗っている方が横幅を取らない」という。そんなバカな…どういうこと!?

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