ダカールラリー優勝チームインタビュー 「8連覇でもまだ道半ば」

2021.01.19

ダカールラリー市販車部門8連覇! そんなチームの快挙にも、なぜか神妙な顔の三浦昂選手。その意外な理由とは?

エースドライバーとしての想い

トヨタイムズ
昨年はチームとしては7連覇。でも三浦選手としては2年連続の2位。昨年のゴール後には豊田社長に悔しさを滲ませるコメントをしていましたよね?

三浦
去年までは、しっかり(エースドライバーを)サポートをしながらも“自分のチャレンジ”として「勝ちたい」と思っていたし、それが夢でした。

でも、今年は自分を(エースドライバーがハンドルを握る)1号車にしてもらったので、勝たなきゃという想いが強かったんです。

そこで、去年までクリスチャン(昨年までのエースドライバー)が何をしていたか?を考えました。クリスチャンは、特別なラインを通ったり、とんでもないテクニックを使ったりしているわけではなかったんです。

行くべきところを探して、ちゃんと行けるように運転して、常に当たり前のことを当たり前にやっていたんです。

なので、勝ちたいという気持ちはあったんですけど、自分の能力の中でやるべきことを100%やるにはどうしたらいいか考えて走っていたら、タイムも安定し、精神面でもいいリズムに乗っかれたという感じでしたね。

トヨタイムズ
初日にも、パンクしたり、クルマの底を打ったり、小さなトラブルは出ていましたが、そこで焦ったりはしなかったんですか?

三浦
そこで、焦らず行けたことが大きかったです。パンクもしたんですが、普通ならロスしたタイムを取り返そうと考えてしまう。

でも、パンクした時点で、そのクルマの限界を超えているはずなので、抑えなければタイムは上がらないはずなんです。

運転しながらも、別のところで思考が回っている感覚があり、しかもそれが(ナビゲーターの)ローラン(・リシトロイシター)とシンクロしている感じがあったので、クルマとの一体感を感じながら走れたと思います。

どうしたらランクルがいきいきするのか?

トヨタイムズ
別のインタビューで「毎日、難コースが現れるたびにワクワクしていました! どうしたらランクルがいきいきするのか? そんなことをローランも一緒に考えているのが伝わってきました」というコメントが印象的でした。「ランクルがいきいきする」とは走っていてどんな感じだったんですか?

三浦
砂丘では、「どこを越えていけばいいかな」「あそこなら埋まらないかな」といつもだったら考えてしまう。

でも、そうではなく「絶対ここを上るぞ」という具体的なイメージがあって、そうするためにどうすればいいかセンサーが研ぎ澄まされたんです。

実際に砂丘を越えるときに、クルマがきつい瞬間もあるんですが、どうすれば回避できるか、次々にアイデアが出てきました。

考えるヒントがクルマから得られたので、何かを探すというより、流れの中で常にベストな選択肢を見つけていくことができました。

本当に気持ちよかったし、砂丘への苦手意識を完全に払しょくできたという印象でした。

トヨタイムズ
まさに豊田社長の言う「道とクルマと会話をする」ですね。豊田社長も3年前に三浦さんと一緒に砂丘を走られていましたね。(2018年10月、豊田社長はチームランドクルーザーがモロッコで行っていた車両テストに合流している)

今回のコースも砂丘ばかりでしたが、“砂丘との会話”は苦手だったんですか?

三浦
やはり、あの環境だけはどう頑張っても日本で再現できないし、独特なんです。

いろんな方法を使って克服しようとしてきたんですけど、去年のクリスチャンやプロドライバーは、日常的に砂丘を走るラリーに出ているので、日本にいながら追いつくのはすごく難しい。

そういうこともあって、苦手意識を持っていたわけですが、今回は難しい砂丘が出てくれば出てくるほど、ワクワクして、毎日砂丘を走るのが楽しみでした。

トヨタイムズ
今年は新型ウイルスの拡大もあって、海外での走行テストはできず、走れない日々が続いたと思います。チームの多くの外国人メンバーともなかなか合流できなかったと思いますが…。

三浦
本当にクルマに乗れる機会が少なかったので、今回、ただただ、純粋に走れる機会があることがうれしかったです。外国人メカニックと一緒に仕事ができたのも10月にスペインであったアンダルシアラリーくらいでしたね。

トヨタイムズ
コロナ禍で準備も大変だったと思います。メカニックの2人はどんな想いで本番を迎えましたか?

岩浅
(チームが)みんなで集まるのは今回が初めてでした。

みんなで一緒になってやるのは燃えてくるし、楽しく、ワクワクする部分がすごく多いので、(マシンに)触ってなくて「どうしよう」という想いは吹っ飛んで、ガッといけました。

中武
自分もみんなが一緒の方向を向いているので、ちゃんとやらなければというスイッチが入りました。

このチームに入って2年目になり、気持ち的にも全然違いました。学ぶことも2年目のほうがたくさんあります。去年できなかったことをやろうと思っていたので、自分なりにも成長できたと思います。

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