ダカールラリー市販車部門8連覇! そんなチームの快挙にも、なぜか神妙な顔の三浦昂選手。その意外な理由とは?
今回のトヨタイムズは、世界一過酷なモータースポーツとも言われるダカールラリーで、見事、クラス優勝を果たしたラリードライバー三浦昂(みうらあきら)選手へのインタビューである。
ラリーは、1月3日にスタートし、サウジアラビアの砂漠を13日間、7600キロに及ぶ道のりで争われた。
三浦選手はランドクルーザーで、その道に挑み、見事クラス優勝を果たしてゴールに戻ってきた。三浦自身としては2度目の優勝。チームとしては8連覇という偉業である。
V8達成翌日に行われたインタビュー。その偉業を称えるべく、トヨタイムズは「おめでとうございます。8連覇すごいですね!」からインタビューを始めた。
しかし意外なことに、三浦選手からは神妙なトーンの返事が返ってくる。
「V8ではダメになってしまったという話がありまして…」
8連覇ではなぜダメなのか? このわけは、後ほど、詳しく書いていくが、その前に少しだけ前置きの説明をしたい。
ダカールラリーとは? 三浦昂選手って?
ダカールラリーは、世界一過酷なモータースポーツとも呼ばれる自動車競技である。参加するのはいわゆるクルマ(四輪車)だけではない。バイクで挑戦する選手もいる。
今年の舞台はサウジアラビアの砂漠。1月3日にスタートし1月15日にゴールを迎えた。一昨年までは南米の砂漠で、もっと前はアフリカの砂漠で行われていた。
1970年代に始まったラリーであり、その頃はセネガル共和国の首都ダカールがゴール地点だったことに由来している。
その過酷な戦いにランドクルーザーで挑み続けているチームがある。その名は「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー」。三浦選手は、そのドライバーである。
チーム名は直球すぎるが、それもそのはず。“トヨタオートボデー”とは、トヨタ車を生産する“トヨタ車体”という会社のことである。
ランドクルーザーを生産している会社が、自社製品の威信をかけて、厳しい道に挑戦しようと立ち上げたチームなのである。
チームランドクルーザーは、その“市販車部門”に2台を送り込んでいた。市販車部門とは、乗員の安全を守る装備は専用のものに変更するが、他は市販車に近い状態のままで走るクラス。まさに自社製品の威信をかけて…である。
そして、このチームが“自前”で用意したのはクルマだけではなかった。三浦選手も“自前”。彼は総務部広報室に所属する社員なのである。
三浦は入社後、社内公募に手を挙げて志願し、チームに入った。最初は助手席に乗るナビゲーターを務め、数年後、チーム内でもう一度、手を挙げてドライバーに志願した。
今年はドライバーになって6年目の挑戦であったが、三浦は初めて“エースドライバー”に任命された。
チームは昨年まで市販車部門で7年間勝ち続けている。エースドライバーに任命されたということは「勝ち続ける」使命を背負ったということである。
そんなプレッシャーの中で、三浦は見事に総走行距離7646キロ(内、競技区間4767キロ)を走り抜いて、8度目の市販車部門優勝を勝ち取った。
社員が自社製品の評判をも背負って走る。連覇を途切らせるわけにはいかないという計り知れないプレッシャーの中で三浦は、見事にその重責を果たした。
“8連覇おめでとう”に意外な返答
ゴール翌日、三浦をはじめチームメンバーたちは、帰国に向けたPCR検査をしていた。検査の後ならば、時間にも気持ちにも余裕があるとのことで今回のインタビューを設定していた。
テレビ通話がはじまると、一緒に検査を受けていたメカニックの2人(岩浅龍矢、中武佑太)もいたので、一緒に話を聞かせてもらう。
ちなみに、メカニックの2人はトヨタの販売店である福岡トヨタの社員である。メカニックも自社の売り物の威信をかけて戦っているということだ。
前置きが少し長くなったが、ここから本編であるインタビュー記事を始めていきたい。
トヨタイムズ
おめでとうございます。8連覇すごいですね!
三浦
ただ、V8ではダメになってしまったという話がありまして…。
昨日、(トヨタ車体の)増井(敬二)社長にラリーが終わって連絡をしたんですけど、「是非モリゾウさん(豊田章男社長)にも報告してね」ということで、豊田社長にSNSでメッセージを送らせてもらったんです。
そうしたら、豊田社長から「あれ? 8連覇だっけ? 12連覇じゃなかった?」という話になって…。
「12連覇は(トラック部門で優勝した)日野(チームスガワラ)さんです」って返事をしたら、「いろんなところでV12って言っちゃったから、V12でお願いします!あと4回ね!」と言われてしまい、まだ道半ばということになっちゃいました (笑)
トヨタイムズ
まだ3分の2ですね(笑)。まだまだ走り続けないと…。
三浦
もっと走りたかったです。まだ全然元気ですもん。
いつもは、すごく緊張するんですよ。だけど、今回は毎日、単純にスタートできるのがうれしくて…。
普段だとパンクとか、スタックしちゃいけないとか、ましてや、横転なんかしちゃいけないとか、どうリスク排除するかという組み立てになってしまうんです。
でも、今回は難しそうな砂丘が出てくると「どうやって越えていこうかな」とワクワク感の方が強くて、ポジティブに走れました。それにクルマが応えてくれるのを感じながら走れました。