「基幹産業」として、これからも日本に貢献するために。体制発表の会見で示された知られざる数字とは。
11月18日に、オンラインで開催された日本自動車工業会(自工会)の記者会見。主な内容は、2022年5月以降の役員体制についてだったが、その後半、自動車産業が日本経済に与える影響について語られるシーンがあった。説明された数字に注目しながら記事をお読みいただきたい。
日本経済に、投資と分配を続けてきた知られざる数字
記者会見の終盤、「所得の再分配が検討されている岸田内閣への期待は」という質問が豊田会長に投げかけられた。
豊田会長
先日、総理から「成長と分配の好循環」が発表されましたが、これまでも自動車産業は従業員の賃上げを継続的に着実に実施してきております。コロナ前5年間の平均賃上げ率は2.47%と全業種でトップでございます。昨年のコロナ禍においても日本全体では雇用が88万人大きく減少しているなか、自動車産業は雇用を維持し、かつ12万人増やしている状況でございます。これを平均年収500万円とすると、家計にプラス6,000億円のお金が回っていることとご理解いただけると思います。
また、自動車産業はすそ野が広く、経済波及効果も大きな産業です。自動車関連OEMの利益は仕入先、中小企業にも着実に波及しております。リーマンショック後、過去12年の自動車OEMの国内の売上を振り返りますと330兆円、約75%がサプライヤー様からの購入であることを考えると、約250兆円がサプライヤー様に回っているのではないかと思います。
また、リーマンショック前の07年度を100とし、コロナ前、18年度の営業利益、賃金の上昇率を比較すると、自動車業界の営業利益は「大企業95」に対して、「中小企業144」。賃金は「大企業112」に対して「中小企業126」と、(自動車業界では)いずれも中小企業のほうが上昇率は高く、広く分配、波及していることが分かると思います。
このような継続的な取り組みが、政府や世の中の皆さまに正しく伝わっていないと感じることも多く、大変残念に思っております。雇用を維持しながら経済を回している自動車産業の取り組みを正しく理解いただけると大変ありがたいと思いますし、来年の春闘のときも、単年の満額回答有無といった見方だけにとらえず、中長期的な推移でも着目いただきたいと思います。
とかく、以前の政権から自動車産業は継続的にやっていることに対し、政権交代があると過去のことはなかったのごとく改めて指示が来ます。是非とも継続的に真面目にやっている自動車産業を正しく評価いただき、応援いただきたいと思っております。
成長への貢献については、19年度の自工会各社の設備投資や研究開発費の合計は6.2兆円と、日本の経済社会活性化につながる巨額の投資を推進しております。
自動車は、経済への影響でもリーディング産業、加えてカーボンニュートラルについても是非とも自動車をペースメーカーに実現への道筋をお願いしたいと思っております。
自動車産業のチカラを、日本経済の活力に
これらの数字は、世間一般ではあまり知られていないかもしれない。しかし改めて「見える化」されると、日本の基幹産業たる所以がよくわかり、自動車産業がこれまでも、これからも必要とされる産業であろうとする意志が強く感じられる会見であった。