「クルマ好きだからこそできるカーボンニュートラル」豊田社長 @東京オートサロン2023

2023.01.13

「クルマ好きを誰ひとりおいていかない」。そう力を込める豊田章男社長の傍らにはAE86レビンとトレノ。クルマが大好きな仲間たちへ届けたメッセージを取り上げる。

「クルマ好きだからこそできるカーボンニュートラルの道がある」

1月13日、幕張メッセ(千葉市)で行われたカスタムカーイベント・東京オートサロン2023のステージで豊田章男社長はそう力を込めた。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

その傍らには“往年の名車”と言われ、今なおクルマファンに高い人気を誇るAE86・レビンとトレノが――。

カーボンニュートラルが叫ばれ、クルマ好きが肩身の狭い思いをする時代において、豊田社長が届けたかったメッセージがこのクルマにはあった。

クルマが大好きな仲間たちへ届けたメッセージを紹介する。

年明け2つのニュース

おはようございます。豊田でございます。明けまして、おめでとうございます。

年明けに私の名前が載った記事が2つ話題になっておりました。

ひとつは「トヨタの社長、賀詞交歓会欠席」。ご心配をおかけいたしました。本日こうして新年のあいさつができて、ようやく私も年が明けました。

もう一つはこちら。

強烈なタイトルもあり、多くの方にお読みいただけたようでございます。共感の声をたくさんいただくことができました。

ただ、一部の方は「トヨタが海外に移転する」ととらえておられました。ご安心ください。本日の発表は海外移転ではございません。

ただ、昨年、海外に行って、強く感じたことがあるのは事実です。それは自動車産業への感謝でした。

日本と海外ではそこに大きな差があります。海外では、自動車産業がその地域の成長に貢献していることにものすごく感謝されます。

「これからも頼みます」と言われれば、本当にうれしくなります。しかし、日本でこうした想いになれたことはありません。

2台に込めた社長の想い

記事には「日本を諦めつつある」ともありましたが、2023年の日本は「クルマ好きの想いを世界に発信していくチャンスの年」だと思っております。

その想いというのがこちらです。

「クルマ好きだからこそできるカーボンニュートラルの道がある」

「クルマ好きを誰ひとり置いていきたくない」

この想いはオートサロンから始まり、G7(先進7カ国首脳会議)にもつながってまいります。

こちらのAE 86トレノとレビン。これらがその想いをカタチにしたものです。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

このトレノは水素エンジン車です。ですが、スーパー耐久のカローラのエンジンではありません。元の4AGを水素エンジンに改造しました。

一方のレビンはバッテリーEVです。半世紀前にできた車名ですが、実はEVの2文字が隠れておりました。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

50年がかりでようやくバッテリーとモーターを搭載したわけです。元々の4AGも宝物ですから大切におろさせていただきました。

ただマニュアルミッションはそのまま。クラッチ操作やシフト操作が楽しめます。

「カーボンニュートラルの時代でも愛車に乗り続けたい」というチャレンジです。

また、そちらに置いてあるのは、WRCのラトバラ代表が昨年のフィンランドヒストリックラリーで優勝したST165セリカです。

こちらのAE 86はプロドライバーの佐々木雅弘を育てた師匠であり、彼がいつでも原点に戻れるようにレストアしたモデルです。

2人に限らず、私にはクルマを大切に乗り続ける友人がたくさんいます。みんなクルマが大好きです。ただ、その中の誰ひとりとして「地球がどうなってもいい」なんて思ってもいません。

カーボンニュートラルに向けて、自分ができることはなにか、真剣に考えてくれています。

愛車にも選択肢を

そんなクルマ好きたちと話していて気づいたのが、この86のように「コンバージョンの先にカーボンニュートラルの実現がある」という世界です。

多くの自動車メーカーが2030から40年頃をターゲットにバッテリーEVへのシフトを目指しています。

ところが現実には、これから売り出す新車をEVにするだけでは2050年のゼロカーボンは達成できません。

保有車、つまり、既に誰かの愛車になっているクルマにも、選択肢を残していくことが大切だと思っております。

オートサロンには、自分の大好きなクルマとカーライフを楽しみたい人たちがたくさんいらっしゃいます。

86をコンバージョンした技術は、まだまだこれからですが、本日、こんなお話をさせていただくことで、クルマ好きたちが「カーボンニュートラルで大好きなクルマに乗れなくなっちゃう」と寂しく思うのではなく、「クルマ好きだからこそやれるカーボンニュートラルがあるんだ」と未来にワクワクしていけたなら、今年、世界に向けて大きなメッセージが発信できるのではないでしょうか。

モリゾウもワクワクしてまいりました!

クルマ好きの皆さん! 皆さんのおひとりおひとりがカーボンニュートラルに向けたチーフエンジニアです。一緒に未来をつくりましょう! ありがとうございました。

と、ここで終わるのかと思いきや、豊田社長は拍手が鳴りやむのを確認して、話を続けた。

最近、フェイスブックを見ておりますと、「AE 86を買った」ということばかりをアップしている人がいます。

ここからはその人にバトンタッチしたいと思います。紹介します。GRカンパニープレジデントの佐藤です。

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

佐藤恒治プレジデントをステージに呼び込むと、豊田社長は切り出した。

豊田社長

クルマを持ってきていないの?

佐藤プレジデント

あまりに愛が強すぎて、いろいろ直し過ぎて…。まだバラバラで、持ってこれませんでした。

豊田社長

これ、3日間あるからね。間に合えばぜひ!

佐藤プレジデント

作業を手伝いに(行ってきます)。愛知県の豊田市でやっていますので。

豊田社長

運転して持ってきて。安全運転で!

バトンを受けた佐藤プレジデントからは、WRCでのドライバーズタイトル獲得を記念してつくったGRヤリスのオジェバージョンとロバンペラバージョンが披露されるとともに、レクサス、TOYOTA GAZOO Racingの展示の見どころなどが紹介された。

詳細はトヨタTOYOTA GAZOO Racingのホームページで。

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