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AI時代だからこそ求められるのは人の「技」 全社一丸で覚悟を行動へ

2026.03.12

生産性向上へ、今足りないものは何か? 補うために必要な行動とは? AI時代に求められるのは、現場で磨かれる人の「技」だ。

3月11日、愛知県豊田市のトヨタ自動車本社で第3回の労使協議会(労使協)が開かれた。

前回は「マイナスからゼロの状態に戻すということにとどまらず、プラスに持っていくことまで必要なのではないか」、「何かを始めるのであれば、やめることもセットでなければならない」といった意見があった。

佐藤恒治 社長は第2回を終えるにあたり「『会社が』とか『組合が』とか言っていないで、『私たちは』とチームになって、何をやるかを決めていきたい。一緒に動こうと思います。ぜひ次回、どうするかという話し合いをさせていただきたいと思います。次回の話し合いが、ものすごく大きな意味を持っていると思います」と語っていた。

「会社は従業員の幸せを願い、従業員は会社の繁栄を願う」。これは、これまで労使協のなかでも幾度となく登場した労使共通の基盤だ。

難局を乗り越えていくために、全社一丸となる必要がある。だが、前回の労使協を受けて、冒頭に組合の鬼頭圭介 委員長が報告したのは「会社がバラバラになっているのではないか」という組合員の不安の声だった。

“大きな意味を持つ”第3回の話し合いをお伝えする。

会社は一枚岩になれているのか

鬼頭委員長

前回の労使協を終え、職場の最前線で頑張っている組合員の受け止めを聞くなかで、どうしても見過ごすことができない声が多数寄せられています。

それは、「会社がまとまっておらず、バラバラではないのか」という声、そして「これから労使で力を合わせて、一枚岩となって本当に行動していけるのだろうか」という、組合員の率直な不安の声であります。

労使宣言以来、私たちトヨタ労使は、相互信頼を基盤として、数々の困難を乗り越えてまいりました。

これから訪れる厳しい外部環境を乗り越えていくためには、今まで以上に我々労使がしっかりと向き合って、話し合って前に進んでいくことが必要ではないかと考えております。

会社・組合の垣根を越えて、私たちが今取り組むべきは、「1日でも早く、1台でも多く良品廉価のクルマをお客様にお届けすること」です。

前回の佐藤社長と同様に、鬼頭委員長も「私たち」を強調する。だがそれは、それだけ前回の話し合いがかみ合っていなかったということでもある。

近健太 執行役員は、鬼頭委員長の言葉を繰り返す形で頭を下げた。

近執行役員

最初に「会社側が一枚岩になれていないのではないか」という厳しいお言葉をいただきましたが、それについては本当に申し訳ありません。私も、多分ここにいるメンバーみんなも、同じことを感じています。

「1日でも早く、1台でも多く、良品廉価なクルマをお客様にお届けする」。今回は、いま委員長がおっしゃった、そのことに集中して議論をできればと思います。

生産部門に関しては、国内の多くの販売店で受注制限を抱えている現実に向き合おうとしてきたと思います。

それが「いろいろな組合からの提案」「当たり前のことを変える」「一律のルールをやめる」ということに結びついたと思っています。

今の受注制限は、異常事態。危機的事態だと思います。

生産現場については、それを現実と受け止めて、逃げずに、応えようとしている。この部分に関しては、会社は一体になれているのではないかと感じています。

一方、事務、技術はどうか。良品廉価なクルマづくり、競争力のあるクルマづくり、生産性の高い職場、こういうことに本当に向き合えているでしょうか。

事務系の生産性、これはもう言われて久しいです。そこにAIという大きな流れが、現実のものになっています。

我々は、そこから目をそらしていないですか? そらしているから一枚岩になれていないのではないでしょうか? そういうことに少しずつ気づいてきました。

今日、会社のメンバーも、今の委員長の言葉を受けて、「良品廉価」「1日でも、1台でも多く」ということに正面から想いをお伝えしたいと思います。

現実から目をそらさない。本当に現実は厳しいと思います。そこから目をそらさない。それは、労も使もない。会社も組合もない。我々は厳しい現実から逃げない。

それが、550万人に対して誠実にやるということだと思いますので、今日はそういう議論をしていきたいと思います。

ここから労使の議論はさらに深まっていく。

組合が訴えた悔しさ、会社が示した覚悟

鬼頭委員長と近執行役員でそろえた「1日でも早く、1台でも多く良品廉価のクルマをお客様にお届けする」という目線について、組合からはこんな想いが語られた。

車両技術支部

L/O(ラインオフ)遅れが発生すると、仕入れ先様、販売店先様、そして何よりお客様にものすごい影響が出るということを、我々エンジニアは自分の身を削る想いで痛感しています。

