失敗を恐れず挑戦できる職場は育っているのか、余力の創出は? 労使協議会での決意を形にしていくため、再び労使は本音で話し合った。
再発防止の仕組みが極度に定着している
佐藤社長
今、いろいろな意見が出ましたけれども、トヨタらしさを取り戻していくために一番大切な要素が、失敗を恐れずに挑戦するということだと思います。
失敗にはいろいろな中身があると思うんですけど、安全にかかわる失敗は繰り返されてはいけない。必ず再発防止をして二度と起きないようにしていく必要があると思います。
それ以外の失敗はどういう内容のものだろうと考えると、やり直しになったり、やろうと思っていたことがそのレベルまでできなかったり、要は作戦変更を余儀なくされることが起きた時に、それを失敗と言っていないかと思うんですね。
100年に一度の変革期と言われる中、我々のやっている仕事は、もはや定型の繰り返しではなくなってきている。予定通りにいくことの方が少ないと思わないといけない。
ですから、仕事のプロセス管理の仕方も変えないといけないですし、失敗の定義も変えていかないといけない。
「できないということがわかった」という理解が必要だと思います。ただ、残念ながらそういう環境でありながら、みんなが思えないのは、3つの要素があると思います。
1つはやはり余力が足りない。やり直しているゆとりがないので、やり直しができない。だから、やり直しに至ったことを失敗だと受け止めざるを得なくなる環境。
これは労使協でもお話しした通り、余力を生んでいくためのヒト・モノ・カネのあり方を本気で変えていこうと思います。
特にお約束をした追加の700名の採用という件については、採用努力を人事のメンバーが必死にやってくれています。執行体制のメンバーも一人ひとりが採用に対して責任を持つということで現場活動を始めています。
もう1つ、失敗できないということに繋がる要因は、おそらく人事評価だろうと。褒められたいとは言いませんけれども、失敗して叱られるよりは、よく頑張ったねと言われたい。
これは人間なので仕方がない。それが前向きな挑戦であっても、失敗と受け止められた時の人事評価、努力が報われない。このことに対してある種の恐怖心というのは、どうしても感じてしまうだろうなと。
これは人事評価のあり方の問題なので、挑戦の中身をしっかり見るということを、どう向き合ったのかを評価していく人事制度を確立していくことが大事だろうと思います。
もう1つはご提案ですが、ツールの仕組みの問題が結構大きいと思います。再発防止が多くて、前になかなか進んでいけない。
トヨタは改善の文化がありますし、問題解決をみんなで学んで成長している会社なので、問題解決能力というのは非常に高い。なので、何か問題が起きたときに、それを解決するためのノウハウを具体化し、仕組化するという文化があります。
しかし、残念ながらこのトヨタの文化は、よき文化でもありますが再発防止に類する仕組みが、極度に定着している状態なんだろうなと想像します。
ここから先は西野委員長へのご提案なんですけれども、この声をもとに、実際に我々動きましょうよと思います。
おそらく支部ごとが良いのかもしれませんが、代表者を決めてください。その支部の中にある再発防止の仕組みが今どういう状態になっているのかを我々に教えてください。
どういう運用がされていて、どんなツールがあるのか、それを視える化しましょう。その仕組みやツールに対して、今の時代にあった形に変えていく努力をしましょう。
我々は本部長以上、全員が責任を持って、その現状を明らかになった再発防止の仕組みやツールに対して、適正なものに見直していく話し合い、行動を取りましょう。
西野勝義委員長もまた、「本気で変えるんだという気概を持って、我々も体制を整えながら、一緒になってやっていきたいと思います」と応じた。