3回目の開催となった経団連「モビリティ委員会」。産業の未来をつくり出していく輪は、自動車業界の枠を超え、広がっている。
自動車産業の7課題
会合には日本自動車工業会(自工会)も参加。長田准 総合政策委員長(トヨタ自動車執行役員)は自動車産業が抱える以下の7課題を示した。
①物流・商用・移動の高付加価値化・効率化
②電動車普及のための社会基盤整備
③国産電池・半導体の国際競争力確保
④重要資源の安定調達、強靭な供給網の構築
⑤国内投資を促進する通商政策
⑥競争力あるクリーンエネルギー
⑦業界を跨いだ データ連携や部品トレサビの基盤構築
これらの課題について有馬浩二委員長(デンソー会長)は、「⾃動⾞産業以外からの発⾔も多くあり、活発な議論でした。産業政策、エネルギーの話なども出ました」と振り返った。
片山正則委員(自工会副会長・いすゞ自動車会長)は「確実に課題に対する共感が拡⼤されてきている」。日髙祥博委員(同・ヤマハ発動機社長)も「モビリティを真ん中に置いて、その流れで各業界で対応していこうと。それによって⽇本の未来を確実にしていこうといった、コンセンサスを図れた」とコメント。
3氏の言葉からも、自動車・二輪産業が中心となりつつ、解決に向けた具体的な議論がスタートしたことが感じられた。
そして、豊田委員長は、報道陣から今回の会合の手応えを問われ、このように応じた。
豊田委員長「未来づくりは、信頼と共感」
豊田委員長
⾃動⾞産業を振り返ると、⾞両⽣産による経済波及効果は53兆円。⾃動⾞部品輸出による貿易黒字は、15兆円。資源のない⽇本が、いろいろなエネルギー資源を購⼊している⾦額とほぼ同じ⾦額を稼いでいます。
そして、それらに関わる雇⽤は550万⼈。他産業やエネルギー関連を含めると、モビリティ関連産業全体では850万⼈。⽇本の製造業全体は1,000万人弱と共に未来をつくっていこうとなる。
市場が伸びるときは互いに競争し、個社を伸ばしていくということを考えていったわけですが、今⽇のモビリティ委員会でも業種を超えて皆さまが感想で⾔われたように、「個社では限界がある、もっと協調分野を広げて、業界を超えて、⼀緒に未来をつくっていく必要性がある」とコンセンサスを得たと思っています。
未来づくりというのは、信頼と共感でできるのではないか。
今⽇のモビリティ委員会で共感いただいたのは、主張は⼤事だがその中でどう協調し、⼀緒に未来をつくっていくか、ということだと思います。
信頼と共感がないと未来づくりはなかなかできない。その想いを持っている⽅は、⼤多数がサイレントマジョリティ、そして弱い⽴場の方々だと思います。
今の⼤⼈は誰のための未来づくりをしていくのか、ということが⼤事になるのではないかと思います。「未来の私から、今の⼤⼈である私に『ありがとう』と⾔ってほしい」ということが良いベンチマークになるのではないかと思います。
今⽇のコンセンサスを得たそれぞれのリーダーについても、将来の⼤⼈の⾃分から、今の⼤⼈の⾃分に「ありがとう」と⾔われるためにはどういう⾏動・発⾔が必要か?
ジャパンモビリティショーも今⽇の参加企業などいろいろな⽅が参加します。未来をつくるスタートになってほしい。叱咤激励も含めて、応援で、皆さんで未来づくりに参加してもらえないかと思っています。
ジャパンモビリティショーは未来への第一歩
自工会会長でもある豊田委員長はかつて、自工会会見の場で次のように発言している。
「我々は、日本自動車工業会なんです。自動車工業会の前に『日本』という言葉があります。難しい課題に直面している今こそ、みんなで一緒に前へ進んでいくことが大切だと思います」
ジャパンモビリティショーには、委員会参加企業の半数以上が参加。業界の垣根を超え、日本のモビリティ産業の未来を世界に示す最初の場となる。
個社だけでは解決が難しい課題に対して、業界を超えて意見が交わされた今回の会合。日本の競争力向上に貢献するため、具体的に動き始めた。