BEVのプレジデントが語る"私のキャリア" 山本シンヤ氏インタビュー

2023.10.24

今年、新たに"プレジデント"となった3人を、自動車研究家 山本シンヤ氏が直撃! 第2弾はBEVファクトリー加藤武郎プレジデント編。これまでのトヨタマン人生を掘り下げた。

新組織のスタートもまた1人!?

bZ3は202210月に発表。その後も開発は進められたが、今年の2月、加藤氏に本社から連絡が入った。

内モンゴルの氷点下25度ぐらいの場所でクルマのテストをしていた時、スケジューラーに「人事面談」と入りました。

「この忙しいときに何の面談だ?」と、すぐに蘇州に移動し人事面談に出席すると、画面の先には章男会長と佐藤社長が……。そこで「(クルマの先行企画から量産開発までを一気通貫で担う)クルマ開発センターに戻ってきて」と。

bZ3の仕事を終え、4月に本社に戻った加藤氏だが、クルマ開発センター所属というだけで何をするのかは知らされておらず。

とは言え、まずは職場を知るために部署を回りながら2週間過ごしたある日、中嶋裕樹副社長から「電動車の組織をつくる」という話が来たそうだ。

クルマ開発センターに来たばかりですけど、「また変わるのですか?」、「メンバーは?」と聞くと、「今1人なので、まず人集めから進めてください」と()

連休まで実働1週間、今までのコネクションと「この人だったら心の友になってくれる」という人に声掛けをし、上司の方にもお願いしてメンバーを募りました。

ゴールデンウィーク中も準備を行い、休み明けに「BEVファクトリー」が立ち上がりました。

現在、加藤氏は2026年に登場予定の次世代BEVの開発を進めている。

ちなみに加藤氏は株主総会で会長から指名され、その場で「私はバッテリーEVが大好き」と語った。その本意は何だったのだろうか?

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

あれはリップサービスではなく、本心です。電気自動車には電気自動車でしかできないクルマの特性・走りがあります。

それはモータードライブの心地よさだけではなく、雨が降っていても、晴れていても、アスファルトの上をペターッとクルマが張り付いて走る感覚。その性能は僕の好きな“クルージング”には必要不可欠です。

今までエンジンのあるクルマではつくることができませんでしたが、「電気自動車ならできる」とbZ3開発で感じました。そんなクルマを目指します。

加藤武郎(Takero Kato)プロフィール

最初に買ったクルマは、中古の日産スカイライン5代目:ジャパン。入社後はディーラー実習時にチェイサーを購入。その後、大好きなスキー(13月は毎週通うほどハマった)のために、何とスバルレガシィを購入。当時トヨタにも似たクルマ(=カルディナ)があったが、「低重心はいいモノのだ」という想いから選択。実際に雪道・高速での安定性、視界性能の高さに驚き、結果として2台乗り継ぐ。この時「レガシィのように路面にピターッと張り付いて走るクルマをつくりたい」と思ったそうだが、実はそれが現在開発中の次世代BEVにつながっている。その後、レガシィからの四駆つながりでアウディ・クワトロを購入。「生涯乗ったクルマの中で一番!!」と言うほどの秀作だったそうだ。現在は低重心、四駆に加えて、「もっと電動車を知りたい」という想いもあり、レクサスRZを所有する(写真は本人提供)。

山本シンヤ(Shinya Yamamoto)プロフィール

自動車研究家。自動車メーカー、チューニングメーカーを経て、自動車雑誌の世界に。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちをわかりやすく上手に伝えることをモットーに活動している。

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