最近のトヨタ
2023.09.12

「本音が言えない」現場の苦悩 職場改革は進むのか

2023.09.12

失敗を恐れず挑戦できる職場は育っているのか、余力の創出は? 労使協議会での決意を形にしていくため、再び労使は本音で話し合った。

トヨタの価値観が、労働市場とズレてきている

「各工程でこれまで『一人工の追求』を続けてきたからこそ、作業強度が高くなり、それらの工程についていくのに困難な人が増えてきている実状があります。特にそのような工程に社外応援者の方が入っていただくと、組立では作業について行けず、短期間で辞める方が多く、定着に苦労しています」

3つ目のテーマ「職場の余力創出」について、議論の冒頭、組合から社外応援者が定着しないという実状が説明された。

「一人工の追求」とは、トヨタの従業員一人ひとりの作業の「ムダ・ムラ・ムリ」を削減して、実際に作業に要した人員と、想定される人員との差を極力近づけて生産性を高めようという働き方だ。

トヨタの競争力の源泉ともいえる考え方だが、一方で期間従業員の12カ月経過時点の定着率が56割、製造型、正社員型の派遣従業員は、約2割~3割にとどまっている実態がある。

組合からはさらに、このような現状を前にして、職場と家庭の両立にも躊躇してしまっている傾向も紹介された。

平野康祐副委員長も、組合員の胸中を代弁するように続ける。

平野副委員長

一人工の追求というのは本当に大切で、これが競争力の源泉だと思っています。

一方、外から来ていただいている方にとっては、苦しい、難しいと感じられる要因の一つになっている。そこで定着が以前にまして悪くなっている状況が出てきています。

労働市場の変化やそういったものがトヨタの価値観とちょっとズレてきているところがあります。

具体的に「こうして欲しい」という話ではないですが、大きく悩んでいるという趣旨の相談といいますか、投げかけです。

競争力の維持とひっ迫する現場。その狭間でどのような策が打てるのか。生産現場のトップらが手をあげた。

高岡・堤工場 森田光宏工場長

まずは優先順位を絶対に間違えないように、安全品質(が第一)。その後にしっかり一台一台のクルマをつくっていこう。その中で生産性というものは現場の今の事実を映す鏡なので、別に悪くても、僕は構いません。

それよりも安全品質をしっかり守って生産活動をやっていきましょうということで、1月以降、現場の運営をしています。

ただ、言葉ではそう言っていますが、現場の皆さんがこれだけ高い要員の入れ替え率がある中で、その言葉で皆さんが救われるということはなくて、その要員の入れ替え負担にしっかり手を打っていく必要がある。

例えば、今、最も要員の入れ替えが激しい組立工程で、配属前に入っていただく人たちの適性を確認して、しっかり活躍いただける人に入ってもらう施策です。

新しく入ってくる作業者に対して、負荷が高い工程については、工程負荷を8割に下げて、3カ月でソフトランディングしながら、習熟を見て活躍をしていただく。

7月以降、徐々に入れ替え率も下がってきました。ですが、まだまだ現場の皆さんが安全安心に、生き生きと両立制度もしっかり活用いただけるレベルには至ってないという認識です。

この点については今起きていることを、さらにもっと知っていて、施策に結びつけていきたいと思っています。

伊村本部長

まずはその日々の中の即時に対応できる策として、区分間の応受援の見直しがあると思います。

例えば、処遇差を解消して応受援を促進できるような人事施策も含めてやっていく。65歳以上の人たちを有効活用して、スポットでそういった仕事をやっていただけないだろうかということも含めて、従来にはないような施策をしていかないと、なかなか解決できないと思っています。

組合からは、鬼頭圭介副委員長が作業負荷に応じた人員配置について言及した。

鬼頭副委員長

一日でも早く、一台でも多くのクルマをお客様に届けたいという思いで、必死になって頑張っているんですけれども、頑張りだけでは立ち行かないという現状は、製造現場でも起こっていると思います。

こういう現状だと、車両系のところがやっぱりどうしても受援率が高くなっていてしまいます。

ですので、作業習熟に時間がかからないようなユニット工程に非正規の方々に従事していただいて、プロパーの方をできる限り車両系のところに配置していくというような考え方の変更であったり、「これだけの人がいるから、これだけつくれるよね」といった、人を中心とした生産計画の立案であったり(が必要かと思います。)

これからの職場をどう作っていくのか、先々を見据えたとき、考え方を変えていく必要があるんじゃないかなと思っています。

RECOMMEND