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カーデザイナーがつくる"クルマではない意外なモビリティ"に迫る!

2023.06.01

トヨタのデザイナーがつくるのは、クルマだけではない。真相を担当デザイナーに直撃した。

訪れたのは、愛知県蒲郡市にあるラグナマリーナ。そう、今回取材したのは「海のモビリティ」。

どうしてトヨタがボートを?クルマと違って街中で見かけないからこそ、デザイナーに詳しく聞いてみた。

この写真は、レクサスのラグジュアリーヨット「LY650」の寝室だ。標準仕様で約45000万円*。このような非日常の世界も記事内でたっぷり紹介していく。
*2019年当時、国内税別販売価格。LY650は現在、生産販売休止中

クルマ屋だからつくれるボートとは

トヨタのマリン事業は1997年にスタート。すべての人に移動の自由を掲げるトヨタにとって、海のモビリティに取り組むことは必然とも言える。

とはいえ、構造も用途もクルマと異なるボートづくりにおいて、デザイナーは何に悩み、何を実践しているのか。「クルマ屋だからつくれるボートがある」と語られたのだが、その真相はすぐに明らかになった。

さっそく「このトヨタのボート、他と比べて何か違いませんか」と聞かれた。皆さんはお分かりだろうか。

スポーツ ユーティリティ クルーザー「PONAM-31 Zグレード」。定員12名

ビジョンデザイン部の金丸克司主査が答えを教えてくれた。

金丸主査

たいていのボートは白いボディが多いのですが、この艇はグレーで塗装しています。ちょっとクルマっぽくないですか? 

このPONAM-31はスポーツ ユーティリティ クルーザーと呼ばれ、クルマでいうSUVのようなもの。個性的なカラーリングはその艇のアイデンティティを強調したものだ。

さらに船底は“非常識なデザイン”だという。

金丸主査

走りにこだわるからこそ、船底は波当たりが良くなるアルミ製にしています。プレジャーボートのセオリーからすると耐久性などの観点で非常識とされてきました。それを可能にしたのはクルマづくりで得た止水と塗装技術の成せる技なんです。

アルミ製船底。トヨタは海でもFun to Driveを大切にしている

マリン事業は25年以上の歴史があるものの、造船業界ではまだ新参者。しかし「我々はクルマづくりで得た技術と、協力会社さんとの強力なリレーションがある」と金丸は胸を張る。

側面のシルキーゴールドのガーニッシュは、デザインアクセントだけでなく後部デッキへの風の巻き込みを抑える。クルマの空力デザインが生かされた

大量の釣竿で遊んでいる?

金丸が、コンセプトやカラーマネジメントの観点から素材選びを担当する一方、内外装のデザインを担当するのがビジョンデザイン部 主任の岩田哲弥だ。

岩田主任

ボートとクルマは、サイズも違えば使われ方も違います。マリンを担当するまではボートに接する機会もほとんどなく、フィッシングやクルージングをするお客様が何に喜びを感じるかもわかりませんでした。

ならばと徹底したのが、マリンライフを楽しむお客様にいちばん近いマリン事業室や販売店、ユーザーへのヒアリング。そして“自らやってみる”という姿勢だった。

マリーナの営業所には、大量の釣り竿が立て掛けられていた。失礼ながら仕事を名目に遊んでいるのかと思っていたら、実際に船上で釣りをして、デザイン上の改善点がないかを現地現物で細かく検証していたのだ。

岩田主任

ヒアリングを続ける中で気づいたのが、海に出るということは、信号も渋滞もなく、他人の視線もない“究極のプライベート空間”を手に入れるということでした。クルマでいう感動や興奮にあたる要素が非常に重要なのです。

大海原の中で、自由自在に疾走するボートはダイレクトにFun to Driveを体感できるという。

クルマでは車内で立って動き回る人のことは考えないが、ボートは船上で人が立つ時間も多い。つまり空間デザインの工夫が “Fun to Marine”に大きく影響。デザイナーのやりがいも大きいのだ。

また、PONAM-31ではエンジンを積む後部のボリュームを出すことで踏ん張り感を強調。

ボートは後ろから乗船するからこそ、後部の印象が重要であり、クルマの外形デザインで学んだ知見が生かされた。

次のページではレクサスのラグジュアリーヨットを紹介。非日常な世界をお楽しみいただきたい。

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