「トヨタのBEV(電気自動車)はコモディティにしない」。BEVシフトが叫ばれる中、トヨタが公開した最新技術には、クルマが大好きなエンジニアたちの情熱があふれていた。
デザイナーの発想力をAIでサポート
ユーザーが愛着を持てるクルマとするためには、魅力あるデザインも重要だ。トヨタではAIを活用したデザイナーの発想力拡張にも取り組んでいる。
デザイナーの仕事は、空力など工学的な要件を最大限に考慮しながら、美しい意匠を追求することにある。
外観の意匠が変われば、空力も変わる。これまでは、その両立を図りながら最適解を探るという作業に多くの時間を要していた。
そこで開発中のAIシステムでは、工学的な分析データを蓄積・学習させることで、空力性能などを損なわないように考慮された画像を自動で生成。
短時間で複数の画像をつくることができるため、デザイナーは空力性能などの条件のつくり込みにかける時間を減らし、理想のデザインの追求に、従来の2倍の時間をかけられるようになるという。
最新AIとAreneで最高の車内空間を演出
最新AI技術を活用し車内空間をもっと上質に。トヨタがつくる音声認識システムは、クラウド上の処理だけではなく、車載機での処理も使い分けているため、レスポンスが速い。
おまけに要望をコロコロ変更したり、要求を重ねたりしても対応可能で、「お願いしたことを聞いてもらう」感覚ではなく、まるで人間のオペレーターと「会話をしている」かのような臨機応変で素早いやりとりができる。
さらに、最先端のソフトウェアプラットフォーム「Arene(アリーン)OS」により、200以上の車両機能が操作可能に。
「暑い。○○℃にして」と言えばエアコンを、「全席の窓をちょっと開けて」と言えばウィンドウを制御するなど、運転中にステアリングから手を放して操作する必要もない。
次期グローバル量産モデルからの搭載を目指し、アップデートはOTA*(Over the Air)での更新を予定している。
*無線通信を経由したデータの送受信技術。スマートフォンのようにソフトウェアの更新がオンラインでできる。
エンジニアたちの飽くなき挑戦
「BEV化することでクルマはコモディティになる」と言われることがある。
しかし、今回紹介した最新技術には、「トヨタのBEVはコモディティにしない」というクルマが大好きなエンジニアたちの情熱があふれていた。
冒頭、クルマ屋がつくるBEVを「愛着の持てるモビリティ」と表現した中嶋副社長は言う。
「まだまだ『独りよがりの技術』もあるかもしれませんが、皆さまに体感していただいて、得られるご意見を開発にフィードバックしたい。日々努力しながら答えを模索していきたいと思っています」
クルマづくりに懸けるエンジニアたちの飽くなき挑戦が形になって会場を彩っていた。