販売店や仕入先で働く人たちへも還元されるよう「人への投資」を増やすというトヨタ。今回の決断に込められた想いとは?
トヨタ自動車は11月6日、2025年3月期 第2四半期決算を発表した。
今決算のポイントの一つが、後半期へ「人への投資」「成長領域への投資」を積み増したことだ。期初に掲げていた7,000億円から8,300億円へと増額。
「人への投資」自体は、毎年、労使協議会で議論されるテーマだが、今年は販売店や仕入先で働く人たちの労務費、人材育成、働く環境の改善にも充ててもらえるようにと、会社の枠を越えた話し合いなどを進めてきた。
今回は、決して増益の決算ではなかった。後半期の積み増しを控えてもおかしくはない。しかし、Chief Financial Officerの宮崎洋一 副社長は「『人への投資』の積み増しに迷いはありませんでした」とキッパリ。
今回の決断にどんな想いが込められているのか? 決算説明会での記者と登壇者のやり取りを紹介する。
「積み増し」は本音が聞けたから
――厳しい決算(営業利益 前年同期比96%)となった中、このタイミングで「人への投資」を積み増す狙いは?
山本正裕 経理本部長
決して厳しい決算とは思っていません。37万人の仲間たち(従業員)がクルマをつくれない中でも、現場で困りごとがないか、何を改善していこうかと話し合って、努力を積み重ねてきました。
毎日毎日、一歩でも前進するということでやってきた結果が、前半期の(営業利益)2兆4,642億円です。
こういう言い方がいいのかわかりませんが、2兆円を超える実績を出したのは、去年と今年だけです。
37万人の従業員とステークホルダーの皆さんに支えていただいたからだと思っております。
マネジメントが会議室にいて資料を待つのではなく、現場に行って、困りごとを聞くことで、やっと声が聞けるようになり、「人への投資」を(具体的に)進めていけるようになりました。
そして、即断即決で(困りごとを)解決しようという動きが始まっています。
動き始めると、期初の数字よりも、積み増しが出てきます。活動が動いているからこそ、人への投資がプラスになっているとご理解いただければと思います。
トヨタの中だけでなく、子会社や海外の仕入先さんにも広がっています。今回わかった部分が積み増されたとご理解ください。
宮崎副社長
偉そうな言い方になってしまいますが、我々は今期だけ数字を出せばいいという想いで経営に携わってはいません。
中長期的に多くのステークホルダー、(自動車産業)550万人の皆さまを含め、いかに日本の自動車産業を発展させていくかという想いです。「人への投資」の積み増しについて、迷いはありませんでした。