第5回「年式問題」という難題を乗り越えて

2023.06.06

自動車業界が大変革期にある今、トヨタの原点に立ち返るべく始まった「初代クラウン・レストア・プロジェクト」。第5回では、旧車のレストアでは避けて通れない「年式(バーション)」問題についてリポートする。

100年に一度の大変革期を迎えた自動車業界。トヨタ自動車ではあらゆる部門で前例のない画期的な取り組みがスタートしている。

そのひとつが2022年の春、社内のさまざまな部署から多彩な人材を集めて元町工場でスタートした「初代クラウン・レストア・プロジェクト」である。

トヨタイムズでは、その意義とレストアの現場をリポートしていく。第5回は、古いクルマのレストアでは避けて通れない「年式(バーション)」問題に、真摯な姿勢で対峙したプロジェクトチームの奮闘についてお届けする。

フルレストアでは避けて通れない問題

初代クラウンが発売され、日本の道を走り始めたのは19551月。それから、人に例えれば老年期となる70年近い年月が経過している。

若いときに健康体の人でも、歳を取るにつれ体のさまざまな部分にトラブルが起きる。いよいよとなれば、病院で治療や手術を受けることになる。

クルマも人の体と同じで、経年劣化によるトラブルから逃れることはできない。どんなに頑丈な部品でも、製造から長い年月が経つと、摩耗や故障が起きて修理を受けることになる。

しかも初代クラウンが誕生した当時のクルマの品質や耐久性は、当然ながらいまのクルマとは比較にならない。この70年あまりの間に、さまざまなトラブルに見舞われて修理を受けてきたはずだ。

そのうえ、修理部品はいつまでも入手できるものではない。自動車メーカーには法律で一定期間、交換部品の供給が義務付けられているし、それを超えても交換部品を保持している場合もある。だがある年月を過ぎると、新品の交換部品は入手できなくなる。

そんな古いクルマの修理の際、頼りになるのが中古部品。カーマニアの中には、この中古部品を確保するために、廃車になった同じクルマを「部品取り」のために何台も所有している人も多い。初代クラウンをトヨタ自身の手でレストアする本プロジェクトでも、このあたりの事情は変わらない。

そして、こうした旧車を発売当時のオリジナルの状態に戻す、フルレストアの際に避けて通れない問題が、同じクルマの同じ部品でも、製造年が違うと設計が変更されているために修理に使えない、もしくは取り付けるためには改造が必要になるという、いわゆる「年式問題」だ。
レストア前の外装 フロントガラス2枚は最初期型となるRS型の特徴だが、後に追加されたRSD型専用装備のサイドモールやオーナメントが取り付いていた
レストア前の内装RSD型用のエンブレムは付いているが内装色やシート生地はRSD型に合致していない。メンバーは当初「RSDに似せたRS」という個体だな、くらいに考えていたという

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