労使協議会から約2カ月。労使が再び集まった。生産性向上へ覚悟を決めて動き出した現場では、一歩踏み出したからこそ見えた壁もあった。
作図回数の削減の狙い
続いて、労使協でも議題に上がったTS(トヨタスタンダード:トヨタが定めた設計基準)の見直しと図面作成の回数減について。
TSは労使協の期間中から検討を始めた職場が出てきているが、作図回数減は思うように進んでいない実態も。削減活動の本質は図面の精度向上としつつも、影響範囲の大きさから、結果を見通しきれず、結果的に自らの裁量の及ぶ範囲に活動がとどまってしまうこともあるという。
デジタルソフト開発センターでは、こうした個人の裁量を越えた領域や未経験の世界に踏み込もうとする際に、二の足を踏んでしまう状況に、皿田明弘センター長らが組合員と直接コミュニケーションをとった。開発日程の縛りを無くし、2カ月の開発環境整備の期間を設けることなどを決断。これにより組合員も正味率改善の真意を理解するとともに、開発の熱量、スピードも上がり、開発日程の短縮まで手応えを感じている。
秋山大樹 副委員長は「丁寧に上下一致でコミュニケーションを取っていくことが大事」とし、目的と手段を明確にすることの重要性を振り返る。
秋山副委員長と同様に、クルマ開発センターの石島崇弘センター長も「目的と手段が混在している」現状に警鐘を鳴らす。
石島センター長
作図回数を減らすことが目的ではありません。
何をやりたいかというと、前回の労使協でも少し話しましたが、エンジニアとして考える時間を増やしたいというのが(根底にある)想いです。
考える時間を増やして何をするかというと、設計であれば図面の質を上げることです。実験であれば試験結果のアウトプットの質を上げること。これが我々のアウトプット、生産性向上のゴールだと思っているんです。
ですので、皆さんが作図回数をどうやって減らすかという議論になっているのであれば、今一度しっかりと皆さんにその想い、何をしなければならないのかを共有する場を持ちたいと思います。
図面の質を上げる活動というのは、一つのカンパニーあるいは一つの本部では全くできなくて、車両だと各車両カンパニーにプラスして、クルマ開発センター、パワートレーン、DSC(デジタルソフト開発センター)、全てが連携して、どうやったら図面の質を上げていけるのかということをやっていかなきゃいけない。
石島センター長のコメントに、Toyota Compact Car カンパニーの高橋司プレジデントも続く。
高橋プレジデント
車両の企画開発をやっているカンパニーだけではなく、多くの機能の皆さんに、図面の質を上げるという、この活動の目的を伝える。
労使協であったように、今は我々がこれまでやれていたリードタイムの中でクルマが立ち上げられないというマイナスの状態にあるということを(認識し)、まずこういった取り組みで完成度、アウトプットを上げて、まずマイナスをゼロにする。
リードタイム短縮は我々の競争力の源泉です。その次のさらに先のステップとしてもう一段頑張っていくというところの、まずは緒に就いたと僕は思っています。
石島センター長、高橋プレジデントが口をそろえた部署を越えた連携。カスタマーファースト推進本部の宮本眞志 本部長は、今年設置した、技術や製造だけでなく経理など各部署のマネジメントが集まり、やるべきことを即断即決する「品質大部屋」を紹介した。
職場を越えた連携
「品質大部屋」のような部署を跨いだ横の連携強化は、組合でも取り組まれている。
衣浦工場では独自のAIチャットボットを導入し、過去の不具合や匠のカンコツをデジタル化することで、書類探しの時間をゼロに近づけ、組長のめんどう見の時間を創出している。
この取り組みは、組合のつながりを生かして他工場にも展開されたが、こうした中で気づいたのが、他の現場の困りごとや活動を、まだお互いを深く知り合えていないということ。
生まれた横のつながりで、同じような課題感を持つ仲間が集まれば、課題解決のスピード感を高まるはず。いかに横の連携を深めていくかが話し合われた。
デジタル情報通信本部の山本圭司 本部長は、衣浦工場の事例を聞き「AIの取り組みが全社で今広がっている中、大玉化やテーマの見える化が何よりも大事だということで進めています」と反応。各本部を跨いで、テーマの見える化と全社目線での優先順位付けを進めているが、やはり現場レベルでの横のつながりに課題を感じていた。
山本 本部長
労使協のときにCopilotの使用率の話をさせてもらいました。現在は使用率も上がっています。使う上での腕前も上がっています。
最近はCopilotエージェント*がトレンドになっています。手軽に業務支援エージェントを、机の上でパソコンを操作するだけでカスタマイズできる。
*ユーザーの指示や設定された条件に基づき、情報収集や特定の業務を自律的に実行・補助してくれるAIによるアシスタント機能。
ところが、全社に目を向けますと、Copilotエージェントが氾濫しています。似たようなものを他の部署でもつくってしまう。本部長・プレジデントクラスが思うよりも、現場のスピードが速いということなんです。
これではダメだということで、部署またぎで、いわゆる実務レベルの皆さんのノウハウが共有できる仕組みが必要だと考えまして、5月1日付けでデジタル情報通信本部の中に、全社のAIの窓口になるような「AI&データマネジメント部」という部署を新たにつくりました。
まだ周知されてないと思いますので、ぜひこの部署をどんどん使い倒していただいて、駆け込み寺のごとく、よろず相談、もめ事、何でも請け負います。他の本部やカンパニーがやっていることの情報もこの部が収集できます。
情報の一元化と共有といったところが(労使で)一緒に汗をかいてやっていくことかなと思いました。