ただ、今職場の実態として、目の前のことでいっぱいいっぱいだという実情もあり、ここのギャップが本当に何よりもつらく、悔しいという想いです。

L/O遅れゼロを絶対に変えていかなければいけないと思ったとき、もっと力強く動いていくことが必要だと感じています。

職場のみんなと何がエンジニアの原動力になるのかというのを少し話してきました。その結果、自分たちの努力や汗が商品としてしっかりと形になって、これがしっかりとお客様に届けられて、そのうえでお客様から笑顔をいただける。

これこそが本当にエンジニアの幸せです。この幸せを掴み取りにいく情熱こそが、動く原動力だと確信しています。

他方で、必要なレベルに届かなかったとき、結果お客様に届けられなかったとき、この悔しさも本当に計り知れないと思っています。

水素・CN・パワートレーン支部

業務を振り返ってみると、私自身もそうですけれども、図面の線一本にこだわっていれば、無くせたミスだったり、仕入れ先様の皆さんとあと一つ話していれば、無くせたやり直し、もう一歩現場に踏み込んでいればと思える点が確かにあります。

こういったできていなかった事実にしっかり私たちはこれから向き合って受け止めていかなければいけない。

それをやっていくために、仕入れ先様、前後工程で知見のある先人の皆さんのところに、泥臭く貪欲に飛び込んでいって、技術を改めて磨いていく。

高め合った先で、私たちはまずラインオフ遅れゼロ。これを絶対に目指していく、達成していく。

両支部が示した「絶対にラインオフ遅れをゼロにする」という決意。その裏には、開発や認証遅れでお客様のもとにクルマを届けられなかった悔しさがある。

そんな想いをしないために、さらに一人ひとりが成長していくために、具体的にどんなアクションが必要で、何をやめるのか? 組合の想いに会社側が応えた。

クルマ開発センターの石島崇弘センター長は、まず「(ラインオフの遅れなどにより)ステークホルダーを含めるとたくさんの人の笑顔を奪ってしまった。我々も悔しい」と想いを共有。そのうえで開発現場の負荷軽減へ3つの取り組みを挙げた。

  1. TS(トヨタスタンダード:トヨタが定めた設計基準)見直し。パワートレーンや電子技術にも展開する。
  2. ベテランやOBの知見を得ながら、危険予知とプランBを考えることを鍛える。また道場も開き、若手も学ぶ機会をつくる。
  3. 作図回数の柔軟な変更。現状一律で3回書いている図面に対して、部品難易度に応じて回数を変える。

特にTS見直しについて石島センター長は、過去の知見の集大成であることから「本当に不安、勇気がいる。それでも見直していかないと未来はない」と覚悟をにじませた。

組合も「勇気を持って声を上げていく」「一過性のやめかえ活動*として終わるのではなく、当たり前を疑って風土化するまでやり切る」と応じた。
*やめよう・かえよう・はじめよう運動。仕事をやめる・変える活動。

パワートレーンカンパニーの上原隆史プレジデントは「パワートレーンと電子プラットフォームの組み合わせ種類*の削減」と「仕入先に委託したままで、社内に継承されていない技術の伝承」を宣言。
*2009年では5種類だった組み合わせは、現在18種類まで増加している。複雑な開発をシンプルにすることで経営効率の向上を狙う。

皿田明弘デジタルソフト開発センター長も「制御の種類の3割減」を誓ったほか、仕様書についても見直すとした。

皿田センター長

仕様書は仕入れ先様に仕事をしていただく、大事なアウトプットになります。

しかしながら、現状は情報が足りなかったり、問い合わせが多くなったり、不備を補う負担を仕入れ先様にさせてしまっている。

これが工数の3割を浪費しているところもある。こんなやり方はグローバルでは通用しないです。

この仕様書のあり方を、全面的に見直します。仕入れ先様に必要な情報を、現場に赴いて、汗かいて集め、それを仕様書に反映する。そして仕入れ先様の忖度の作業、そういったものをゼロにします。

仕様削減については、日頃販売店やお客様に近い位置にいる日本事業本部の赤尾克己 副本部長が「営業サイドから、お客様に選択いただける仕様を見直し、川上の皆さんに提案していきたい」とコメント。メーカーだけで判断するのではなく販売店も巻き込んで検討していくとした。

次々にあがった会社からの踏み込んだ提案。組合は「背中を押してもらったからこそ、あとは自分たちが主体的に動いていくだけ」と受け止めた。

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