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「現場に光を当てたい」 日本自動車会議所 豊田会長が語った自身の役割

2026.06.03

クルマを日本の文化にするには、何が必要か。日本自動車会議所の定時総会と理事会が行われた日、豊田会長が自らの役割を「照明役」と語った意図とは。

記者との質疑応答を紹介

懇親会後には、メディアとの質疑応答も行われた。その内容を紹介する。


Q.2026年に会議所が設立80周年を迎えたが、改めて会議所の意義、豊田会長がやりたいことを伺いたい。

豊田会長

会議所の設立から80周年ですが、2026年は他にもいろいろな周年の年でもあります。

まず、カール・ベンツがガソリンエンジン3輪車(世界初のガソリン自動車)をつくってから140周年。そして、十文字信介さんが2輪自動車を輸入し、皇居前で日本初のデモンストレーション走行を行ってから130周年。

つまり、今年は「ニッポンの道をはじめてクルマが走った日」から130年。そして「ニッポンのクルマ文化の始まり」から130年です。

私は2025年から「クルマをニッポンの文化に!」と言っていますが、起源はこの時だったのではないかと思います。

そして、「ニッポンのクルマづくりのはじまり」という意味では、今年が120周年になります。吉田真太郎さんが設立した「東京自動車製作所」で内山駒之助さんとともに、国産自動車をつくりはじめたのが120年前です。

(2026年は)ガソリン車が誕生してから140周年、日本で初めてクルマが走り始めてから130周年です。その歴史を引き継いで、今の日本の自動車産業があると思います。

(クルマづくりを始めた)当時は1人もいなかった仲間たちが、今では会議所の仲間だけで約2,500万人います。自動車産業で働く人が550万人に加え、クルマを使ってくださっている方2,000万人を含めて約2,500万人です。

こうした仲間が自動車産業に増え、今の日本には世界に通用するメーカーやブランドが多くあることも、誇りにしていただきたいと思います。

日本の再生という意味でも、この120年かけて築き上げてきた自動車産業を、さらに120年経った後に何と言っていただけるか。

その時に「自動車会議所が自動車を普通の産業にしたね」とは絶対に言われたくありません。120年の礎をベースに「こういう風に(未来に)持ってきたんだね」と言われるように、日々努力をしていきたいと思っています。

(懇親会の)挨拶でも申し上げましたが、現場で頑張っている人がものすごく多い。しかし、その頑張っている人が報われない。そんな世界はいけないと思います。

だからこそ、私の役割は頑張っている人が本当に報われるようにすることです。自動車産業で「自分以外の誰かのために」頑張っている人たちに、とにかくスポットライトを当てる。

なので、会長2年目になって何をやりたいかと言えば、「照明役」に徹して2,500万人の仲間にスポットライトを当てたい。

今も頑張っている人がたくさんおられます。話を聞くと、課題が山積みです。なので「あるべき姿」を語ることも大切ですが、まずは目の前の困りごとにスポットライトを当て、一歩ずつ照らしながら、一緒に悩み、解決策を探す。

(そうすることで)その先の将来で、「よかったね」と言っていただけるのではないかと思います。

Q.自動車の環境性能割が2026年3月末で撤廃されたが、未だ複雑な税制についてどのような改正が必要だと考えているか。

豊田会長

依然として、世界で一番高い税金を払っているのが日本のクルマ及びバイクユーザーだと思います。環境性能割の恒久的な廃止は自動車業界の長年の願いだったので、(廃止に)動いていただいた方々の恩に報いるためにも、この流れを継続したい。クルマを持つことをもっとシンプルに、もっとアフォーダブルにしたいです。

クルマはモデルチェンジする工業製品なので、5年から7年で買い替えていただき、健全な中古車市場をつくり上げることが理想だと思います。その上で、複雑で高い税金や諸費用が足かせになっていることは間違いないと思います。

もっと(クルマの保有を)回転させていく、保有も含めて改善をしていくとことがカーボンニュートラルにとってもいいと思っています。

「この税金をやめたので終わり」ではなく、抜本的に自動車という柱をどう国の未来づくりにつなげていくかという議論が始まっていると思いますので、それをさらに深掘りしていきたいと考えています。

