イチゴ&トマト栽培。そんなカーボンニュートラルがあったとは・・!

2023.08.01

本業とは関係ないように見える取り組みを紹介する「なぜ、それ、トヨタ」。今回は工場で、イチゴとトマトづくり!?

ピンク色の照明。その秘密とは

ビニールハウスの照明にも、甘くておいしいイチゴづくりの秘訣があるという。エンジンをつくりながら、イチゴもつくっている新開大治グループ長が教えてくれた。

エンジン製造技術部 新開グループ長

イチゴは、光が強すぎても弱すぎてもダメ。なので、雨やくもりの日はLEDで光を調整します。

LEDがピンクに見えるのは“緑色を抜いているから”です。緑色は、植物の成長に重要な光合成に不要なんです。紫外線ライトの殺菌効果を生かして、極力農薬を使わない工夫もしています。

車両のシリンダーヘッドの鋳造に関わる改善を担当していたエンジン鋳造部の南 勝一は、糖度の高いイチゴをつくるコツについて教えてくれた。

エンジン鋳造部 南(写真右)

エンジン鋳造部 佐野孝二(左)、エンジン鋳造部 南 勝一(右)

昼夜の温度差を正しく計測し、適切なタイミングで栄養を与えることが糖度を高めるコツです。水や肥料は多くても少なくてもダメ。必要な時に必要な量だけ与えています。時折噴き出すミストの気化熱によって温度管理をしています。

また、農業には“重労働”という課題もある。スマート農業に注力する「あさい農園」の生産開発マネージャー馬野幸紀さんに、農家が抱える課題について伺った。

あさい農園 馬野さん

アドバイザーとして協力いただく農家、「幸ちゃんのイチゴハウス」山本翔史さん(左)「あさい農園」馬野幸紀さん(右)

重労働を楽にするためのアイデアを一緒に考えています。トヨタさんのやり方として参考になったのは、やはり5S

作物が列ごとに番号分けされ、どの列に何の品種があるかを“見える化”して管理。異常があればすぐにわかる仕組みには感心しました。基本的なことですが、農業の現場ではまだまだそうした部分が弱いんです。

※整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の頭文字を取った名称

会社でやることは、トマト栽培とバトミントン

取材班が次に向かったのは、駆動関連部品や鋳造部品をつくるトヨタ明知工場。ここでは工場の廃熱を利用してミニトマトが栽培されていた。

ハウス内に入って衝撃を受けた。大量のミニトマトが、ショッキングピンクの光に照らされて垂れ下がっている。まるで現代アートのような異空間だ。

ここでは、社内公募で手を挙げた若手が活躍。車両の鋳造部品の検査を担当していた入社6年目、23歳の宮城千尋に話を聞いた。

昼はミニトマト栽培、夜は実業団選手としてバトミントンの練習。友人からは「トヨタで何してるの?」と質問責めにあうそうだ。

明知工場 鋳造部 宮城

実家が農家ということもあり、公募で手を挙げました。両親に「廃熱を使って農業をしている」と伝えると「理解の限界!」と言われました(笑)。

工場では同じように作業すれば、同じものがつくれます。でも、生き物の場合はそうはいかない。いざ担当してみると作物を育てる大変さが分かり、身をもって親のありがたみを痛感しています。

とはいえ、ここでは温度・湿度・光量からCO2までを電気制御。ミニトマトの成熟度を示す色見本があるなど、誰でもかんたんに作業できるようにノウハウが共有されている。「実家の手伝いより楽」と宮城さんは笑う。

このビニールハウスで、データと向き合う農学博士にも話を聞いた。

あさい農園 生産開発ユニット 呉 婷婷(ウー・ティンティン)さん

中国にはない先進農業を学ぼうと、日本の大学に留学しました。トヨタのこの農園はハイテクで、日々学びがあって勉強になります。

最後に前出・岡島主査は、今後のビジョンについて口を開く。

岡島主査

食料ビジネス全体でいえば「生産」は一番ボトムの部分。「加工」や「出荷」のインフラまで考えないと収益が上がりません。

そういう意味でも、トヨタが販売店さんと培ってきたクルマを売り切るビジネス。さらにはサブスクサービスなど、トヨタの知見が役立つのではないかと考えています。

「日本の農業はもっと強くなれる」と意気込む岡島主査。煌めくビニールハウスの中から、農業の新たな光が広がっていくかもしれない。

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