「継承すべきものは何か」新体制で本音の議論

2023.02.22

モビリティ・カンパニーへの変革は、労使双方で継承すべきものを理解してこそ。第1回の話し合いでは、豊田章男社長の13年間を振り返った。

【労使関係】データで示された変化とは

ここまでは「商品軸経営」「地域軸経営」についての議論。後半は、労使関係の変化についての話し合いとなった。

まずは「成長と分配の実績」「働く人の多様性の変化」などが、データを示しながら紹介される。

会社・崇徳 総務・人事本部長

自動車産業はみんなに支えられている産業。トヨタだけが恩恵を受けるのではなく、雇用・処遇の面でみんなと分配をしてきたファクトを紹介します。

この13年間で約5万人、連結の従業員数が増えています。

次に、消費者物価の推移と自動車産業、そしてトヨタの昇給率です。

雇用だけではなく、処遇でも、恩恵を享受してきた13年間で、安定的に、継続して昇給を実現できました。そして、雇用を失わず、逆に増やし続けてきたのがポイントです。

社員だけではなく、期間従業員、パートタイマーの皆さんとともに処遇改善。そして、期間従業員から社員への登用も推し進めてきた期間でした。

ここからは分配の話ではなく、トヨタの経営について。

即断・即決・即実行する上で、意思決定の体制がどうだったかを見ると、2019年、幹部職制度を導入しました。

ポイントは「肩書」や「資格」ではなく、「役割」で仕事をしていくことです。上の階層から意識を変えていく取り組みをやってきました。

次に取り巻く環境の変化です。「いろいろな人がいていい」ということです。

昔のトヨタだと、事務職は「大卒」「男性」「日本人」が多かったと思います。ですが、今、キャリア採用、中途の方の比率も、さらに、女性も相当増えています。

多様なメンバー、一人ひとりの力を最大限引き出すための取り組みについては来週以降の話し合いでも、徹底的に議論していくという。

この後、組合から、労使関係での具体的な変化について言及された。

組合

2019年の労使協議会を起点に変わってきたと受け止めています。

2009年をご覧いただくと、労使が向き合い、「対立ありきの関係」でしたが、昨今は三角形、円形と形を変えながら、「互いを尊重した労使の話し合い」に進化してきました。

本日も多くの方がリモートで視聴いただいています。閉じた会議室での会話から、開かれた会話になってきています。

こういった会話は、労使協議会だけではなく、各職場、各支部のあらゆる層で確実に広がってきており、年間を通じた話し合いになってきています。

話し合いの回数も、大きく増えています。組合員の声に丁寧に向き合ってくれる職場マネジメントの方がいるからこそ、積み重ねができてきています。決して当たり前のことではないと思っています。

同じく組合の光田聡志書記長は、「運命共同体」という言葉を用いてこう続ける。

組合・光田書記長

労使は互いに立場が違いますが、「運命共同体」だということを決して忘れず、本音で話し合いをして、職場や会社を一緒に良くしていく。それは何も「自分のためにやる」ということではなく、お客様、社会、仲間のためにやるものだと思います。

今日も、この話し合いがトヨタイムズで社内・世間に対してオープンになっており、ごまかしがききません。宮崎次期副社長も指摘のとおり、自分たちだけの理屈ではなく、社会から見た視点、産業の視点も増えてきていると思います。

この後、今の“労使が運命共同体になれている状態”が、たり前だと思って現状にあぐらをかいてしまうと、簡単に後戻りする懸念も話され、改めて社内のあらゆる階層で、本音で話し合うことの重要性が示された。

【労使関係】共存共栄へ、今後必要なこと

次に口を開いたのは、サプライチェーン全体に、労使の好影響を広めようと取り組む、全トヨタ労連(以後、全ト)の星野義昌副会長だ。トヨタ外に波及した変化について、こう話した。

全ト・星野副会長

全トでも「自動車産業は多くの仲間が支え合う産業」という認識を強く持ち、年間を通じて、生産追従や適正取引等の困りごとを議論し、産業の仲間に寄り添う活動を積極的に発信してきました。

労使の立場を超えるサプライチェーンの課題に取り組むことは、全トでも経験がなく、はじめはどこまで本音で対応できるのか葛藤やためらいもありました。

結果として、この春、製造系の約9割の加盟組合が、労使の話し合いに向け、スタートラインに立ってくれています。

一方で、仕入先のなかには、資材エネルギー費の高騰や、部品供給制約などで、厳しい環境に悩んでいる声が多いことも明かされた。だからこそ、550万人の仲間への貢献を目指す労使の話し合いは、ますます重要になっているという。

ここで会社からは、仕入先との共存共栄の取り組みが紹介された。

会社・熊倉和生 調達本部長

我々は「下請け」という言葉を使わずに、仕入先様は「パートナー」だと考えています。

資材・エネルギーの高騰も続いており、トヨタだけではなく、2次、3次、4次とずっと続く仕入先様、双方にとって大変厳しい環境だと認識しています。

仕入先様との取引価格について、23年の上期はエネルギーの高騰分を受け、引き続き、トヨタで負担させていただくと、いつもより早く宣言しました。

仕入先様と一緒になって取り組む原価低減活動は、競争力向上の源泉であり、持続的な成長、持続的な雇用・賃上げのためには必要な取り組みです。

今回、価格改定を最小限に留めて生まれた余力は、ぜひ賃上げや設備投資など、未来への投資の原資として活用いただきたいとお伝えしている。

また、仕入先様と一緒に取り組んでいる原価低減分の価格反映についても、下請法適用会社についてはゼロ。それから他の会社も、最低限に留めるということを表明し、コミュニケーションさせていただいています。

(こういった取り組みが)サプライチェーンのTierの深いところまで染み渡るように、Tier1の仕入先様だけではなく、(仕入先は)6万社と申し上げていますが、全部に行き渡るような活動を諦めずにやろうと(考えています)。

これもずっと(豊田社長が)ってきたこと。分とはまだ言えませんが、続けていきたいと思っています。

組合からも同じ共存共栄といった観点での発言があり、あまり知られていない取り組みも紹介された。

組合・平野康祐 副委員長

我々(トヨタ)だけでなく、仕入先の皆さまも一緒に体質を強靭にしていくことが何より共存共栄という観点でも必要だと思います。

例えば、工場とか職場で不要になった遊休設備を、非常に安価で仕入先の皆さまにお渡しする取り組みや、トヨタの販売店で不要になった設備を安価に専業の整備業者様にお渡しするような取り組みがすでに始まっています。

目立たないけれど、誰かのためになる。組合のない7割の仲間のために必ず寄与していくと思うので、こうした取り組みを少しでも後押しできる活動を続けていきたいと思います。

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