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2026.05.27
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生産性向上へ動き出した労使 見えてきた壁、連携深め次の一歩へ

2026.05.27

労使協議会から約2カ月。労使が再び集まった。生産性向上へ覚悟を決めて動き出した現場では、一歩踏み出したからこそ見えた壁もあった。

トヨタ自動車本社(愛知県豊田市)で22日、労使懇談会(労使懇)が実施された。

2月18日の申し入れから3月18日の間にあった労使協議会(労使協)からおよそ2カ月。労使は自動車産業が直面する厳しい事業環境を共有し、危機感を持って仕事の前提条件を変える、技を磨く覚悟を決め行動に変えようとしている。

労使懇では、行動の実例や見えてきた課題が共有された。話し合いの様子を紹介する。

意志を持って決めていく

冒頭、鬼頭圭介 委員長が労使協以降、さまざまな現場で生産性向上のために動き始めている一方、動き始めたからこそ見えてきた課題や壁があることを伝えた。

それに対して近健太社長は「『これまで動いてきたけれども、壁にぶち当たって少し進めないでいる』、『もがいている。その状況を変えていきたいが悩んでいる』といったことをぶつけていただいて、会社側だけではなく、労使一緒に議論をして決めて次に進んでいく場にしたい」とし、続けて次のように語った。

近社長

我々は労使協で議論をしてきましたが、それで終わりではなく、その先の行動にしか意味がないと思っています。

今回非常に厳しい決算ではありました。3期連続の減益(見通し)でした。

ただ、今期でいうと3兆円の見通しを発表できたことは、皆さんの一人ひとりの努力の賜物だと思います。これには本当に感謝申し上げます。ありがとうございます。

トヨタの決算は、今働いている我々、連結だと38万人、トヨタだと7万人の今やっている仕事だけでできているものではありません。

先人たちの努力の積み重ね、つくってきてくれた土台の上に成り立っています。550万人の仲間の、必死の努力の賜物だということを本当に忘れてはいけないと思います。彼らのためにも、我々は確固たる収益構造をつくっていかないといけません。

これは別にトヨタが儲けたいとか、そういうことではなく、トヨタが悪いときにもしっかりと投資をできる、チャレンジできる、成長投資を続けられる、そのためのものです。

ですので、そういう気持ちを、ぜひ皆さんと一緒に持って、これからも取り組んでいきたいと思います。

だからこそ一律のカットということはやりたくないし、やりません。

我々が意志を持って、一つずつ「これはやる」「これはやめる」ということを決めていく。実際に行動していくということに尽きると思います。

それは、一律に何かをやめることよりも、もっと難しいです。

自分のやっている仕事の「これに意味があるんだろうか」、「この価値は何だろうか」ということを見つめるということは、厳しい作業です。

ある時には、自分がずっとやってきた仕事が、ある意味優先順位が低いということを自分で自分に突きつけることになると思います。

でも今まさに、その作業を会社全体で続けているのだと思います。ただ、やはり簡単なことではありません。自分の仕事が「優先順位が低い」、「これに価値はないんじゃないか」と思うことはそんなに簡単なことじゃない。

だから、皆で工夫をする。一歩、(踏み出す)勇気を持つ。それは我々も一緒です。コミュニケーションを尽くすということでしか、先に進めないと思っています。

今日のこの場も、その一歩を今踏み出せない人も、踏み出した人も、次の一歩を踏み出すためのきっかけ、コミュニケーション、勇気をもらえる場にしたいと思います。

5月から山本(正裕)前(総務・人事)本部長が、トヨタエンタプライズに出向*1して、本当にアドミ*2の現場、第一線で変革をやろうともがいています。
*1トヨタは5月1日付人事において、山本正裕 総務・人事本部長のトヨタエンタプライズに出向、後任に大野芳徳の就任を発表している。
*2アドミニストレーション。いわゆる“管理部門”。

こういう大きな動きもあります。我々も負けないようにやりたいと思います。今日は職場の状況を伺いながら、いただいたことにしっかり返す、会話をする場にしていきたいと思います。

ここから議論は、さらに具体的な事例を伴って進んでいく。

挽回生産に備えを

組合からは、製造や保全での垣根を越えた連携、柔軟なシフト管理によって残業や休日出勤の削減、設備の突発的な修理の未然防止ができてきた事例を報告。

物流の現場では、輸送会社の苦労ややりがい、仕事へのプライドを知るためにキャリアカーに同乗。ドライバーの隣で過ごすことで、机上だけでは分からなかった改善への一歩を踏み出したというケースもあった。

