トヨタの人事施策の裏側を、次々と紹介するシリーズ「全員活躍をどう実現するか」。初回は人事トップに直接聞いてみた!
一人がヒーローの会社ではない
東本部長
スポーツもみんなで協力しながら目標を達成するので、共通点が多いんです。人それぞれ役割があって、一人ひとりが技を磨き続けている。
その技があるからチームに貢献できる。ラグビーでもチームへの貢献を考えないと怪我人だらけになるじゃないですか。
1937年に会社ができたすぐ後に運動部ができたのですが、トヨタには80年くらい技を磨いてチームに貢献しようとする人たちがいる。クルマづくりでも、前工程、後工程、斜めにも気を配りながらチームワークでやっている人が活躍されている。一人がヒーローの会社ではないんです
全員が主役。だからこそ東本部長は普段から会社のフロアを歩き回り、一人ひとりに声をかけることが多いそうだ。
「小さい困りごとが大きな困りごとになる前に解決していく。誤解や恨みだって早めに解決したほうがいいじゃないですか(笑)。会議ではなくフラットに話をして解決していくのが現場でモノづくりをしてきたトヨタのDNAですから」と笑顔で答えてくれた。
トヨタにとって“人”とは?
最後に、トヨタにとって人とはなにかを聞いてみた。うーん難しいな(笑)と一拍置いて、こう答えた。
東本部長
家ではお父さん、お母さんだったり、スポーツではチームメイト、同期仲間なら同窓。人にはいろんな顔がある。トヨタで働いている顔はほんの一部。しかし、多くの時間を割いている顔でもある。
社員の大事な時間を預かっているのだから、それをいかに大切にするか。トヨタはその意識が強い会社だと思います。
「従業員は家族」という経営思想は、決して失われてはいけない。トヨタ生産方式で「誰かの仕事を楽にしたい」というのはつまり「人を大事にしたい」ということでもあります。それをサポートする人事であり続けたいです。
トヨタの人事制度には、トヨタらしい思想が込められているのだ。
異動や処遇を決定する立場から、どうしても一般的には「冷たい」というイメージも持たれがちな人事。しかし話を聞くと冷たいどころか熱量たっぷりの話が聞けた。
次回からは具体的な人事制度を次々と紹介。まずは仕事と家庭の両立についてトヨタが取り組んでいることとは…?乞うご期待!
東崇徳 総務・人事本部長
1999年にトヨタに入社。人事部に配属となり、人材育成や労務管理を経験。2002年より2年間、社外に出向。また、2014年より3年間、ブラジルトヨタへの出向も経験。2022年に総務・人事本部長、2023年にChief Human Resources Officerに着任。グローバルトヨタの人事・人材育成とともに、トヨタアスリートへの支援も統括している。