豊田章男会長から片山正則副会長へ自工会会長が交代。能登半島地震からの復興、物流の2024年問題など難局に一丸で取り組む決意が表れた新年のメッセージを紹介する。
自分以外の誰かを想う「優しさ」が大切
豊田前会長あいさつ
あけましておめでとうございます。豊田でございます。
まずは、能登半島で発生した大地震ならびに羽田空港での飛行機事故により、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
片山会長のご指名により、ひとことごあいさつさせていただきます。
2010年に初めて自工会の副会長を拝命してから13年半、2018年に、2度目の会長に就任してから5年半。
多くの方々に支えられ、この度、片山会長にたすきをお渡しすることができました。
皆さまのご支援に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
自工会の歴史を振り返りますと、1960年代に初代会長を務められた川又克二さんから1990年代初頭の5代目会長久米豊さんまでは、皆さん、4年以上、会長職を務めてこられました。
排ガス規制、オイルショック、貿易摩擦など、数々の危機を乗り越え、先達が自工会の礎を築かれた、まさに創業期だったと思います。
それ以降は、会長の任期が短くなり、日産、トヨタ、ホンダの3社による持ち回りが定着いたしました。
そして、CASE革命により、自動車業界が「100年に1度の大変革期」に突入する中、私は、2度目の会長に就任することになりました。
コロナ危機、カーボンニュートラルなど、自動車産業の構造改革に取り組む中で、「自動車はみんなでやる産業」。「未来はみんなでつくるもの」。
いつしか、それが合言葉となり、「クルマを走らせる550万人」のチームができたと思います。
よく会長職は「神輿(みこし)」だと言われたりいたしますが、「神輿」の「輿」という字には、クルマの文字が入っております。
担ぐべきは、会長ではなく自動車産業そのものである。
そんな想いで、私も仲間と一緒になって、「550万人」の「神輿」を担いでまいりました。
昨年のジャパンモビリティショーでは、自動車業界の枠を越えて、多くの仲間が、「乗りたい未来を探しにいこう!」というメッセージを発信してくれました。
そして、迎えた2024年。
富士スピードウェイでの初日の出。ニューイヤー駅伝で8年ぶりの優勝。
喜んだのも束の間、能登半島での大地震により、深い悲しみからのスタートになりました。
13年前、東日本大震災の時に被災地の方から掛けていただいた言葉が、私の脳裏に蘇りました。
「元気な地域、会社の人たちが被災した地域の分まで頑張って、日本を支えてください」。
今の日本には、550万人の強くて、たくましい現場があります。
被災された方々が、一日も早く、日常と笑顔を取り戻せるよう、550万人の仲間とともに、私自身も動いてまいります。
今こそ、対立や分断、争いや誹謗中傷をやめて、お互いに助け合い、笑顔で「ありがとう」と言い合う。そんな大人の姿を見せる時だと思います。
今年は、震災からの復興に加え、物流の2024年問題など、働き方が問われる年でもあります。
いずれも、その解決に向けては、自分以外の誰かを想う「優しさ」が大切になると思います。
「優」しいという字は「人を100回愛する」と書きます。
同じ日本に、同じ地球に生きる人たちへの愛、これから生まれてくる子供たちへの愛。
そんな愛があふれる年となりますことを祈念いたしまして、私のあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。