最近のトヨタ
2022.10.18

豊田章男がプロデュースした"エンジン音とレース仲間と過ごすホテルの門出"

2022.10.18

約束は一つ。「自分がいかにモータースポーツが好きか?」を照れずに話してみる。日本のモータースポーツ関係者が、メーカーの垣根を越えて一堂に会した。

可夢偉が千代に声をかけたワケ

「なぜ千代さんに声をかけたんですか?」と司会が声をかけた。

【可夢偉】

僕たち、実は同い年なんですけど、僕がF1で走っていた2010年ごろに、とある料理屋さんに行ったら、たまたま、そこで千代がアルバイトをしていたんですね。配膳したりとか…。

千代の存在は、もちろん知っていて、彼がレーサーを目指していることも知っていました。

僕はF1ドライバー、片やレーサーを目指して飲食店でアルバイトをしている千代。でも、彼は今はGT500のポイントリーダーなんですよ。

僕はレーサーとして恵まれている人生を歩んできたが、でも、こういう(千代みたいな)人生もあって、あのときは惨めだったかもしれない…。

でも「絶対にプロドライバーになってやろう」という想いがあって、頑張ってきた結果、今ここにいると思っていて、是非、その気持ちを、この会で話していただきたいと思って指名させていただきました。

【千代】

可夢偉から(幹事のオファーの)電話があったときは本当にびっくりして、僕でいいのかなって正直思ったんですけど、可夢偉から、この会では「モータースポーツへの愛をみんなで語りたい」と聞いて(いいなと思いました)。

僕たちが、ここにいるのは、ここにいらっしゃる大先輩方がつくってきてくれたモータースポーツ界があるからこそ、僕らが活躍させていただいていると思い、僕も愛を持って幹事を務めたいと思いました。

【可夢偉】

ただ、さっき片桐さんと千代が話していたんですが、先日のレースで、千代はレースのことではなくて、この幹事のことで頭一杯で、そっちで緊張していたと聞きました(笑)

【千代】

めちゃくちゃ緊張するよ(笑)。だけど、僕たち日産として、最終戦にはチャンピオンの権利を持って臨ませていただきますが、みなさんに“すごいメンタルトレーニング”をさせてもらっています(笑)

未来はメーカーを越えてつくるもの

司会が話題を水素エンジンに切り替える。「水素カローラにトヨタ系以外のドライバーが乗るのは初めてですよね?」

【千代】

はじめてです。「今日はNISMOのドライバーとしてでなく、“ひとりのクルマ好き”として行ってこい」と片桐社長が言ってくださったので、本当にありがとうございます。最新技術のクルマに乗れて本当にワクワクしました。

【可夢偉】

トヨタ以外のドライバーも水素エンジンのクルマに乗りたくなったのではないですか?乗りたくなった方いますか?

可夢偉がそう呼びかけると、静かに手を上げた若手が一人いた。ホンダ系チームでSuper GTやスーパーフォーミュラに乗る24歳のドライバー大湯都史樹である。

大湯はドライバーとしての速さもさることながら、サーキット外ではファッショナブルな服を身にまとい、SNSでの発信力も高くファンからの人気が高い。

可夢偉が大湯を見つけ「乗ってみたいですか?」と聞くと、大湯は「なんで僕を幹事に誘ってくれなかったんですか?」と返す。明らかに話は噛み合っていなかったが、若い大湯が、こうしたメーカーを越えた会に強い興味を持っていたことが、会場全体に伝わった。

【可夢偉】

ホンダさんには“すごい大物”がいますね!(笑)

大湯も、いつか水素エンジン乗ってみたいの!?

【大湯】

今の登場シーンみて、水素エンジンなのに音もすごいし、ホント乗りたくなりました!

【可夢偉】

豊田社長どうですか?

【豊田章男】

未来はメーカーを越えてつくるものだと思います!

【可夢偉】

乗っていいということですよね?

【豊田章男】

はい!

【千代】

じゃあ、この後パーティーの“撤収”があるので、その運転を大湯君に!(笑)

【可夢偉】

片付けよろしくね!(笑)

【大湯】

わかりました!

水素エンジンはトヨタの開発ではじまった。その後、“水素をつくる人”、“水素を運ぶ人”など、仲間が多く集まり、今も実用化に向けた実証が進んでいる。ホンダドライバーの大湯の“勇気ある挙手”により「メーカーを越えてつくる未来」が、また一歩進みそうである。

モータースポーツの“愛と音”

司会が幹事たちにパーティーのテーマをあらためて確認すると、可夢偉が会場に問いかけた。

【可夢偉】

豊田社長からの(事前の)お手紙は読んでますか?

今回はホテルのレセプションパーティーということもあるんですが、これだけモータースポーツ好きが集まるということで、“自分のモータースポーツ好きを照れずに話す会”にしたいと思っています。

サーキットで、そんな話をすることはありません。特に他のメーカーの人と話す機会もありません。これだけの人たちが集まったということで、ぜひみんなで話し合えればと思ってます。

【司会】

案内状といえば“宛先”もインパクトありましたね

【千代】

「爆音好きな皆さまへ」ということでした。ここにいらっしゃる皆さまは、モータースポーツとクルマが大好きで、絶対に、皆さん“音”が大切だと思っています。僕も、はじめて1999年のもてぎ最終戦のGT選手権を見て、子供ながらに、その音に衝撃を受けて、今ここにいると思います。

【千代】

NISMOの片桐社長も大学時代は自動車部でラリーにも出ていた経験もお持ちで、根っからのクルマ好きと聞いていますが、片桐社長も“音”お好きですよね!?

千代が突然、自身のボスとも言える片桐社長に振った。片桐社長が「俺?」と驚きながらもマイクを受け取り立ち上がる。

【片桐】

はなはだ僭越ですがNISMOの片桐です。クルマは大好きです! 子供のころからクルマが好きで、自動車部に入って、自動車会社に入って、プロの皆さんの前でいうのもなんですが…、モータースポーツもかじって、今に至っています。

片桐社長も、さっそく照れずに自身の“好き”を語っていた。最後に一言「千代君、最終戦頑張ってね!」と締めくくる。

この日は「クルマ好きの片桐と千代」、だけどサーキットに戻ったら「日産の片桐と千代」として、Zの初年度をチャンピオンで飾ろう!という意気込みが感じられる。

こうして、今宵のテーマが“モータースポーツの愛と音”であることが会場に共有された。

RECOMMEND