Q.スポットライトを当てるという話があったが、豊田会長の任期中にどのようなことに光を当てていきたいか。

豊田会長

さまざまな団体に困りごとをヒアリングすると、多くの課題が出てきました。例えば、バス業界からは人員不足のために早期の自動運転を求める声がありますが、それは今すぐ実現できる話ではありません。

なので、課題を「あるべき姿」「5年先の姿」「今困っていること、今すぐ直してほしいこと」の3つに層別。順番として「今困っていること、今すぐ直してほしいこと」を最優先にやっていきたいと思っています。

そうすれば「何か言えばできるんだ」という気持ちを多くの方に持っていただき、私が会長を辞した後でも、問題を解決できたという成功体験が必ず次につながっていくと思います。

Q.2025年度の会議所の活動を振り返ると、NASCARによる国際交流が印象的だった。今の世界的に政治経済が対立・分断の中にある時代で、国際的協調についてやりたいこと、考えていることはあるか。

豊田会長

私はカーボンニュートラルを掲げた時も「すべての人がウイナー(勝者)になってほしい」と言ってきました。

ガバメント(政府)も、マニファクチャー(メーカー)も、ディーラー(販売店)も、自動車業界に関わる人はみんなウイナーになってほしい。そして一番ウイナーになってほしいのはカスタマー(お客様)です。

今こそ、そのような考え方が必要なのではないかと思っています。対立・分断よりも共感。何かをやろうとしたときに、競争相手や国など、いろいろなヒエラルキーやテリトリーを超えて「あ、それいいね」と言えるような、いいことはいいよね、という形でまとまれるような動きをリードできればと思っています。

簡単ではありません。簡単ではありませんが、対立で勝ったとしても、どちらもあまり幸せじゃない。共感で共にウイナーになった方が「今度は一緒に協力してやろうね」という話になります。

微力ではありますが、こうしたことに共感いただいている方々も多いので、我々も努力してまいります。

Q.クルマを日本の文化にする上で、モータースポーツを重視しているように感じる。豊田会長の考えるモータースポーツの魅力と(クルマを)文化にしていく上での力を教えてほしい。

豊田会長

スポーツの世界は国境がなく、ルールがある中で勝ち負けがはっきりする。そして勝った後には、昨日のスーパーフォーミュラのように競争相手が互いをたたえ合う。

(昨日は)非常にいいレースだったと思いますし、そのような姿にスポーツを見る人は感激、感動します。その感動の輪を広げていくことこそが「文化」につながっていくと私は信じています。

体育会系の自分ができる文化づくりの運動として、モータースポーツを軸に進めていけば、他のスポーツや文化へも広がりを持たせることができると考えています。

Q.どのような状態になれば「クルマが日本の文化になった」と胸を張って言えると考えているか。

豊田会長

民間企業ができること、政治でなければできないこと、官僚の方々にしかできないルールづくりなどで、もっと協力していきたいです。そうしていく先に(自動車産業が)空気のような存在になる、なくては困る自動車産業になっていくと「文化」になるのではないかと思います。

文化にしていくには時間がかかります。これまで資本主義の「儲かればいい」という時代が続いてきました。一方で、儲けていない限りは未来への投資もできなければ、みんなが喜ぶような投資もできません。

「短期的に儲ければいい」という姿勢では、文化にはならないと思います。重要なのはどのようにお金を使っていくかです。

今は「セービング(貯蓄)」「スペンディング(支出)」ばかり注目されますが、利潤を得た会社が「インベストメント(投資)」や「ドネーション(寄付)」に進めるようなルールづくりをすれば、自動車業界を起点に「日本発信の文化」ができていくような気がします。

答えにはなっていないかもしれませんが、そう考えています。

会議所は2026年度から、マイナンバーカードを活用した社会実装型の新規プロジェクトを2件開始するとも発表。

1つ目は、書類・印鑑・手作業が伴う自動車登録手続きをデジタル化し、マイナンバーカードを起点に行政・民間システムを連携させる「自動車登録簡素化プロジェクト」。

2つ目は、職業ドライバーの疾病リスクを早期に把握、安全運転の継続や支援につなげられる仕組みをつくる「健康運転寿命延伸プロジェクト(マイナ保険証とも連携)」。 

現場の困りごとに光を当て、クルマを日本の文化にする会議所の活動は続いていく。

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