生産性向上へ、今足りないものは何か? 補うために必要な行動とは? AI時代に求められるのは、現場で磨かれる人の「技」だ。
挑戦に失敗はない
生産性向上のために、第2回からさらに踏み込んで話し合った労使。現場一筋の河合満おやじが自身の経験を踏まえ、技を磨くことの大切さを伝えた。
河合おやじ
全体の取り組みとしては、AIの話も出ました。これは働き方を変え、より生産性を上げる、あくまでも手段です。
大切なのは、自ら技を磨き、550万人の仲間と共に、良品廉価のクルマをつくる。これに生かすことです。
そして、お客様のもとにしっかり届ける。誰かに言われたからやるのではなく、自らいろいろなことに対してチャレンジしていただきたいと思います。
私の会社経験の話を少しさせていただくと、63年前に入社しときには、本社と元町しか(工場が)ない。いつ潰れるか分からないような会社でした。若いときは本当に苦しくて、上司たちの必死な顔を見て、言われたわけではないけれど、潰れるんじゃないかと感じるぐらい大変なときがずっとありました。
鍛造一筋。現場でやっていたけれど、私は実は小学校も中学校も、勉強が大嫌いな人間でした。
けれど、この(トヨタで働いた)間のことを考えると、一生挑戦してきたし、一生勉強してきたなと思いました。
鍛造は、1,200℃に真っ赤にしたやつをプレス型で打つ。これは本当に単純な作業です。
でも、その過程では不良が出たり故障したり。なぜ不良が出るのか、なぜ故障が出るのか、対策して、再発防止につなげ、やれやれ一服したら、今度は素材、型費、工数こういったものが低減できないか。原価低減を徹底的にやってきました。
当時はとにかく「金を使うより知恵を使え」と口酸っぱく言われた覚えがあります。
新しい製品がどんどん出れば出るほど、難しくなるし、また葛藤です。工法もどんどん進化する。
日々挑戦をしてきました。そうすることで自分の技も身に付いたし、何よりも達成感や満足感(があった)。そういうときに、自分はこれができた、成長できたなと感じました。
私は「挑戦に失敗はない」と、いつも言っています。やったことがないことに挑戦するんだから、失敗して当然。
失敗じゃなくて課題が見つかる。その課題にまた挑戦すればいいじゃないか。そんな繰り返しをずっとやってきたなと思い、お話しさせていただきました。
一人ひとりが、自らいろいろなことに挑戦する。挑戦して育つ。(トヨタは)そういうありがたい会社です。
遠慮せず、すべての人が、そういう挑戦をして、満足感や達成感を得て、そこから仕事のやりがい、楽しさを身に付けてほしいなと思います。
議論を終えるにあたり、鬼頭委員長がこれまでに感じたこと、要求に込めた想いを語った。
鬼頭委員長
全社一丸となって、1日でも早く、1台でも多く、良品廉価なクルマをお客様にお届けしていく。
そのためにそれぞれの機能領域で何をやり、何をやめていくのか。こうしたことが、本日の議論を通じて認識を合わせることができたと思っています。
会社の皆さんに思い切っていろいろな発言をしていただきました。本当にありがとうございました。
この議論で決めたアクションをここだけのものにするのではなくて、しっかりと成果につなげていけるよう、それぞれの職場で速やかに行動に移していきたいと思います。
また、これまでの議論を通じて、我々の競争力の源泉は、一人ひとりの考える力、技、それと同時に、今日の議論で一番私が感じたのは、やはり全員が一丸となって取り組んでいけるトヨタらしいチームワークだと、本当に心の底から思いました。
圧倒的な人の数やスピードで勝る競争相手に打ち勝つためには、抜本的に従来のやり方を見直していく。
この必要性は十分に理解していますが、新しく何か特別なことをやるということではなく、領域を超えて現場に足を運ぶ。そして自ら技を鍛える。そして仲間とともに努力をしていく。
こうした、我々が先人から受け継いできた原点に戻って、一人ひとり、またそれぞれの職場が考えるトヨタらしさというものを軸にして、みんなで力を合わせて行動していくということが何よりも大切だと思います。
働く人、つくるものが変わっていく。AIが進展する。そんななかでも、それぞれが考えるトヨタらしさを武器にして、意志と情熱を持って仲間とともに、しっかりと前に進んでいきたいと思います。
最後に、本年の要求について申し上げたいと思います。本年の要求の根底にあるのは、決して現状に甘んじることなく、自らを変えていく。自ら進化をし続けていくという我々の強い意志であります。
一人ひとりの行動を自律的にしっかりと動いて、チームで成果を出す。一人ひとりの頑張りを絶対に無駄にしない。
そのためなら、これまでの制度やルールも聖域なく見直していくという覚悟、そして自動車産業で働く550万人の仲間の未来を守り抜いて、その先にあるお客様の笑顔に必ずつなげていくんだという6万9,000組合員の強い決意であります。
会社側の皆さんにおかれましては、こうした我々の強い想いを真正面から受け止めていただいて、次回、回答していただきますようお願いいたします。
続いて佐藤社長が総括した。