"延命"ではなく"新生" 脱炭素を可能にする3社のエンジン開発

2024.05.30

SUBARU、マツダ、トヨタの技術トップが次世代エンジンの開発状況を説明。3社の「らしさ」を磨いてできる新技術を詳報する。

トヨタ 1.5L・2.0L直列4気筒エンジン

「この新しいエンジンは、従来、トヨタが使っていたエンジンと、コンセプトはまったく違います。『エンジンリボーン』という言葉にその意味が込められていると思っています」

トヨタ取締役・副社長 中嶋裕樹CTO

こう意気込む中嶋裕樹CTOが披露したのは、電動化を前提とした⼩型・⾼効率・⾼出⼒な排気量1.5L2.0Lの直列4気筒エンジン。

まず、1.5Lのエンジンは、自然吸気のモデルとターボチャージャー(過給機)を備えたモデルの2種類を用意。

自然吸気どうしでの比較では、既存の1.5L 3気筒エンジンに対して、体積、全⾼をそれぞれ10%低減させる。

気筒を1つ増やすことで、高さを抑えることができ、エンジン自体の小型化にもつなげる。

今後、欧米で導入を予定する厳しい排気規制を、既存のエンジンでクリアするためには、出力を抑えたり、排ガスを浄化するための触媒に高いコストをかけなくてはならない。

これに対し、新エンジンでは、燃焼技術を改善して出力を維持。さらに、小型化によってボンネットを低く抑え空気抵抗を減らすことで、セダンクラスで12%の燃費改善が見込まれる。

さらに、1.5Lのターボエンジンでは、重量物をけん引するような車両に使われる2.5L自然吸気エンジンの領域もカバー。

既存エンジンでは、30%ほど出力を抑えなければならないレベルの規制に、出力を落とさず対応。かつ、体積は20%、全⾼は15%低減することができる。

もう一つ、2.0Lのターボエンジンは、既存の2.4Lターボエンジンとの比較で、体積、全高ともに10%の低減を見込む。

それでいて、出力は大幅に向上。トラックなどの重量車からスポーツカーまで、高出力が必要な車両に幅広く対応するという。

「高効率・小型化で、出力の高いエンジンを、電動ユニットと組み合わせることによって、BEVに対して、よりアフォーダブル(手ごろ)に提供できる可能性が広がってきたと思います」

BEVも本気、エンジンも本気。中嶋副社長は改めてエンジンの持つ可能性に期待を示した。

3社の“らしさ”で自動車産業の未来をつくる

「カーボンニュートラルに向けた現実的な手段として、エンジンにはまだまだ役割がある! だから、エンジン技術にもっと磨きをかけよう! そういうプロジェクトを立ち上げよう!」

撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

今年1月、東京オートサロンの壇上でモリゾウこと豊田章男会長が発信したメッセージに共感し、呼応した3社。

今回、ともに意志を持ってエンジンの開発を続けると発表することで、すそ野の広い自動車産業のサプライチェーン(供給網)に向けて、「内燃機関の未来を一緒につくりましょう」(佐藤恒治社長)という宣言をした。

イベントの冒頭では、3社が開発してきたエンジンの歴史をまとめた動画が流れた。それは、マスキー法やオイルショックなど、エンジン存続の危機を、仕入先とともに技術の力で乗り越え、世界に誇る強みに変えてきた挑戦の歴史そのものだった。

カーボンニュートラルに向け、改めて、変革を迎えているエンジン。各社、切磋琢磨して、自社にしかない強みを突き詰めながら、日本の自動車産業の未来を「共創」していく。

RECOMMEND