
全国の販売店トップが集う場で、豊田章男会長が贈ったメッセージを紹介。未来をつくるために、決して忘れてはならないこととは。

1月29日、今年も全国のトヨタ・レクサス販売店のトップ約350人が一堂に会する「全国トヨタ販売店代表者会議」が行われた。
日ごろお客様に向き合う販売店に感謝を伝え、トヨタが進もうとしている方向や未来への想いを確かめ合うため、毎年実施している。
今年、第1部では、佐藤恒治社長とトヨタ自動車販売店協会の金子直幹 理事長(福岡トヨタ代表取締役社長)が、「踊り場からの再始動」をテーマに、メーカーと販売店の両輪で未来をつくっていく決意を確認。
第2部では、日本事業本部の友山茂樹 本部長と販売店の代表者3名*から、トップ自ら現場で主導する改善事例などが示された。
*トヨタレンタリース沖縄の野原朝昌社長、トヨタカローラ鹿児島の中村博之社長、ネッツトヨタ東埼玉の飯塚素久社長
会の最後には、豊田章男会長が登壇。
メーカーや販売店の創業者からトヨタの自動車事業を引き継いだ者同士、どのような覚悟でタスキを受け取らなくてはならないか。
そして、どのような想いとともに未来へつないでいくべきか。
トヨタイムズでは豊田会長から全国の代表者に贈られたメッセージを掲載する。
社長の「しゃ」を感謝の「しゃ」に
豊田会長

昨年は、メーカーの認証不正問題で、皆様には、大変なご迷惑とご心配をお掛けしました。
私自身も記者会見を開き、トヨタグループの責任者として、お詫びを申し上げた訳でございますが、ここにおられる皆さん、とりわけ、現場の皆さんは、謝罪に明け暮れた1年だったと思います。
お客様との絆をつないでいただき、本当にありがとうございます。
私の14年間、社長の「しゃ」は、「謝罪」の「しゃ」だったと思います。
今年こそは、皆が「笑顔」で仕事をし、お客様から「ありがとう」と言っていただける年にしたい。
皆さんの「社長」の「しゃ」を「感謝」の「しゃ」にしたい。心からそう願っております。
喜一郎との出会い。CESで世界に示したこと
豊田会長
昨年、私は祖父・喜一郎に2度、出会いました。
最初は、お正月に見た夢の中で、喜一郎が私に声をかけてくれました。
「よくやったね」
「お前が孫で良かったよ」
そう言ってほしかったのですが、現実は甘くありませんでした。
「章男も苦労したんだね。だけど織機の会社を自動車に変えた私のように、グループのフルモデルチェンジはまだできていないようだね」
そう言われてしまいました。
モビリティカンパニーへのフルモデルチェンジ。これを何としても成し遂げなければならない。喜一郎から、そう発破をかけられたわけでございます。
そう言うと豊田会長は、米・ラスベガスで開かれた世界的な技術見本市「CES」に5年ぶりに登壇したことへ言及。ウーブン・シティについて発表したスピーチのダイジェストを流した。
CES 2025 スピーチ映像 和訳

ウーブン・シティでは、4つの領域の研究とイノベーションに注力していきます。ヒト、モノ、情報、そしてエネルギーのモビリティです。
ここを「モビリティのテストコース」とし、私たちが抱える課題の解決策を開発していきます。
トヨタの強みと、自動車産業ではない業界や専門性の強みを組み合わせることで、一社や一人ではつくりだせない、新しい価値や新しいプロダクト、新しいサービスをつくりだせると信じています。

ウーブン・シティではコラボレーションが全てです。多様な視点や才能、能力を一つの布に一緒に織り込み、私たちの未来の当たり前をつくるチャンスです。
その未来で、私たちはヒトの移動だけではなく、心も動かしたいと考えています。
今日、私の話を聞いて、未来をより良くしたい、変化を起こしたい、価値のあることをしたいと感じ、ワクワクした皆さん。
ウーブン・シティに参加する招待状を受け取ってください。
ご清聴ありがとうございました。
映像が終わり、豊田会長は再び販売店トップに語りかけた。
豊田会長
いかがでしたでしょうか。
最初のウーブン・シティの映像は、CGかと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが本物です。
私が初めてCESの舞台に立ったのは2018年でした。「e-Palette」の発表と同時に、トヨタを「モビリティカンパニー」に変革することを宣言いたしました。
2020年のCESでは、「ウーブン・シティ」を発表いたしました。
あれから5年。会長になった私がCESで3回目のプレゼンをしたのは、トヨタが継続的に、意志をもって、未来に向けて行動していることを世界に示すためでした。
今回、多くの方から「モビリティって何ですか?」「目指す未来はどんな姿ですか?」そんな質問をいただきました。
思い起こせば、社長になったばかりの私が「もっといいクルマをつくろうよ」と言ったときと同じ反応でした。
ただ、今回違うのは「モビリティのテストコースをつくろう」という私の言葉を真正面から受け止め、正解がわからない中でも自らの頭で考え、悩み、ウーブン・シティのフェーズ1というカタチをつくった「仲間たち」がいたことです。

彼ら彼女らは、最初に「ビジョン」を掲げました。それは「幸せの量産」でした。このプロジェクトはトヨタ創業の思想からスタートしたわけでございます。
国も、文化も、言葉も違う。みんな、違うからこそ、共通の思想を求めたのだと思います。
だからこそ、私たちトヨタが、未来はみんなでつくるものだと考えていること。そのために挑戦をし続けていること。
そして、「日本にだってできる」と信じていること。それらが、世の中に伝わったのではないかと思っております。
いよいよ、この秋、ウーブン・シティが始動いたします。今度、喜一郎に会ったら、私からこう声をかけようと思っております。
「おじいさん、安心してください。あなたが、まいてくれたタネは多くの仲間とともにちゃんと育っていますよ」
そんな想いを込めて世界にメッセージを発信してまいりました。