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"延命"ではなく"新生" 脱炭素を可能にする3社のエンジン開発

2024.05.30

SUBARU、マツダ、トヨタの技術トップが次世代エンジンの開発状況を説明。3社の「らしさ」を磨いてできる新技術を詳報する。

マツダ ロータリーEVシステムコンセプト

「ロータリーエンジンは、マツダのユニークな内燃機関です。しかし、その構造的な特徴ゆえに、環境規制に対して、何度も厳しい状況に直面してきました。市場から姿を消したこともあります。しかし、今、このユニークさを、逆にアドバンテージに転じさせるときだと考えています」

マツダ取締役 専務執行役員 廣瀬一郎CTO

マツダの廣瀬一郎CTOは、カーボンニュートラル社会の実現へ、同社の代名詞であるロータリーエンジンが果たす役割が広がっていると強調した。

マツダが発表したのは、1ローター、2ローターの「ロータリーEVシステムコンセプト」。小型、軽量、高出力を強みとするロータリーエンジンの特徴を生かした電動パワートレーンだ。

1ローターのモデル(横置き * )は電動ユニットを組み合わせても、バッテリーEVBEV)専用に設計されたモータールームにそのまま載るコンパクト性を実現。

2ローターのモデル(縦置き * )は左右のタイヤの上端よりも低い位置に収まるほど、革新的な低重心。廣瀬CTOは「従来のエンジン車の常識を変えるシルエットが実現できる」と胸を張る。

*横置き・縦置き:横置きエンジンは、エンジンの回転軸となるクランクシャフトが進行方向に対して、横向きに搭載されているエンジン。前輪駆動車に多くみられ、室内空間を広くできる。縦置きエンジンは、進行方向に対して平行に搭載されているエンジン。エンジンの動力を車両後方に伝えやすく、後輪駆動車に多くみられる。

また、プレゼンテーションの中で、時間を割いて説明されたのが、ロータリーエンジンとカーボンニュートラル燃料の相性の良さだった。

一口にカーボンニュートラル燃料と言っても、その種類、特性はさまざま。燃えにくい燃料もあれば、非常に燃えやすい燃料もある。燃料自体に潤滑性のあるものもあれば、潤滑しにくいアルコール系の燃料もある。

ロータリーエンジンは、他のエンジンとは異なるユニークな回転をすることから、燃焼も特徴的。

燃焼室内で一方向に強い流れが起き、燃料と空気がかき混ぜられるので、燃えにくい燃料もしっかりと燃やせる。

一方で、エンジン内の燃焼室と空気を吸い込む吸気室が分かれており、吸気室内が高温になりにくいため、異常に燃えやすい燃料の意図せぬ燃焼を抑制することもできる。

さらに、ロータリーエンジンには構造上、バルブがないので、燃料の潤滑性の影響を受けにくいという。

会見の中で、マツダの毛籠勝弘社長が「(ロータリーエンジンは)燃料に対する“雑食性”がある」と発言した背景にはこうしたロータリーの特徴がある。

最大の課題は、厳格化が進む排出ガス規制への適合だ。欧州では、2028年以降に「ユーロ7」が導入予定であるなど、欧米では、厳しい法規制が待ち受けている。

こうしたハードルに対して、エンジンの得意領域では、選択的に発電して電力を蓄えたり、排ガスが出やすいエンジンの始動直後には、エンジン本体を電力で温めておくなど、排ガスのクリーン化を促進する。

「従来の内燃車のシルエットを超える商品の選択肢が広がって、お客さまに喜んで選択をいただくことで、カーボンニュートラルという社会・環境貢献への参画になる。BEVの普及と両輪で、みんなでカーボンニュートラル化を進めていける」(廣瀬CTO

ロータリーエンジンは、電動化やカーボンニュートラル燃料への対応といった新たな挑戦を通じ、改めて、選択肢の一つとしての地位を築こうとしている。

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