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Woven City着工へ本格始動 リーダーたちが語る再編の狙い

2021.02.19

Woven City着工へ秒読み! プロジェクトを担う新会社再編の狙いをリーダーたちの証言からひも解く。

2021年1月、自動運転技術の開発や今月23日(富士山の日)に着工を予定する実証都市Woven Cityを担うトヨタの関連会社Toyota Research Institute - Advanced DevelopmentTRI-AD)が持株会社Woven Planet Holdingsと3つの事業会社(Woven CoreWoven AlphaWoven Capital)に再編され、新しいスタートを切った。

Woven Planetグループの新体制(2021年1月~)

先月29日には新会社のオープニングイベントが開かれ、各社のリーダーから会社のビジョンや各組織の役割が語られた。

イベント後の質疑応答では、各社のリーダーがそれぞれの立場や視点で質問に答え、これまでおぼろげだった新会社の実像が立体的に見えてきた。

トヨタイムズでは、質疑応答のやりとりを通じて、今回の会社再編の意義をひも解くとともに、Woven Planet Holdingsのジェームス・カフナーCEOがたびたび語ったモビリティ・ソフトウェア・プラットフォーム「Arene(アリーン)」とWoven Cityにかける想いを紹介する。

なぜ会社を再編したのか?

――再編されてすべての会社名にWovenがつく。その意図は? 分社化されて、それぞれ何が変わるのか?

カフナーCEO

これから従来のモビリティは、大きな変化や革新、変革にさらされる時代に突入していくと思います。

私たちがTRI-ADからWoven Planetグループへとモデルチェンジした根幹には、特にWoven Cityのようなプロジェクトを推進していく中で、事業のフォーカスとスピードは維持しながら、生み出す価値の規模と領域を広げていこうという意志があります。

自動運転の開発を進めてきた前身のTRI-ADが、今では街づくりまで手掛けるようになった。事業範囲を広げている状況について、カフナーCEOはトヨタの歴史を振り返って説明した。

カフナーCEO

トヨタの歴史は織機にまでさかのぼります。豊田佐吉は、お母さんがもっと効率的に布を織り、少しでも楽ができるようにと、素晴らしい織機を発明しました。「自分以外の誰かのために」。これが、トヨタが大事にしてきた精神です。

豊田喜一郎によって創業されたトヨタ自動車は、自動車だけでなく、また日本だけではなく世界のために尽力し、その技術力、イノベーション、安全性の高いモビリティで、世界をリードしてきました。

Woven Planetグループは、こうした想いや歴史を受け継いでいきます。

ソフトウェアや新技術の発展によって、Woven Cityという実証実験の場を通じて、Woven Planetグループが、豊田(章男)社長の言うように「幸せの量産」ができるよう、新しい未来を切りひらくリーダーになりたいと心から願っています。

そう述べると、カフナーCEOは再編の目的を次のようにまとめた。

カフナーCEO

組織再編の目的は、どうすれば自動車事業を超えて新しい価値や新ビジネスを創造できるか、より柔軟に考えられるようにすることでした。

これは成長に向けた強い基盤を築くために重要なことです。成長し続けながら、ベンチャー企業のようなアジリティ、スピード感と集中力を維持することは非常に難しいのです。

今回の組織再編によって、スピード感を維持しながら、事業範囲を広げ、優れた製品を通じた価値提供を一層加速していきたいと考えています。

再編で社名から「トヨタ」は外れた。しかし、トヨタ祖業の自動織機に由来する「Woven」(織り込まれた)という言葉には、トヨタの精神を引き継ぎ、「幸せの量産」をしていく決意が込められている。

カフナーCEOに続いて、各社のリーダーがそれぞれの立場で再編の目的を説明した。

Woven Planet Holdingsで事業開発・事業戦略を担当する西城洋志Vice PresidentVP)は次のように語った。

西城VP

昨年までTRI-ADは純粋な「開発受託会社」として、先進的なソフトウェアを自動車産業のためにつくってきましたが、昨年以降、Woven Cityを含め、「ビヨンド・オートモーティブ」の世界も生まれてきました

そうなると、これまでにないような柔軟な発想を促し、育てていく仕掛けが必要になります。

そのときに必要になるのが、「全体最適」と「個の最適」を両立させること。縦糸と横糸をダイナミックにマネジメントすることが重要だろうと考えました。

今回の会社構成は、それができうるレバーを用意したということであり、Woven Planet Holdingsが中長期的な(グループの)事業戦略を立て、(各事業会社)各々がミッションに向かって、最速で走っていく。このバランスが取れる構造にできたと思っています。

西城VPが言う「仕掛け」の一つが、Woven CoreWoven Alphaとあわせて今回新設されたグローバル投資ファンドWoven Capitalである。

同社は、自動運転、人工知能、機械学習、データアナリティクス、コネクティビティ、スマートシティなど、モビリティやロボティクスに関わる先進技術やサービスの分野で、幅広いパートナーに戦略的に投資を行う。

Woven Capitalがあることで、Woven Planetグループだけの力ではなく、世界中の革新的な発想や技術を持つ人々と手を取り合い、「Mobility to Love, Safety to Live」というグループのビジョンの達成に向けた取り組みを加速させることができるというのだ。

協業なのか? 内製なのか?

さらに、別の記者からは、トヨタが自動運転のソフトウェア開発の内製にこだわる理由への質問があった。

ここでいう「内製」とは、トヨタがグループや関連会社などで技術開発を完結させることを指す。

自動運転技術の開発を担うWoven Coreの2人のリーダーの回答にも、今回の再編に通じる考え方が表れていた。

――トヨタが他社との協業を求めないのはなぜか?

虫上広志President

(質問の中で、自動車会社がテクノロジーカンパニーと)一緒に自動運転に取り組むという例もありましたが、その背景にはモビリティの開発が1社だけではさばききれない規模になっている現実が挙げられると思います。

もう一つは、良いハードウェアと良いソフトウェアを組み合わせなければならないということだと思います。

トヨタには長年培ってきたハードウェアの強みがあります

ジェームス(・カフナー)からは、ソフトウェア開発において「TPS(トヨタ生産方式)」を実現する必要があると申し上げましたが、ソフトウェアの開発環境、ツールなどプラットフォームをつくり上げることで、ハードとソフトの強みを内製で担保できるのではないかと考えています。 

これが我々の戦略であり、だからこそソフトの内製化に舵を切ったとご理解いただければと思います。

鯉渕健Chairman

自動運転のすべての領域を自分たちだけでやろうとするとスピードが落ちてしまいます。

なので、最終的にコア技術として持ちたいところ、持つべきところは自分たちでやることにしました。

逆にパートナーと組むことで加速する部分もあると思います。

その中でソフトウェアの付加価値はクルマの中でも増大しており、この部分は自分たちでやるべきだろうと(考えました)。

「自分たちの将来のコアとする」という面と、「開発を速いスピードを回していく」ために、ある程度自分たちで完結させていく必要があるということで、今のような戦略になっています。

これまでの強みを活かすためにも、「自社で完結する開発」と「パートナーと手を組む開発」を戦略的にすみ分けることで、「スピード」を加速させていく。

当日のイベントでは、今年、最新の高度運転支援技術「Teammate」を搭載したモデルを市場投入することが発表された。

また、一般道での完全自動運転によるサービス提供を目指し、都内で実証実験をしている車両が近く披露される予定だという。

Woven Cityの着工も目前に迫っている。大きく動くこの2021年を迎えるにあたって、まずは体制を整えたといえる。

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