飯田智士 副委員長は、こうした生産性向上への手段が目的化しないよう、各職場に入り込んで真意を伝えていくとした。一方で、中東情勢の影響などでつくりたくてもつくれない状況も発生しているという。予測される挽回生産に向けては、次のように話した。

飯田 副委員長

お待ちいただいているお客様のために、1日でも早く1台でも多くお届けしたいという気持ちは組合も同じですので、挽回生産が来るときには、最大限取り組んでまいりたいと思っております。

こうした(中東の)状況を踏まえますと、過去の東日本大震災やコロナでの対応と同様に、有事の際の対応として、製造現場における生産計画上の残業休出の上限を超える特例の対応などに応じていきたいと考えています。

ただし、挽回生産については、物流や部品関係各社の皆様並びに社内の組合員の皆の安全と健康を最優先させていただいて、各工場ラインで実施可能な具体的な挽回方法を労使で一緒に考え、できる最大限の対応をとってまいりたいと思っております。

混迷する中東情勢の影響でつくりたくてもつくれない、その悔しい心中を伊村隆博 生産本部長が推し量った。挽回生産の際には、仕入れ先や物流、販売など全ての領域で対応できるかを見極めていくとし「年間目標の計画台数に対してはやり切りたい」と決意を示した。

また、宮崎洋一 副社長は有事への備えの重要性を説いた。

宮崎 副社長

年間の(生産)計画を組んだときは、みんなが頑張って巡航速度で行ける前提で組まれていると思います。

ところが、何か変化点が起きて、それでも年間(計画)を維持しようとすると、どこかの月ではピークを上に上げなきゃいけなくなる。それをどこまでみんなで上げていけるかということになってくるんだろうなと思っています。

そうすると、物流や仕入先さんがどこまで頑張っていただけるのかということがまず出てきますので、自分たちがやらなければいけないことは、言っていただいたように、設備を止めないこと。設備を止めて、自分たちで後々の負荷を上げない。だから今足元から頑張るということは必要だと思います。

ただ、それ(有事)が起こったときにどこまでやれるか。モータースポーツに例えると、あるところを越えようとすると、どこかがダメになって部品が壊れる。それを直すと次に別のところがダメージを受けて、部品が壊れて改善ポイントが見えてくる。これを繰り返していくしかないのかなと思っています。その部分をぜひ皆さんに協力いただきたいなと思います。

会社が甘えてはいけないのは、それに頼るのではなくて、必要があったら必要な投資はやる。近社長が言っている通り、ブレーキを踏むところは踏むけれども、そのためにもアクセルもちゃんと踏むところは踏みますよということ。これを皆さんとコミュニケーションさせていただきたいなと思っています。

特に中東問題の影響で申し上げると、今ホルムズ(海峡)の中にクルマの船が入っていけないので、(南アフリカの)喜望峰回りでなければならなくなっています。船には限りがあるのでリードタイムが倍になっています。

倍になった分だけ、どうしても生産を落とさないと、ピッチが合わない。中東の皆さんの需要は強い状態で待っていただいています。

これは変化点として予測ができる需要だと思います。今はつくれていないが、どこかで山が来る。問題が解決されたら、実需が来ますから、我々としては皆さんと一緒に「どんな変化が来るか、それに際してどういう構えや備えをしていこうか」という会話を今から始めさせていただきたいと思っています。

ただ、皆さんが言ってくれた通り、安全、健康、これをベースにしながら会話をさせていただきたいと思います。

ちなみに、中東情勢への対応については、この労使懇の終盤で、熊倉和生 調達本部長が、次のような話をしている。

熊倉本部長

ものすごく広いサプライチェーンと、ものすごく深い品目の中で、いろいろな部署の方々が力を合わせて対応してくれています。

我々は調達ですが、技術部の皆さんは代替製品でどう変えられるか技術的な検討をしてくれている。生産はどう生産をすればいいか、工場で(石油化学製品を)使っている皆さんも、どうすれば少しでも使用量を減らせるか。営業は量産との関係の中で補給品の確保をどう連携してやるか。

(誰かの指示のもとではなく)チームが自然にできあがって対応してくれている。「この日にうちの生産計画を決めるから、そこに向かってみんなでやっていこう」と。

おかげでまだ生産を止めるような状況には至っていません。そういう活動が自然に進んでいることは大変ありがたいなと思っています。

東日本大震災やコロナ禍の時もそうでした。半導体供給不足の時もそうでしたが、大きな危機があると自然に、湧き上がるように組織ができあがって、みんなで(対応)できる。

サプライチェーンは調達部門だけで守っているわけではなくて、みんなで守っているんだと感じます。これからも、自然に湧き上がるように他の分野でも、他の項目でも労使一緒にできるように、みんなで強くなれるように活動をしていきたいと思います。

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