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「多様性は力」科学者が説く日本らしい脱炭素

2023.02.10

5月の広島開催が近づくG7サミット。トヨタ チーフ・サイエンティストのギル・プラット博士は世界に発信する日本らしい脱炭素の取り組みとして、多様な選択肢の重要性を伝えた。

BEV、PHEV、HEVの割り当ては適材適所

プラット博士

次に、経済学的な視点から見てみましょう。

このグラフは、リチウムのカーボン・リターンを示しています。これは、排出を阻止したCO2排出量を、投資したリチウムのグラム数で割った値です。このグラフから何が分かるでしょうか。クルマを電動化するために最初に使う少量のバッテリーが、最も効果的であるということです。

バッテリーを増やせば増やすほど、その効果は減少します。これは、1台当たりの平均的な走行距離が長くないためです。他でより有効に使えるはずの未使用のバッテリー容量を持ち歩くことはムダであり、過剰在庫のムダと同じです。

グラフ上の点は、BEVPHEVHEVにグループ化されており、HEVが最もリチウムに対するカーボン・リターンが高くなっています。

このグラフは、アメリカの電力における、平均的な炭素排出量を示しています。

これを、1kWhあたりの炭素排出量がアメリカの約1/10であるスイスで見てみると、BEVの結果が良くなります。ただ、BEVほどではありませんが、PHEVも良くなっています。

つまり、クリーン電力があり、充電インフラへのアクセスが容易であれば、BEVの効果が大きくなりますが、他の電動化車両は、リチウム1gあたりの炭素排出量をより多く削減することができるのです。

電力をほぼ化石燃料に頼っているワイオミング州で見てみると、最もバッテリーの大きいBEVは、ガソリン車よりもリチウムに対するカーボン・リターンがマイナスであり、グラフに載ることさえできないのです。

私はBEVだけをつくれば良いと主張していません。多くのBEVをつくるのに十分な資源が地球上にありますが、BEVだけを実現するために必要な資源はありません。

救命ボートの乗客よりも漕ぎ手に多くの水を与えるように、私たちはBEVを最も効果のある場所、つまり、クリーンな充電に簡単にアクセスできるお客様に割り当てるべきなのです。

全体として最も良い結果を出すには、他のお客様は、従来のガソリン車をBEVではなく、PHEVHEVに交換すべきなのです。

これを直感的に理解するための第3の方法を紹介します。これは、日本のある工場のレイアウトを検討したものです。

HEV用電池の第1工場と第2工場、そしてBEV用電池の第3工場があります。HEV用の2つの工場は、それぞれ年間21万台分の電池を生産しています。

一方、BEV用電池の工場は、HEV用の工場の何倍もの広さと10倍の電力を消費しているにも関わらず、年間8万台分の電池しか生産していません。

このようなBEVは、特定地域のお客様にとっては価値がありますが、他の地域に住むお客様客にとっては、資源の無駄遣いになってしまうのです。

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