自動車業界が大変革期にある今、トヨタの原点に立ち返るべく始まった「初代クラウン・レストア・プロジェクト」。第5回では、旧車のレストアでは避けて通れない「年式(バーション)」問題についてリポートする。
いざバラしてみると…
数万個もの部品で構成されるクルマは、発売された後も休みなく改良され、性能や信頼性、耐久性の向上が図られている。
製造ラインの変更を伴うような大きな改良は、基本的に2、3年おきに行われるマイナーチェンジ時に実施される。このときに型式名称の変更が行われる場合も多い。
初代クラウンも、発売後3年が経過した1958年の秋に本格的なマイナーチェンジが行われ、型式名が「RS型」から「RS20型」に変更されている。
だがマイナーチェンジまで大きな改良ではないが、外から見ただけでは分からない部品の仕様変更は常に行われている。
この仕様の違いを表すために自動車整備の世界で使われるのが「年式」という言葉だ。
「RS型」の初代クラウンには、発売年の12月に「RSD型」という、真空管式のカーラジオやヒーターを装備したモデルが追加された。
今回レストアされることになったのは、「1957年式」のRS型だと思われていた。
ところが、2022年4月25日の「初代クラウン・レストア・プロジェクト」キックオフイベントの翌日から始まった、組立チーム、完成検査チームによるレストア車両の徹底的な調査と分解、さらにシャシーやボデー、エンジンの各担当チームによるレストア作業で、「年式」問題がかなり深刻なものとして浮かび上がった。
レストア・プロジェクトの事務局としてレストア作業を率いる古味和弥は語る。
古味
5月から6月にかけて、レストア作業が本格的に始まりました。
そのとき、各チームが行ったのが、部品をネジ1本に至るまで徹底的に分解してタグを付けて整理し、社内にマイクロフィルムの形で残されていた部品の設計図、仕様図と照らし合わせて、一つひとつ確認する作業でした。
この作業を各チームで行ってみると、外観からは分からなかったこのクルマの本当の状態が、つまりこのクルマがどんな整備や修理を受けてきたのかが少しずつ分かってきました。
部分によって程度は違いますが、1955年式と57年式の部品が混在する、ハイブリッドともいえるクルマだったのです。