「歩く」をアシストするモビリティC+walkシリーズ。開発の裏には、日本中の多くの方々の困りごとがあった
ユーザーからも「デザインがいい」「これなら乗ってみたい」という声が多いという。
実際、開発時も人が乗ってきれいに見えること。「乗ってみたい」と思ってもらうことを意識したそうだ。
商用CASE企画開発部 山田主幹
人と馴染むことも大切にしていて、立ち乗りのC+walk Tは人のサイズから逆算したデザインになっています。
前後の長さは歩く際の一歩分、横幅はお尻のサイズになっています。人間は左右に揺れながら歩くので、厳密に言えばC+walk Tのほうが、人が歩く面積よりも小さいんです。
座り乗りのC+walk Sは、下部の面積こそありますが、上に向けて絞られていく形をしているので、実寸よりも印象はスマート。また、2台ともタイヤをできる限り隠しています。「何か来たな!」という圧迫感を感じさせないようにしました。
空港では1日8キロも歩くことも
今回、北海道の新千歳空港で試乗会があるとのことで我々も同行した。空港で一般向けの実証実験は初。新千歳空港との共同開催で実現したという。
空港のような大きな施設では歩行距離も長くなる。足腰の悪い方などあらゆる方が利用する場所だからこそ、利用ニーズを検証するという。
空港職員としてインフォメーション業務を担当している川辺さんは「操作が簡単で免許がなくても乗れるため、高齢の方や海外のお客様にも薦めやすい」と語る。
また立ち乗りのC+walk Tはシニアに限定せず、あらゆる使用用途が想定されている。
空港職員をはじめ、大きな工場やショッピングセンターなどでの業務用。さらには大規模公園や観光地での散策に使われることも考えられる。
北海道空港株式会社 川辺さん
館内にお困りの方がいらっしゃらないか、不審物がないかなどを確認する巡回業務では、一日に平均7~8km歩きます。
C+walk Tがあればラクに移動できるだけでなく、小さなお子さんや急いでいる方が目の前に飛び出してこられても、自動で速度が落ちたり警告音が鳴るので安心だと感じました。
取材後「あと、暑い夏でも汗をかかずに移動できるのは最高ですね(笑)」とも語ってくれた。
実際に試乗された一般の方からも「操作が簡単ですぐに乗れた」「想像以上に小回りがきいて驚いた」「お年寄り向けのイメージがあったが、このデザインなら乗りたい」「楽しい!」といった声が。多くの方が笑顔になっていたことが印象的だ。
ところで段差や坂道は登れるのか
試乗会場で、ある男性から「空港のような平坦な床面じゃなく、段差は登れるのか」という質問があった。これは下記写真を見ていただきたい。
C+walk Sは5cmの段差を乗り越えることが可能。これは、歩道と車道の境目の最大段差は5cmという道路基準から導き出されている。
また坂道にも強く、斜度10°までならスイスイ登ることができる。ショッピングモールの立体駐車場のスロープは最大勾配が約9.4°。街中であれほどの急坂は少ないが、それ以上の坂を登れるのだ。
広島のイベントでは100歳を超えた方が試乗され、すぐに乗りこなし、移動を楽しんでいらっしゃったという。取材の最後に、山田はこんな話をしてくれた。
商用CASE企画開発部 山田主幹
私ごとになりますが、亡くなった私の父は、免許返納後に家に引きこもるようになってしまったんです。すると一気に体力が落ちていったんですよ…
生きている間には叶いませんでしたが、そういった社会課題への答えをひとつ出せたことはエンジニア冥利に尽きます。今は義理の親がC+walk Sを使っていて、ひとりで外出していると聞くと本当に嬉しい気持ちになります。
トヨタでは、高齢ドライバーの免許返納に関する映像も公開している。
返納を先延ばしにしたいおじいさん、安全のためにも返納してほしい家族。台本のないリアルな家族会議はどうなるのか。是非ご覧いただきたい。
移動がチャレンジするための障害ではなく、夢を叶えるための可能性になるために。今後もC+walkシリーズの取り組みは広がっていく。